『対夢魔調停局東京支部』第2話
灰渕虎竹(4)(15)高校一年生
白峰無角(16)調停員
四ノ宮稟(26)副支部長
丹羽千陽(40・声のみ)虎竹の伯母
胡蝶 (19・声のみ)女性
銀華 (18)雪女の夢魔。虎竹の番
敵1
◯対夢魔調停局東京支部・廊下
廊下に仰向けで倒れている灰渕虎竹(15)。
虎竹N「前回のあらすじ。心臓が無くなった」
白峰無角(16)、虎竹を見下ろしている。
◯同・会議室
二枚のホワイトボードの前に、長机と椅子が並んでいる。
入ってくる虎竹と白峰。
白峰「落ち着いた?」
虎竹「一応……いや嘘。余裕で無理」
ホワイトボードの前に立っている四ノ宮稟(26)。
四ノ宮、メガネをかけている。
四ノ宮「脱走体の捕獲、お疲れ様です」
白峰「お、遅刻免除の予感」
椅子に座り、足を組む白峰。
四ノ宮、虎竹に向き直る。
四ノ宮「初めまして。副支部長の四ノ宮といいます」
虎竹「……ハジメマシテ」
四ノ宮「怪我は痛みますか?」
虎竹「えっと、今は、大丈夫です」
四ノ宮「(ほっとして)良かった」
四ノ宮、職員証とマイナンバーカードを差し出す。
四ノ宮「私の職員証とマイナンバーカードです。ご確認下さい」
虎竹「ど、どうも」
虎竹、二枚のカードを受け取る。
職員証に『対夢魔調停局東京支部・副支部長 四ノ宮稟』と書かれている。
× × ×
四ノ宮、ホワイトボードに横線を引く。
椅子に座っている虎竹。
白峰、後方の席であくびをしている。
線の上側に『精神世界』と書かれている。
四ノ宮、上側に黒丸を描く。
黒丸の脇に『核』と書かれている。
黒丸から下に矢印を引き、先端を四角で囲う四ノ宮。
四ノ宮「精神世界にいる夢魔が受肉した存在」
四角の下に『伝承、信仰、生贄…etc』と書かれている。
四ノ宮、プロジェクターを起動する。
別のホワイトボードに、銀華(18)の写真が写る。
遠くから撮られた横顔の写真。
四ノ宮「その一人が、君の接触した『雪女』です」
虎竹「雪女……」
写真が切り替わる。
木々の間から氷柱が伸びている写真。
四ノ宮「『雪女』の能力行使を感知し、君と男三名を発見しました」
虎竹、片腕を強く握る。
四ノ宮「男達は現行犯で収監。後ほど警察から連絡があるかと」
控えめに片手を上げる虎竹。
四ノ宮「どうぞ」
虎竹「皆さんが見つけた時点で、俺と彼女は、その、融合してたってことですか?」
白峰の声「そだよ」
白峰の方を向く虎竹。
白峰「番になってた」
虎竹、目を見開いて、
虎竹「番?」
白峰、立ち上がって、虎竹に詰め寄る。
白峰の左目に椿の花が咲く。
笑っている白峰。
白峰「受肉体の一部と引き換えに、継続的に精気を貢ぐ契約」
後ろに下がろうとする虎竹。
虎竹の座っている椅子が傾く。
後ろに傾いている虎竹の背中を、黒い蝙蝠型の翼が支える。
虎竹、視線を上げる。
四ノ宮の背中から一対の翼が生えている。
四ノ宮「(ため息混じりに)……無角」
白峰「悪い悪い」
白峰、虎竹の隣に座る。
白峰の片目の花、四ノ宮の背中の翼、消える。
虎竹、呆気に取られている。
虎竹「ふ、二人も」
四ノ宮「えぇ、番がいます」
白峰「調停員はみんなそうだぜ」
四ノ宮、ファイルから書類を取り出している。
四ノ宮「最も、全身を与えられたケースは初ですが」
虎竹、片手で左胸を押さえる。
顔を伏せる虎竹。表情が歪んでいる。
虎竹M「俺の、延命のため?」
白峰、右目を閉じて虎竹を見ている。
白峰M「フラッシュバックの様子無し。防衛本能か?」
机に片肘をついている白峰。
白峰M「ま、俺には関係ねェや」
× × ×
緊張した面持ちで椅子に座っている虎竹。
机に伏して寝ている白峰。
四ノ宮、虎竹に書類を見せている。
◯同・ロッカールーム(夕)
着替えている虎竹。
虎竹N「一、今のところ、俺の体は普通に生活できる」
虎竹、スマホを充電器にさす。
スマホ、画面端にヒビ。
通信履歴に『伯母さん』が並んでいる。
虎竹N「二、夢魔のことを一親等以上に広めてはいけない」
冷や汗をかいている虎竹。
虎竹N「三、番のいる人間は『調停員』になることが推奨される」
◯同・正面玄関・中(夕)
玄関扉の前。
虎竹、四ノ宮、白峰が立っている。
虎竹、スマホを耳に当てている。
スマホから丹羽千陽(40)の声。
千陽の声「暴行事件に巻き込まれたって……心臓が止まるかと」
虎竹「すみません、心配かけて」
千陽の声「ちゃんと安静にするのよ?」
虎竹「はい。ありがとうございます」
通話を切る虎竹。
四ノ宮「我々もできる限りサポートします」
虎竹、頭から湯気が出ている。
