かぎりない庭 | 四夜 祖母のお仕置き
前回:三夜 祖父の、いいもの
ー祖母のお仕置きー
わたしがいたずらをしたり、言うことを聞かなかったりすると、祖母はわたしを物置に閉じ込めました。
物置と言っても、押し入れのような狭い場所ではありません。
祖父の仕事の機材などが置かれている、縦に長い場所でした。
広さは、畳八枚を縦に並べたくらいあったと思います。
扉を閉めれば、日中でも真っ暗になります。
明るければ、物置の奥まで見えます。
けれど、真っ暗になると、広さがわかりません。
ものすごく広い暗闇の中に、ひとりぼっちになります。
閉じ込められると、わたしはパニックになりました。
「出して。だして」
「ネズミが出た」
「誰かいる」
「おばぁちゃあん」
「あけて」
「だして」
そう叫び続けました。
「おまえは、そこから出られないんだよ」
祖母の声が聞こえます。
「いやだ。いやだ」
わたしは、そう叫びました。
「ちゃんと言うことを聞くか」
「いい子にできるか」
「できるまで出せないよ」
祖母の声は聞こえていました。
けれど、わたしは答えられませんでした。
「出して。だして」
そればかりを繰り返していました。
「剛情な子だよ」
祖母は、そう言いました。
泣き疲れたわたしが何も言わなくなると、祖母は仕方なさそうにかんぬきを上げ、扉を開けるのでした。
「ごめんなさい…」
祖母のことを、嫌っていたわけではありません。
けれど、あの物置だけは嫌いでした。
しかし、あるときから、わたしは暗い物置が怖くなくなりました。
真っ暗だけれど、そこは物置でしかありません。
真っ暗だけれど、広さが変わったわけではありません。
この家にネズミはいません。
お化けは、わかりません。
閉じ込められるとき、わたしはそう考えるようにしたのです。
すると、怖くなくなりました。
閉じ込められたわたしは、叫ばず黙っていました。
祖父が開けてくれることもありました。
母が開けてくれることもありました。
なにより、根負けした祖母が渋々と扉を開けるようになり、やがて物置に閉じ込められることはなくなりました。
わたしが叱られる回数は、減りませんでした。
かぎりない庭
次回:五夜 ほしがきのこと
