見出し画像

アウェイサポーターを町へ送り出せないか|Jリーグ版デジタル地域パスポート

「日本サッカー産業論|世界一になるための問い」

※本記事は、Kindle書籍『日本サッカー産業論』から生まれた問いを起点に、日本サッカーの現場と仕組みを考えるシリーズの一編です。

ホテルとバスの次に必要なもの

これまで、アウェイ遠征を地域活性化につなげる仕組みとして、二つの構想を書きました。

スポーツを入口として人の流れを生み出し、その流れを地域の未来へつなげる。

一つは、全国共通の認証基準に基づく宿泊ネットワーク「STAYX(ステイクロス)」です。

目指しているのは、単なる「スポーツホテル」ではありません。

STAYXとは、全国共通の認証によって地域のホテルを結び、スポーツ遠征を地域産業へ変えていく宿泊ネットワーク構想です。

もう一つは、物流の共同配送やフィジカルインターネットの考え方を取り入れた、アウェイバスの共同交通網です。

クラブごとに分断された移動需要を方面別に束ね、鉄道、バス、ホテル、地域交通をつなぎます。

これによって、

「行きたいけれど、交通手段がない」

「帰りの時間が不安なので諦める」

「地方から地方へ行きにくい」

という問題を少しでも減らせないかと考えました。

ホテルは、泊まる場所です。

バスは、地域まで人を運ぶ手段です。

では、その次に必要なものは何でしょうか。

地域に到着したアウェイサポーターを、スタジアムだけで終わらせず、町へ送り出す仕組みです。

そこで考えたのが、

Jリーグ版デジタル地域パスポート
「アウェイパスポート」

です。

すでに取り組んでいる地域もたくさんある

最初に、大切なことを書いておきます。

Jリーグのクラブやホームタウンの中には、すでにアウェイサポーターを歓迎する取り組みを行っている地域があります。

観光案内を発信する。

スタジアム周辺の飲食店を紹介する。

観戦チケットの提示で割引を受けられる。

地域の名産品を販売する。

商店街と連携する。

アウェイサポーター向けの情報をSNSで発信する。

試合日にイベントを開催する。

こうした取り組みは、引き続き行えばよいと思います。

地域によって、スタジアムの立地も違います。

駅前型のスタジアムもあれば、郊外にあるスタジアムもあります。

観光地が近い町もあれば、日常的な商店街や飲食文化に魅力がある町もあります。

全国一律に、同じ観光コースや同じ特典を設定する必要はありません。

地域の個性は、地域自身がつくるべきです。

一方で、まだ十分に取り組めていないクラブや、取り組んでいてもアウェイサポーターに届いていない地域もあるでしょう。

クラブに人員や予算がない。

自治体や商店街との調整が進まない。

店舗ごとに仕組みが違う。

特典をつくっても利用されたか分からない。

SNSで発信しているが、遠征する人に見つけてもらえない。

一度実施したが、継続できなかった。

こうした地域にとって、全国共通のアウェイパスポートが、取り組みを始める土台になるのではないでしょうか。

Jリーグと各クラブは、すでに年間2万回を超える規模でホームタウン活動を行っています。地域社会と企業、自治体などが連携して社会課題に取り組む「シャレン!」も広がっています。地域活動そのものが不足しているというより、数多くの活動を、アウェイ来訪者の行動とどう結びつけるかが次の課題なのだと思います。

