かぎりない庭 | 十二夜 おわらない廊下
-おわらない廊下-
家の中を、一本のまっすぐな廊下がつらぬいていました。
廊下の左右には、居室や台所、風呂、トイレなどが並んでいました。
大きな家だったので、廊下は二十五メートルくらいあったでしょうか。
その廊下の突き当たりに、大きな鏡がはめ込まれていました。
鏡には、ふだん、布がかけられていました。
布が外されていると、廊下がそこで終わっていないように見えました。
鏡の中にも、同じ廊下が続いていたからです。
ある薄暗い夕方、わたしは廊下の突き当たり近くにあるトイレへ向かいました。
そのときは、たまたま鏡の布が外されていました。
いつものことなので、たいして気にせずトイレに向かっていました。
けれど、途中で違和感を覚えました。
わたしが映っていないのです。
突き当たりにあるのは、鏡です。
そこへ向かって歩いているわたしが、映るはずでした。
けれど鏡の中には、わたしの姿はありませんでした。
ただ、そのまま廊下が続いていました。
わたしは不思議に思いながらも、突き当たり手前のトイレまで来ました。
鏡には、わたしが映っていません。
いいえ。
鏡がありませんでした。
廊下が続いていました。
トイレのことは、もうどうでもよくなっていました。
わたしは、廊下の向こうを見に行きたくなりました。
そのまま進んでいきました。
廊下の両脇には、繰り返し、同じ部屋が出てきました。
同じ居室。
同じ台所。
同じ風呂。
同じトイレ。
何度目かのトイレを、通り過ぎました。
どこまで続くのでしょう。
同じ廊下の繰り返しに、わたしはだんだん飽きてきました。
今来た廊下を引き返すのは大変だ。
そう思ったとき、つい忘れていた尿意が戻ってきました。
わたしは、すぐ近くのトイレに入り、用を足しました。
トイレに、おかしなところはありませんでした。
いつもの、祖父母の家の汲み取り式のトイレです。
けれど、考えてみれば、おかしなことでした。
ここまで、いくつのトイレを通り過ぎてきたのでしょうか。
トイレを出ると、右手側に、廊下の突き当たりがありました。
そこに、鏡がありました。
鏡に布はかかっていませんでした。
わたしの色の白い顔が映っています。
鏡に触れてみましたが、鏡でした。
かぎりない庭
次回:十三夜 ぴぎゃあ
