見出し画像

かぎりない庭 | 三夜 祖父の、いいもの

前回:二夜 家が見えていた

-祖父の、いいもの-


祖父は面白い人でした。


十二畳ほどの部屋で、祖父とわたしたち兄弟の三人で寝ることがありました。
その部屋には、古い振り子時計がありました。

一時間ごとに、
ごーん。
と音が鳴ります。

ある夜のことです。
…ごーん、ごーん、ごーん。
ぶぅ。

「あれ?ひとつ多いな」
祖父が、布団の中でそう言いました。

わたしたちは笑いました。
祖父も笑っていました。
祖父は、そういうことを平気で言う人でした。

怖い人ではありません。
むしろ、わたしたちには優しい人でした。


あるとき、祖父が、
「いいものを見せてやる」
と言って、引き出しを開けました。
わたしは、何か面白いものが出てくるのだと思いました。

そこにあったのは、薬莢でした。

わたしには、それが何なのか、よくわかりませんでした。
金属でできた、小さな筒のようなもの。
ただ、それが子どもの玩具ではないことだけは、なんとなくわかりました。

実弾だったのか。
空だったのか。
そもそも、本物だったのか。

当時まだ幼稚園児だったわたしに、そんなことが理解できるわけもありません。

祖父はニヤリとしながら、
「全部渡すわけねぇやな」
と言いました。

何を、誰に、渡さなかったのか。
その意味も、わたしにはわかりませんでした。

ただ、祖父のニヤリとした顔だけは、よく覚えています。



かぎりない庭

次回:四夜 祖母のお仕置き


【完結済み作品】


いいなと思ったら応援しよう!