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かぎりない庭 | 十七夜 白い庭

前回:十六夜 血液のかたち

-白い庭-


夕方になるころから、雪が強くなりました。

そのころは、今よりもずっと雪が降りました。
山に囲まれた町だったので、ひと晩で庭の景色が変わってしまうこともありました。


わたしは、窓のそばに座って、外を見ていました。

庭石の上に、雪が積もっていました。
柿の木の枝にも、栗の木の枝にも、白い雪が乗っていました。
池のまわりも、草の上も、物置の屋根も、少しずつ白くなっていきました。

雪の降る夜は、とても静かでした。
雪は、音を立てずに降っていました。

夜なのに、外は暗くありませんでした。
庭が少し明るく見えました。
白い雪が、家の中のわずかな明かりを受けて、ぼんやり光っているようでした。

このまま降り続けば、朝には庭が埋もれてしまう。
そう思いながら、わたしは、いつまでも外を見ていました。


次の朝、庭は真っ白になっていました。

縁側の前も、池のまわりも、物置のまわりも、みんな雪に覆われていました。
いつもなら見えている庭石の角も、草のかたまりも、地面のでこぼこも、見えません。

庭が広くなったように見えました。
なだらかで、白くて、どこまでも続いているようでした。
足あとをつけるのが、もったいないくらいでした。

池だけが、黒く見えました。
雪に囲まれた池は、いつもより小さく、深く見えました。
水面の近くに、赤い金魚が見えました。
ゆっくり動いていました。
白い庭の黒い池。
金魚の赤だけが、はっきりしていました。

祖父は、長靴をはいて、雪かきをしていました。
ざく、ざく、と雪をすくって、庭の端に積み上げていきました。

わたしも外へ出ました。
雪の上を歩くと、ぎゅっ、ぎゅっと押し込まれるような音がしました。
踏んだところだけ、足の形に沈みました。
そこにあった物が全部隠れて、いつもの庭なのに、全く別の庭になってしまいました。

白くなった庭は、日差しを受けてきらきらと光り、きれいでした。
わたしは雪の庭が好きでした。


何日かすると、雪は少しずつ溶けていきます。
きれいだった白い庭は、だんだん姿を変えていきました。
雪かきで積み上げられた雪には、土や枯れ葉が混じっていました。
道路のそばの雪は、車が跳ねた泥水を受けて黒くなっていました。

庭のあちこちに、水たまりができました。
未舗装の道は、ぬかるんでいました。
長靴で歩くと、泥が重たくくっつきました。
白かった庭は、日に日に黒ずんでいきました。

雪が溶けると、庭は元に戻るのだと思っていました。
けれど、戻ってきた庭は、雪が降る前の庭とは、少し違って見えました。

庭石も、草のかたまりも、池のふちも、みんな水を含んで、黒くなっていました。
雪でなだらかになっていた場所には、泥が残っていました。

あんなに静かだった庭が、ぐちゃぐちゃになっていました。

雪の庭は、ほんとうにきれいでした。
だから、雪の庭を見るたびに、わたしは、雪が溶けたあとの庭を思い出すのでした。

ずっと溶けなければいいのに。



かぎりない庭

次回:十八夜 おばあちゃんの魔法のバケツ


【完結済み作品】


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