アウェイパスポートとは何か

アウェイパスポートは、試合チケットと連動したデジタルパスポートです。

サポーターがJリーグ公式アプリやクラブアプリを開くと、その日の試合だけでなく、開催地の情報が表示されます。

たとえば、

地元の飲食店。

商店街。

温泉。

博物館。

道の駅。

観光施設。

地域交通。

STAYX認証ホテル。

スタジアム周辺のイベント。

アウェイユニフォーム歓迎店。

試合後も営業している店。

こうした場所が一つの地図に表示されます。

利用者が店舗や施設を訪れ、QRコード、位置情報、チケット提示、キャッシュレス決済などで利用を確認すると、デジタルスタンプが付与されます。

スタンプを集めると、

次回の観戦券割引。

限定デジタル画像。

地域産品。

クラブグッズ。

アウェイバス割引。

ホテル特典。

地域交通の割引。

抽選への応募。

などの特典を受けられます。

現在も、各クラブや地域が独自に店舗特典や観光案内を行っています。

アウェイパスポートは、それらをなくす仕組みではありません。

地域ごとの取り組みを、一つの共通入口から見つけられるようにする仕組みです。

試合を見て帰るだけの人にも、恩恵が必要である

地域活性化というと、

「せっかく来たのだから観光してください」

「地元の店で食事をしてください」

「商店街を回ってください」

という話になりがちです。

しかし、すべてのサポーターが町を巡りたいわけではありません。

試合だけを見たい人もいます。

仕事が終わってから来る人。

小さな子どもを連れている人。

翌朝早くから予定がある人。

体力に不安がある人。

試合に集中したい人。

負けたあと、寄り道せず帰りたい人もいるでしょう。

地域活性化のためだからといって、観光や買い物を強制してはいけません。

町を回らない人にも恩恵がある仕組みにする必要があります。

そこで、アウェイパスポートでは、試合チケットを購入した時点で「来訪スタンプ」を一つ付与します。

町を巡らなくても、

その地域を訪れた。

公共交通やバスを使った。

スタジアムで飲食した。

試合を観戦した。

それ自体が、地域に人を呼んだ行動です。

さらに、スタジアム入場、アウェイバス利用、鉄道利用、宿泊などでもスタンプがたまるようにします。

つまり、

町をたくさん巡った人だけが得をする仕組みにしない。

ということです。

試合だけを見て帰った人にも、次回利用できる小さな特典を付与します。

一方で、飲食店や観光施設を利用した人には追加スタンプを付けます。

利用者が自分の時間や目的に合わせて、参加の深さを選べるようにします。

地域活性化は、サポーターに新しい義務を課すことではありません。

選択肢を増やし、少しだけ町へ踏み出しやすくすることです。

「一店舗利用しないと意味がない」では続かない

デジタルスタンプラリーは、珍しいものではありません。

しかし、多くのスタンプラリーには、一度参加して終わってしまう問題があります。

複数の店舗を回らないと特典がもらえない。

登録が面倒。

アプリを別に入れなければならない。

どこに店があるか分からない。

試合開始時間が気になり、回る余裕がない。

特典に魅力がない。

店側も、スタンプラリーの参加者がどれだけ売上につながったのか分からない。

これでは長続きしません。

アウェイパスポートは、観光イベントとしてではなく、Jリーグ観戦の基本機能として組み込む必要があります。

新しいアプリを入れなくても、普段使っているJリーグのチケットIDや会員IDで利用できる。

試合チケットを購入すると、自動的にパスポートが表示される。

現在地や到着時間から、立ち寄りやすい場所だけを提案する。

試合開始まで30分しかなければ、スタジアム周辺の店だけを表示する。

二時間あれば、商店街や観光施設を含めたコースを表示する。

雨が降っていれば、屋内施設を提案する。

