"The Lady is a Tramp”「ザ・レディ・イズ・ア・トランプ」(1)曲のファクト,要注意"trump"と発音せぬように!
表紙写真:"The lady is a tramp"の楽譜PDF Scribd https://www.scribd.com › documentより。
趣味ボーカル・ジャズでこの曲を習う
筆者はボーカル・ジャズのレッスンを受けて初めてほぼ20年、既に多くの曲を練習し、ジャズ・ボーカル教室のミニ・コンで歌ってきたが、100回目近くになって上がってしまう。伴奏してくれるのはピアノ田村博氏とギター鈴木敏幸 のお二人の超一流のミュージッシャン。ぶっつけ本番で3~4曲歌う。言葉が飛ばないように、キーを外さないように、リズムを食わないようにするので精一杯!お二人はとてもとてもとても優しく包み込むように演奏してくれる。
その親切に甘えていたら失礼だ、なんとか上がらずに歌えたらな、そう思って田村氏に聞いてみた。「ヴォーカル・セッションに行ってみたらいいですよ」と言う。それであちこちのセッションにチョイ参加をし始めた。これはこれで凄い。プロのホスト・ミュージッシャンの伴奏で、見ず知らずの人たちの前でひたすら歌う。中にはプロ・デビューしている人たちもいたりして…..。
それはともかく、今回は、筆者がこの8月に開かれるミニコンで歌う1曲に"The lady is a tramp"についてあれこれ。
今回を含め歌うのは2回目、1回目は歌ったことは歌ったものの、ただ、歌ったと言うことしか記憶にない。今回は、lyricsから情景をしっかりとらえて語るように歌うことを課題にしている。そこで何回かに分け、現役時代に担当した授業で「ところで…」で始めた”脱線”話しも交え、この曲をめぐって頭に浮かぶままアレコレと書こうと思う。
"The Lady is a Tramp"ミュージカル”Babes in Arms"(1937年)から
1937年ミュージカルBabes in Armsで歌われた楽曲。作曲Richard Rodgers (1902–1979)、作詞Lorenz Hart (1895–1943)。1930年代の小説、映画、音楽には、思春期から青年期へ差し掛かる若者のとりとめのない意識の流れ的なストリーが多くみられる。その最たる例が別稿「名作The Catcher in the Rye (J.D. Salinger, 1951)を読み直して(その1)・・・Bill Gatesら著名人愛読」と「名作The Catcher in the Rye (J.D. Salinger, 1951)を読み直して(その2)・・・ライ麦畑から回転木馬に、"the catcher" から"the watcher"」で取り上げたJ.D. SalingerのThe Catcher in the Ryeのストーリーだ。
Babes in Armsもニューヨーク近郊Long Islandの小さな町(The Catcher in the Ryeはペンシルバニアの小さな町Agerstown)に住む十代の若者たちが親に内緒で友人たちのボードビル・サマーショーを見に行こうとする。ところが保安官に発見され罰として農場労働を課される。そこで保安官に2週間の執行猶予を願い出て、その間にショー作りを画策して許してもらおうとの算段で始まり成功するまでの一連の出来事を描いた青春ドラマで、ニューヨーク上流社交界の厳格なしきたり、その見せかけの欺瞞をもじっている。The Catcher in the Ryeのストーリーと被るところが多い。
(ここで”脱線”情報:The Lady Is a Tramp"以外に今でもよく歌われるジャズ・スタンダード "Where or When"(筆者もミニコンでよく歌う)と "My Funny Valentine"(筆者は習ったものの、歌ったことがない、来年2月ミニコンで歌おうかな)もこのミュージカルで歌われた楽曲とのこと。凄いな!いつか時間をかけ観てみよう、はい!ここまで!)
