データで見る小学生の放課後の現状と課題
小学生の放課後にはどのような課題があるのでしょうか。この記事では、小1の壁や学童保育の課題などに注目し、調査データをもとに小学生の放課後の現状と課題について考えていきます。
小1の壁~小学校入学を機に負担や悩みが増えたと感じる保護者が増加~
小1の壁とは?
小1の壁は、小学校入学を機に子どもの預け先に困り、育児と仕事の両立が難しくなる社会的な課題です。
保育園では延長保育がある場合が多く、子どもを長時間預けられるのに対して、小学生の放課後の居場所の一つとなっている、放課後児童クラブ(学童)や放課後子供教室では、開室時間が短い場合や、そもそも人数制限によって入会できないケースもあります。
また、子どもが小学生になると、時短勤務制の対象ではなくなる企業も多いため、育児と仕事の両立がより難しくなり、働き方に悩まされる保護者が多くなっています。
小学校入学を機に多くの保護者が子育て負担感増
放課後NPOアフタースクールが2023年2月に実施した「小1の壁に関するWEBアンケート調査」によると、子どもの小学校入学にあたって働き方の見直しを検討した保護者は50.7%、全体の37.9%が実際に働き方を変えたと回答しています。
働き方を変えた人のうち約4割が、時短に変更(27.4%)や正社員から別の雇用形態へ変更(12.4%)をしていました。育児と仕事のバランスをとり、子どもの生活リズムに合わせるため、働き方を見直していることが分かります。
また、子どもの小学校入学によって「子育ての負担(や悩み)が増えた」と57.3%の保護者が回答しています。その理由としては、「子どもの勉強サポート(76.6%)」、「夏休みなどの長期休みのケア(73.1%)」など、保育園時代には経験が少なかった悩みが上位にあがりました。
さらに、家事・子育てに費やす時間が増えた人の中には、「イライラする、ストレスを感じるようになった(66.7%)」や「自分の体調不良が起きた(26.5%)」といった心身の不調を感じるケースも見受けられました。

行政・企業・地域において子育て世帯をサポートする制度や環境は整えられつつあるものの、まだ十分であるとはいえず、多くの保護者が育児と仕事の両立に悩み、負担やストレスを抱えていることが分かります。
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学童の課題~放課後の子どもの居場所不足~
小学校入学を機に、放課後に過ごす居場所の一つとなる学童。ここからは、学童が抱える課題について見ていきましょう。
学童に入りたくても入れない?
小1の壁の要因の1つとして、共働き世帯の増加により学童の利用希望者数が増えている実態に対して、受け皿の整備が十分に追いつかず、待機児童数が増加傾向にあることが挙げられます。
こども家庭庁の定義では、「放課後児童クラブの対象児童で、利用申し込みをしたが利用(登録)できなかった児童」を「待機児童」としています。(「放課後児童クラブ・児童館等の課題と施策の方向性」(令和5年3月、厚生労働省))
「令和6年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況(令和6年5月1日現在、こども家庭庁)」 によると、2024年5月時点の学童の待機児童数は17,686人となり、2019年以降は学童の待機児童数が保育園の待機児童数を上回っています。
育児と仕事を両立したくても、仕事をしている間に子どもを預けられる場所がなく悩んでいるというのが多くの保護者が直面している現状なのです。

全国の待機児童数の分布
こども家庭庁の同調査の都道府県別待機児童数マップによると、待機児童は首都圏や沖縄に集中していることが分かります。東京や埼玉、千葉、沖縄は待機児童数が1000人以上と多い一方、青森や福井などの地域では50人未満と比較的少なくなっており、地域によって待機児童数には大きく差があることが分かります。

小学4年生になったら学童は卒業?
「令和6年 放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況(令和6年5月1日現在、こども家庭庁)」 によると、待機児童の中でも特に小学4年生が最も多く、待機児童数は半数以上が高学年であることが分かりました。
自治体によりますが、学童の入所要件を学年で区切っているところも多くあります。例えば、東京23区の中でも9つの区が学童の入所要件を小学校1~3年生までとしており 、特別な配慮が必要な子どものみ4年生以上の入所が認められるなど、実質、小学4年生になった段階で学童を卒業せざるを得ないところもあるのです。ここから、高学年の子どもの放課後の居場所が不足している現状が見えてきます。