子ども連れなら、家族向けの場所を表示する。

宿泊者には翌朝のコースを提案する。

利用者全員に同じ観光案内を見せるのではなく、その人の遠征条件に合わせます。

ここでAIが役立ちます。

SNSに投稿された写真から、町の魅力を知る

アウェイサポーターが町で撮った写真は、地域にとって貴重な情報です。

何を食べたのか。

どの店へ行ったのか。

どんな風景を撮ったのか。

どこでユニフォーム姿の写真を撮ったのか。

何に驚いたのか。

何を褒めたのか。

どこで困ったのか。

どの場所を他のサポーターに勧めたのか。

これらは、アンケートだけでは十分に把握できません。

アンケートでは、用意された質問にしか答えられません。

しかしSNSには、サポーターが自分から興味を持ったものが表れます。

そこで、アウェイパスポートとホームクラブのSNSを連携させます。

たとえば、指定のハッシュタグを付けて写真を投稿します。

#今日のアウェイ旅

#クラブ名アウェイ

#ホームタウン名遠征

などです。

投稿した人には、デジタルスタンプや抽選権を付与します。

ホームクラブの公式アカウントは、投稿の一部を紹介します。

「今日来てくれたアウェイサポーターは、こんな場所を訪れています」

「この料理が人気です」

「スタジアム以外では、この景色が多く撮影されています」

と発信します。

ホームクラブがアウェイサポーターの投稿を紹介すれば、歓迎の意思が見えます。

地元のサポーターも、

「そんな場所があったのか」

「この店がアウェイの人に人気なのか」

と、自分たちの町を再発見できます。

外から来た人が町の価値を見つけ、地元の人へ返してくれるのです。

AIは、個人を監視するためではなく、町の傾向を見るために使う

SNS投稿の分析には、慎重さも必要です。

誰がどこへ行ったかを個人単位で追跡するような仕組みは、歓迎されないでしょう。

写真、位置情報、購買履歴、チケット情報を無制限に結びつけるべきでもありません。

利用者の明確な同意が必要です。

分析は匿名化し、個人ではなく全体傾向を見るために使います。

たとえばAIが分析するのは、

どのエリアへの投稿が多かったか。

どの料理が人気だったか。

家族連れはどこを訪れたか。

試合前と試合後で行動がどう違ったか。

滞在時間が長かった場所はどこか。

好意的な反応が多かったものは何か。

不満が多かった交通や案内は何か。

初めて来た人が迷いやすい場所はどこか。

という情報です。

利用者個人を評価するのではありません。

町の受け入れ方を改善するために使います。

写真の中に人の顔が写っている場合や、位置情報を含む場合の取り扱いも、あらかじめ明確にする必要があります。

AI分析を目的に無断で投稿を集めるのではなく、参加者が選べる仕組みにします。

「分析への利用に同意する」

「クラブ公式SNSでの紹介を許可する」

「写真投稿だけで、分析には使用しない」

といった選択ができるようにします。

便利さと地域活性化を理由に、個人の自由を奪ってはいけません。

地域が思っている魅力と、来訪者が感じる魅力は違う

自治体や観光協会は、どうしても有名観光地や名産品を前面に出します。

もちろん、それらは重要です。

しかし、アウェイサポーターが関心を持つものは、必ずしも地域が売り出したいものと一致しません。

地元では普通の食堂。

駅前の古い商店街。

川沿いの散歩道。

スタジアムまでの風景。

住宅街にある小さなパン屋。

地元サポーターが集まる店。

マンホール。

路面電車。

地元のスーパー。

他の地域にはない看板。

地域の人には日常でも、外から来た人には新鮮に見えます。

AIがSNS投稿やパスポート利用履歴を分析すると、

地域側が気づいていなかった魅力

が見えてくるかもしれません。

これは単なるマーケティングデータではありません。