ミュージカルでは元子役のMitzi Greenが歌って大成功を収めた。残念ながら映像が見つからないがレコード盤The Lady Is a Tramp (Richard Rodgers, Lorenz Hart)にその歌声が残っている。


Lyrics (Mitzi Green Version):
I get too hungry for dinner at eight
I like the theatre, but never come late
I never bother with people I hate
That’s why the lady is a tramp
I don’t like crap games with barons and earls
Won’t go to Harlem in ermine and pearls
Won’t dish the dirt with the rest of the girls
That’s why the lady is a tramp
I like the free fresh wind in my hair
Life without care, I’m broke, it’s oke
Hate California, it’s cold and it’s damp
That’s why the lady is a tramp
Refrain 2: I go to Coney, the beach is divine.
I go to ball games, the bleachers are fine.
I follow Winchell and read every line.
That’s why the lady is a tramp.
I like a prize fight that isn’t a fake.
I love the rowing on Central Park lake.
I go to opera and stay wide awake.
That’s why the lady is a tramp.
I like the green grass under my shoes.
What can I lose? I’m flat. That’s that!
I’m all alone when I lower my lamp.
That’s why the lady is a tramp.
ミュージカル・フィルム"Baby in Arms"(1939)の中で
2年後の1939年にの下で映画化されたのがBabes in Arms (監督Busby Berkele)だ。本稿執筆時現在、筆者はまだこの映画を観ていないので詳細は割愛するが、予告編Babes in Arms 1939 (白黒オリジナルの着色版) を見ると、Judy Garland と Mickey Rooneyが共演している。

ところが、この予告編には"The Lady is a Tramp"を歌っているシーンが無い。恐らくミュージカル上演(1937)から映画化(1939)まで2年、予告編は上映封切直前に制作することから、この時点ではこの曲はあまりインパクトを与えていなかったのだろう。その歌詞の反抗的な内容が社会に受け入れられなかったからだろう、顔を黒く塗りアフリカ系アメリカ人に仮装して歌うシーンなど、この時代の背景に関しては、後の稿で取り上げる。
ミュージカル・コメディ・フィルム"Pal Joey"(1957)でSinatraがこの曲を歌う
Pal Joey(1957)は、Frank Sinatra演じる”モテ男”Joey Evansが、Rita Hayworth演ずる金持ち有閑マダムVera Simpsonに出資させてサンフランシスコでナイトクラブを持とうと奔走する様を描いたミュージカル・コメディ・フィルムである。JoeyがKim Novak演ずる一人のナイーブなコーラス・ガールLinda Englishを贔屓にするのを、彼に惹かれたVeraが嫉妬するといった1950年代によくみられたドタバタ喜劇の一つだ。
”Pal Joey”は 4部門で Academy Award ノミネート、 1部門で Golden Globe Award ノミネートされ、Sinatraは主演男優賞( Golden Globe Award for Best Actor - Motion Picture Musical or Comedy)を受賞した。
しかし、Pal Joey movie review & summary (1957) - Frank's Movie Logの批判は厳しい。チェックしてみよう。
ミュージカルと言いながら、歌は作品中の歌手役が歌い、幾つか俳優が歌うが彼らが演ずる人物描写に溶け込んでいない。ミュージカルと言うより恋愛ロマンスの方が相応しい。シナトラが歌う"The Lady is a Tramp"は、個人的に大女優Rita Hayworthの性格・歩んできた反骨の人生(彼女が演じるVera Simpsonではなく)を歌っていると思えるが、こちらは卓越したパーフォーマンスだ、と述べている。さて、この作品のKim Novakは、無垢でありながらセクシーでそれでいて確立した自己を示す演技力は脅威的だ。翌年HitchcockがVertigoに抜擢した理由がよく分かる、と結ぶ。
以下のサイトにSinatra扮するJoeyが”The Lady is a Tramp"のシーンがあるが、確かに、劇中のSimpsonというよりは、大女優Rita Haywardを称えて歌っているように見える。そのシーンをご覧あれ(やはりSinatra上手いな!)。
Frank Sinatra - "The Lady Is a Tramp" - Scene from "Pal Joey ...