学童が必ずしも子どもが行きたい場所になっていない?
放課後NPOアフタースクールが2024年2月に実施した「放課後児童クラブ利用に関するWEBアンケート調査」によると、学童を退所した子どものうち、約30%が1年生の4月から9月の間という早めの段階でやめています。
なぜ子どもたちは早い段階で学童をやめるのでしょうか。1年生での退所者によると「子どもが行きたがらなくなったから」が最多の35.7%、次いで「働き方を変えたから」が28.6%となりました。
子どもが行きたがらなくなった理由としては、「学童に通っていない友達と遊びたかったから」が最多となりました。その他にも活動・過ごし方、子ども同士のトラブル、環境・設備など様々な要因があがってきました。
ここから、学童が必ずしも子どもが行きたい場所になっていないということが分かります。今後は学童を子どもたちが「行きたい」と思う居場所になるよう、質を向上させていくことが求められています。

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子どもたちが自由に遊べない放課後の現状
小1の壁によって負担や悩みをより感じている保護者が多い中、子どもたち自身はどう感じているのでしょうか。
放課後NPOアフタースクールが2023年8月に実施した「小学生の遊びに関するアンケート調査」では、放課後に「もっと友達と遊びたい」と回答した小学生は76.2%でした。
また、現在放課後に(学童以外で)どれくらいの頻度で友達と遊んでいるかを聞いたところ、「週1回以下」と回答した小学生は70.9%と、多くの小学生が放課後に友達と遊ぶ時間を十分に持てていないことが分かります。
では、なぜ多くの小学生が放課後に思うように友達と遊ぶことができていないのでしょうか。48.7%が「友達と予定が合わないから」、次いで35.2%が「自分が習い事・塾・宿題で忙しいから」と回答しました。現代の子どもたちは忙しさに追われ、放課後が自由に遊べる時間になっていないことが分かります。
また、子どもや保護者に放課後で遊べない理由についてインタビュー調査を行ったところ、「もっと遊ぶ時間がほしい(兵庫県5年生)」「学童に友達がいるといいなと思う(神奈川県4年生)」「子どもの遊び場がとにかく少ない(京都府1、4年生保護者)」などの回答があり、時間・仲間・空間の3間に課題があることがうかがえました。

放課後の子どもの体験に格差が生じている
子どもたちにとって放課後が自由に遊べる時間になっていないことに加えて、様々な背景によって子どもの体験に格差が生じている現状があります。多様な体験機会に恵まれている子どもと、体験機会が十分ではない子どもの間に生まれる格差は一般的に「体験格差」と呼ばれています。
2023年7月に行われた、公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンによる「子どもの『体験格差』実態調査」によると、年収300万円未満のいわゆる「低所得家庭」では、子どもの「体験(※)」が平均的に少ないというだけでなく、「低所得家庭」の3人に1人が過去1年間で体験の機会が一つもない「体験ゼロ」の状態にあることなどが分かりました。
また、経済的な要因だけでなく、地域的な要因や連鎖的な要因など、体験格差が生じる背景には様々なものがあります。
多様な体験機会があるということは、自分は何が好きでどんなことをしてみたいのかという想像力や選択肢の幅を広げることにつながります。好きなことに夢中になり、無理だと思うことにも挑戦した経験は、自己肯定感や幸せ実感の向上に大きく関連しています。
本来ならば、家庭の経済状況や居住地域などによらず、すべての子どもたちが多様な体験活動ができる環境を整えていく必要がありますが、実際はそのような機会に恵まれていない子どももいるというのが現状です。
※本調査における「体験」は「学校以外の時間(放課後)に行う体験」を指し、スポーツ・運動、文化芸術活動、自然体験、社会体験、文化的体験が含まれる。

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すべての子どもとその保護者が安心して過ごせる放課後に
小1の壁や、待機児童などの放課後に関連する課題が原因で、多くの保護者が負担や悩みを抱えています。さらに、子どもたちにとっても、放課後の居場所不足や、自由に遊べる時間になっていないこと、さらに子どもの体験に格差が生じている現状もあります。
すべての子どもとその保護者が安心して過ごせる放課後をつくるために、行政・企業・地域など、社会全体で課題解決に向けて取り組んでいくことが求められています。
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文:コミュニケーションデザインチーム/伊藤