町が、自分自身を外から見るための鏡です。

アウェイサポーターがどこへ行き、何を食べ、何に関心を持ったのか。

その情報を地元へ返すことで、住民自身が町の良さを知ることができます。

Jリーグが設立当初から掲げてきたホームタウンの考え方は、プロサッカーの試合を開催することだけではなく、スポーツを通じて地域に活動と交流の機会を生むことでした。

アウェイパスポートは、そのホームタウンを外から見つめる仕組みにもなります。

人気店だけに人が集中しない仕組み

SNSやランキングには、人気が人気を呼ぶ特徴があります。

一つの店が紹介されると、そこへ人が集中します。

一方で、良い店でもSNS発信が苦手な店や、駅から少し離れた店は見つけてもらえません。

アウェイパスポートが単なる人気ランキングになれば、一部の店舗だけが得をします。

そこで、AIの推薦には多様性を持たせます。

「現在空いている店」

「初めて参加した店」

「駅から少し離れているが評価の高い店」

「少人数で運営しているため、一度に案内できる人数が限られる店」

「地域住民がおすすめする店」

「アウェイサポーターの利用がまだ少ないエリア」

などを組み合わせます。

店舗側は、受け入れ可能人数や混雑状況を登録します。

20人しか入れない店に、100人を送ってはいけません。

大人数を受け入れられる店と、小規模な店を分けて案内します。

利用者が集中しすぎた場合には、別の店を提案します。

これは交通の分散と同じです。

人を集めるだけでなく、町の中に適切に流す必要があります。

店舗側の負担を小さくする

地域連携が進まない理由の一つは、店舗側の負担です。

説明会へ参加する。

専用端末を置く。

クーポンを管理する。

利用者に操作方法を説明する。

後から補助金の申請をする。

クラブへ報告書を提出する。

こうした作業が増えれば、小さな店ほど参加しにくくなります。

アウェイパスポートは、店側の参加をできるだけ簡単にする必要があります。

店舗は、

営業時間。

提供できる特典。

混雑状況。

アウェイユニフォームでの入店可否。

子ども連れ対応。

予約の必要性。

試合後営業の有無。

といった基本情報を登録します。

利用確認は、店に置かれたQRコードを利用者が読み取る方式でも構いません。

特別な割引を設定できない店も参加できるようにします。

「来店スタンプだけ」

「写真撮影だけ」

「トイレ利用可能」

「荷物を一時的に置ける」

「地域案内ができる」

など、店によって異なる形で参加できます。

値引きだけが地域連携ではありません。

むしろ小規模店舗に過度な割引を求めると、アウェイサポーターが増えるほど店が苦しくなります。

店側にも利益が残る設計が必要です。

町を巡る人には、地域内で使える特典を返す

アウェイパスポートの特典は、すべてクラブグッズにする必要はありません。

地域で使えるポイントを付ける方法があります。

たとえば、

試合観戦で100ポイント。

地域交通利用で50ポイント。

加盟店利用で50ポイント。

宿泊で200ポイント。

SNS投稿で20ポイント。

といった形です。

ただし、ゲームのように大量のポイントを集めさせることが目的ではありません。

ポイントは次回の遠征や、その地域での再訪に使えるようにします。

アウェイバス。

STAYXホテル。

地域交通。

飲食店。

地域産品EC。

次回の観戦券。

などに利用できます。

これによって、一度の遠征で関係が終わりません。

「もう一度この町へ行こう」

「今度は家族を連れて行こう」

「試合がない日にも訪れよう」

という再訪につながります。

スポーツツーリズムは、観戦や大会、合宿などを通じて地域への訪問者を増やし、地域内の交流と消費を生み出す取り組みです。全国には、宿泊、移動、食事などを一元的に支援する地域スポーツコミッションも存在します。