後述するが、この曲で歌われている”the lady"は、毛皮やパールなどで着飾って上流社会のしきたりに逆らう駆け出しの女優だ。Rita Haywardも駆け出し時代はそうだっであろうが、ここでは毛皮を着て着飾った大女優を演じている。
Lyrics (Sinatra Version)
She gets too hungry for dinner at eight
She likes the theatre and never comes late
She never bothers with people she'd hate
That's why the lady is a tramp
[Verse 2]
Doesn't like crap games with barons or earls
Won't go to Harlem in ermine and pearls
Won't dish the dirt with the rest of the girls
That's why the lady is a tramp
[Verse 3]
She likes the free, fresh wind in her hair, life without care
She's broke and it's oke'
Hates California, it's cold and it's damp
That's why the lady is a tramp
[Verse 1]
She gets too hungry to wait for dinner at eight
She loves the theatre, but never comes late
She'd never bother with people she'd hate
That's why the lady is a tramp
[Verse 4]
She'll have no crap games with sharpies and frauds
And she won't go to Harlem in Lincolns or Fords
And she won't dish the dirt with the rest of the broads
That's why the lady is a tramp
[Outro]
She loves the free fresh wind in her hair, life without care
She's broke, but it's oke'
Hates California, it's so cold and so damp
That's why the lady, that's why the lady
That's why the lady is a tramp
"The lady is a tramp"の”tramp"の意味は?くれぐれも"tramp"を"trump/Trump"と発音しないように!
このように、1937年のオリジナル・ミュージカルショウBabes in Arms、1939年その映画バージョンでは駆け出し女優役が自らについて歌うので主語は”I”、1957年のPal Joeyでは主役Joeyがある駆け出しの女優について歌っているので主語は”she"になっている。次回以降にこの点も含め歌詞全体に関して詳しく触れるが、タイトルのThe lady is a tramp"の”tramp"につき一言。
Merrium-Websterは、”tramp"は、名詞的用法(俗語)で、
a woman who has multiple sexual partners (複数男と性的関係をもつ女」
a woman who is promiscuous(性的にルースな女)
という否定的で侮蔑的な意味を挙げているが、この曲のコンテクストでは、社会的因習や気取りに反抗的でありのままの自由の精神をもつ女性と言う意味だ。そこで”tramp”の発音は/trmp/で、”trump"/trəmp/(カードのトランプ)と間違わないように。"tramp"”の”a"は"cat"/kæt/の母音/æ/と同じ、発音、”cut"/kət/の母音/ə/と間違わないように。日本語カタカナ表記「トランプ」はどうしても”trump/Trump"に近い発音になってしまうので気をつけたい。筆者が顔を出したヴォーカル・セッションでどなたかがこの曲を歌っていたが、せっかく上手に歌っているのに/trəmp/と発音しているのが気になった。意味が違ってしまうので。
歌手の椎名林檎さんも歌っている。しっかり/træmp/と歌っている。現代の”a tramp"を彷彿させてくれる熱唱だ!凄い!ただ、曲の副題「その女ふしだらにつき」であるが、"a tramp"を「ふしだらな女」との字義通りの解釈には少々異論がある。コミュニケーション論にも絡むが、川端康成の『雪国』の解釈でも述べたが、物事の解釈は置かれた状況により千差万別、正解は無い。そう解釈するのはまたその人の自由。これはこれで素晴らしい、決して間違いではない。言語は相対的事象でありその解釈もしかり、正解などは無い。それに、椎名さんの歌い方にはLady Gagaと同様、様々な因習に対してそれに縛られてきた女性が強く抱く反骨精神を感ずる。因習から外れると「ふしだら」と見られてきた女性が、敢えて自らをそう呼ぶことにしてその不条理を訴えているような。椎名さんの付けた副題は問題提起として素晴らしい!これについてはまた。
次回"The Lady is a Tramp”「ザ・レディ・イズ・ア・トランプ」(2)"tramp"を「ふしだらな女」から「独立自尊の女性」へ意味変換..英語学をお楽しみに。
(2025年7月20日記)
いいなと思ったら応援しよう!
サポートいただけるととても嬉しいです。幼稚園児から社会人まで英語が好きになるよう相談を受けています。いただいたサポートはその為に使わせていただきます。