虎竹「あざっす……」
白峰「沸騰しとる」
四ノ宮、振り返りって、
四ノ宮「無角、帰宅中の護衛を」
白峰、自分の顔を指差して、
白峰「俺ェ!? 他は?」
四ノ宮「巡回業務です」
白峰、四ノ宮の腕を掴んで揺らす。
白峰「副支部長いつもこの時間空いてるじゃんか〜」
四ノ宮「今回の件で本部との会議があるので」
顔を見合わせる虎竹と白峰。
◯商店街(夕)
賑わっている商店街。
肉屋の前に立っている白峰と虎竹。
白峰、虎竹にコロッケを差し出す。
白峰「ん」
虎竹「ありがとう」
虎竹、受け取って少しずつ食べ始める。
白峰、コロッケを二口で食べ切る。
虎竹「(気まずそうに)その、名前」
白峰「ん? あァ」
白峰、笑って片手を差し出す。
白峰「白峰無角。無角でいいぜ」
手を差し出して握手をする虎竹。
虎竹「虎竹だ。よろしく」
白峰「よろしく!」
虎竹、白峰の手の傷痕を見ている。
白峰「不安か?」
虎竹「そりゃ、そうだろ……」
白峰「(満面の笑みで)だよなァ〜!!」
虎竹「良い笑顔」
白峰「他人の不幸で飯が美味い」
虎竹「良い性格」
ため息を吐く虎竹。
虎竹「……原因を考えても不用心な自分しか出てこん」
白峰、虎竹の肩を叩く。
◯坂道(夕)
人気のない坂道。
虎竹と白峰、並んで歩いている。
白峰「ここ下ったら駅だぜ」
白峰のスマホから警告音。
虎竹、両目を見開く。
虎竹M「さっきと同じ」
虎竹と白峰の頭上に影。
虎竹、頭上を見上げる。
白峰、背中側に手を入れながら顔を上げる。
頭上から敵1が落ちてくる。
敵1、一対の翼の生えた白い肉塊。
虎竹を蹴り飛ばす白峰。
白峰、敵1の片翼を切る。
受け身を取っている虎竹。
敵1、手足が生える。
白峰を両手で殴りつける敵2。
白峰、マチェットで防ぐ。
右目を閉じている白峰。
白峰M「核がねェ」
敵1の拳を受け流す白峰。
白峰、敵1の腕を切りつけ、距離を取る。
片耳の通信機に触れる白峰。
白峰「応援要請。変種一体と交戦開始」
敵1、翼と腕の傷を塞ぐ。
白峰「(苦笑して)マジ?」
両目を細める白峰。
白峰M「……あれじゃ転移は厳しい。応援が来るまで凌ぐか」
虎竹の方を向く白峰。
白峰「椿、あいつを逃がし──」
白峰、両目を見開く。
虎竹の足元を氷が覆っている。
虎竹の体を覆っていく氷。
虎竹、無表情。
敵1、虎竹の方に飛びかかる。
虎竹「(はっとして)!」
虎竹、片腕で頭を庇おうとする。
虎竹の片手が敵1に触れる。
凍りつく敵1。
白峰、凍っている敵2を虎竹の頭上から蹴り飛ばす。
白峰「セーフ」
背後から伸びてきた氷柱を避ける白峰。
虎竹の体から数本の氷柱が伸びている。
荒く息をしている虎竹。
白峰M「暴走か」
白峰、氷柱をマチェットで砕く。
白峰「おい! 番に呼びかけろ!」
虎竹「よ、呼び?」
白峰「名前とか?」
虎竹「知らない!」
白峰「ありゃ」
伸びてきた氷柱が白峰の頬を掠める。
白峰の頬から血が垂れる。
両目を見開く虎竹。
◯(回想)公園
ベンチで絵を描いている灰渕虎竹(4)。
虎竹に話しかける胡蝶(19)の声。
胡蝶の声「何を描いているの?」
虎竹、顔を上げ、笑顔で口を開く。
着物を着た銀髪の少女の絵。
◯坂道(夕)
灰渕虎竹(16)、両目を見開いている。
虎竹「銀華」
氷柱にヒビが入る。
虎竹「もう、大丈夫」
砕け散る氷柱。地面の氷が溶けていく。
× × ×
『通行止め』の看板。
トラックの荷台に乗せられている敵1。
道の脇に座っている白峰と虎竹。
四ノ宮、白峰の正面に立っている。グレーのスーツ姿。
白峰の頬に絆創膏。
白峰「イマジナリーフレンド?」
虎竹、頷く。
虎竹「特徴も似てるし、名前も同じだった」
四ノ宮「おそらく『雪女』と『銀華(イマジナリーフレンド)』を基盤に受肉したのでしょう」
白峰「へェ〜」
虎竹、白峰の絆創膏を見て顔を伏せる。
虎竹「ごめん」
白峰「お? 何が?」
顎に手を当てて考え込む四ノ宮。
四ノ宮「……」
白峰「どしたん副支部長」
四ノ宮「いえ、なんでも」
両腕を伸ばしている白峰。
立ち上がる虎竹。
白峰「うぉっ」
虎竹、白峰と四ノ宮に向き直る。
深呼吸をする虎竹。
虎竹M「あの氷の使い方も……彼女と分離する方法も、俺一人じゃわからない」
虎竹、拳を握りしめて、顔を上げる。
虎竹「なりたいです、調停員」
白峰、四ノ宮、驚いた後に笑みを浮かべる。
白峰「歓迎するぜ、新入り」
四ノ宮「調停局にようこそ」
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