アウェイパスポートは、こうした地域側の取り組みとサポーターをつなぐ共通窓口にもなります。

クラブは、地域への貢献を数字で説明できる

クラブが自治体やスポンサーと話すとき、

「アウェイサポーターがたくさん来ました」

だけでは、地域への効果を十分に説明できません。

何人が宿泊したのか。

どのエリアを訪れたのか。

何店舗が利用されたのか。

試合前と試合後、どちらの消費が多いのか。

公共交通は使われたのか。

何人が再訪したのか。

どの地域資源への関心が高かったのか。

こうした情報があれば、クラブは地域への貢献を具体的に示せます。

自治体も、どの施策に効果があったかを検証できます。

スポンサーは、自社の支援が地域に何をもたらしたかを確認できます。

飲食店や商店街は、次の試合に向けて準備できます。

バス会社や鉄道会社は、実際の移動需要を把握できます。

ホテルは、宿泊だけでなくチェックイン前後の行動を踏まえてサービスを改善できます。

ただし、ここでも大切なのは、クラブ間の単純な順位づけにしないことです。

「消費額が多いクラブが優秀」

「観光地が多い地域が上位」

という比較では、人口や立地に恵まれたクラブが有利になります。

評価するなら、

前年より利用者が増えた。

スタジアム直行型から地域回遊型へ変化した。

新しい店舗が参加した。

試合後の交通問題が改善した。

サポーターの満足度が上がった。

地域住民の評価が上がった。

といった改善度を見るべきです。

すでにうまくいっている地域は、さらに高度な取り組みへ進む。

まだ十分にできていない地域は、小さく始める。

全国一律の競争ではなく、それぞれの町が前へ進むための仕組みにします。

最初から全国完璧を目指さない

アウェイパスポートを全国で始めるとしても、最初からすべての地域に同じ機能を求める必要はありません。

導入段階を分けます。

第一段階では、

試合チケットとの連携。

地域マップ。

来訪スタンプ。

数店舗の加盟店。

ホームクラブSNSでの写真紹介。

だけでも構いません。

第二段階では、

地域交通。

ホテル。

観光施設。

SNS投稿。

地域ポイント。

を加えます。

第三段階では、

AIによる行動傾向分析。

混雑分散。

個人に合わせた提案。

アウェイバスやSTAYXとの統合。

再訪促進。

へ発展させます。

地域側に十分な人員がない場合は、Jリーグが基本テンプレートを提供します。

全国共通のデザイン。

店舗登録フォーム。

QRコード。

SNS投稿ルール。

個人情報の取り扱い。

分析レポート。

こうした部分を共通化すれば、小規模クラブでも始めやすくなります。

地域ごとにゼロからシステムを開発する必要はありません。

物流や交通の共同化と同じく、

共通化できる部分はリーグ全体で持ち、地域の個性が出る部分はクラブに任せる。

という考え方です。

サポーターは地域活性化の道具ではない

地域活性化を考えるとき、忘れてはいけないことがあります。

アウェイサポーターは、地域にお金を落とすために存在しているわけではありません。

第一の目的は、自分のクラブを応援することです。

試合に勝てば喜びます。

負ければ落ち込みます。

町を巡る気分になれない日もあります。

地域側は、

「遠くから来たのだから、もっと消費してほしい」

「観光地を回ってほしい」

と要求するのではなく、

「来てくれただけでも、ありがとう」

という姿勢を基本にすべきです。

そのうえで、

少し時間があれば、この店へ。

雨が降っているなら、この施設へ。

試合後も残れるなら、この場所へ。

次回来るときは、この地域へ。

と提案します。

アウェイパスポートは、サポーターを町の都合で動かす仕組みではありません。

サポーターが自分に合った形で、町と接点を持てる仕組みです。

試合だけを見て帰ってもよい。

スタジアムグルメを一品食べるだけでもよい。

商店街を歩くだけでもよい。

一泊して翌日まで楽しんでもよい。

そのすべてを、地域への来訪として認めます。

アウェイサポーターが町の広報担当になる

アウェイサポーターは、全国各地からやって来ます。

その人たちが地元へ帰り、

「この町はよかった」

「スタジアムまでの道が楽しかった」

「あの料理がおいしかった」

「地元の人が親切だった」

と話せば、それ自体が地域の広報になります。

自治体がつくった広告よりも、実際に訪れた人の言葉の方が伝わることがあります。

ホームクラブのSNSがアウェイサポーターの写真を紹介し、アウェイクラブもそれを共有する。

地元の店が投稿へ返信する。

ホームサポーターが別のおすすめを教える。

その交流を見た人が、次の試合で訪れる。

こうして試合日だけの関係が、次の遠征へつながります。

さらに、アウェイサポーターの投稿を見た地元住民が、

「自分の町に、こんな景色があったのか」

「この食堂は、他の地域の人にとって魅力的なのか」

と気づきます。

地域活性化とは、外から来た人がお金を使うことだけではありません。

地域の人が、自分の町に誇りを持つことでもあります。

ホームタウン活動を、ホームタウンの外へ広げる

Jリーグの地域密着は、これまでホームクラブと地元住民の関係を中心に育ってきました。

それは、これからも大切です。

しかし、全国にクラブが広がった現在、次の段階へ進めるのではないでしょうか。

ホームクラブと地元住民。

アウェイクラブと遠征サポーター。

訪れる人と迎える人。

町と町。

それぞれをつなぎます。

Jリーグは、41都道府県に60クラブが存在する全国的な地域ネットワークへ発展しました。各クラブが地域で輝くことと、リーグ全体が成長することの両立が、クラブ経営上の重要な目標にもなっています。

毎週末、そのネットワークを人が移動します。

これほど定期的に、全国各地の町と町を結ぶ仕組みは多くありません。

その移動を試合だけで終わらせず、町の中へ広げる。

訪れた人の視点を、地域へ返す。

成功した取り組みを、別のクラブが参考にする。

まだ始められていない地域には、共通の仕組みを提供する。

すでに成功している地域は、その取り組みをさらに発展させる。

アウェイパスポートは、全国を同じ町にする仕組みではありません。

それぞれの町の違いを、訪れた人に発見してもらう仕組みです。

サッカーを見に行ったら、町を好きになった

最初の目的は、サッカーです。

応援するクラブの試合を見たい。

それだけです。

しかし、試合へ行く途中で店に入り、地元の料理を食べます。

町を歩きます。

地域の人と話します。

スタジアムから山や海を眺めます。

帰宅後、写真を見返します。

そして、いつの間にか、

「また、あの町へ行きたい」

と思うようになります。

サッカーを見に行っただけなのに、町を好きになっている。

それが、アウェイ遠征の持つ力です。

STAYXが、泊まる場所をつくる。

アウェイバスが、町と町をつなぐ。

アウェイパスポートが、到着した人を町へ送り出す。

そして、訪れた人の体験がSNSを通じて地域へ返ってくる。

ホテル。

交通。

観戦。

飲食。

観光。

商店街。

SNS。

地域データ。

これらが一つにつながれば、アウェイ遠征は一日のイベントではなくなります。

サッカーを起点に、人が動く。

人が動くことで、町に新しい視点が入る。

町の魅力が、外から来た人によって見つけられる。

その魅力を地元の人が再発見する。

また別の人が、その町を訪れる。

日本サッカーがもう一歩先へ進むためには、試合の質を高めることだけではなく、Jリーグを見に行くこと自体の価値を高める必要があります。

ホームだけでなく、アウェイにも行ってみたい。

遠征したら、サッカー以外にも何かがある。

次は、どの町へ行こうか。

そう考える人が増えれば、Jリーグの人気は全国へ広がります。

アウェイサポーターを、スタジアムだけで帰してしまうのは、あまりにももったいない。

町を歩く人も。

試合だけを見て帰る人も。

店を訪れる人も。

写真を投稿する人も。

迎える地域も。

クラブも。

交通機関も。

誰かに無理をさせるのではなく、それぞれが少しずつ恩恵を受ける。

そんなアウェイパスポートがあったら面白いと思います。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

本記事は、「日本サッカー産業論を起点に生まれた問い」シリーズの一編です。

スタジアム、宿泊、交通、観戦体験、地域経済。
サッカーを試合だけで終わらせず、人の流れを生み出し、その流れを地域の未来へつなげる仕組みを考えています。

本記事は、Kindle書籍『Jリーグアウェイ経済論 サポーターの移動から始まる地域交流』の調査・構想記事です。アウェイ遠征を、交通、宿泊、観光、地域消費、関係人口の視点から考えています。

蒼色真琴
MA Publishing

#Jリーグ
#日本サッカー
#日本サッカー産業論
#アウェイ遠征
#アウェイパスポート
#アウェイツーリズム
#地域活性化
#地方創生
#スポーツツーリズム
#ホームタウン
#デジタルパスポート
#観光DX #AI活用
#地域経済
#未来構想
#スタジアム地方創生
#アウェイ経済
#サポーター経済
#スポーツ施設論
#Jリーグ地域経済

いいなと思ったら応援しよう!