第3話:「クマリン動く」
🛣️ 連載シリーズ|髪が生えたら、サービスエリアが騒ぎ出した。
📘 第0話:これは、高速道路と芸能事務所と、ちょっぴり不思議な話。
🚗 第1話:若返った社長は、健康ドリンクの夢を見るか?
🌹 第2話:バズる男とハイウェイの女
📝前回までのあらすじ
自信満々にバズる社長。だがその裏では、試作品の暴走に気づいたクマリンが絶望していた。
「毛根が……生きている……」
🐻第3話「クマリン動く」ーー僕は"頭だけ"……でも行く
研究室の空気が、妙に静かだった。
たぶん、僕の心がそれ以上にざわついていたからだと思う。
休憩がてら、録画リストを何気なく再生する。
——「あなたの知らない化学の世界」
化学者としてはつい見てしまう番組だ。
画面に映ったのは、ワインレッドのネクタイを締め、笑顔で何かを掲げる青葉社長。
あの、どこにいても存在感を消せない派手さ。
口を開けば軽快な冗談、歩けば周囲を巻き込むポーズ。
高速道路の開通式に現れたら、式典より社長がニュースになるタイプだ。
手には——ドリンクのボトル。
形もラベルも、僕の試作品とは違う。
……なのに、なぜだろう。
映像越しでも、あの中に入っている液体の色や、とろみの具合が、妙に見覚えがあった。
胸の奥で、警報のようなざわめきが広がる。
——まさか。
放送日を確認すると、数日前。
すぐに外へ飛び出し、馴染みの薬局へ向かった。
しかし、棚は空っぽ。
店員が申し訳なさそうに首を振る。
「テレビで紹介されたんですよ。今朝から毛量に悩むお客様が、もう——」
言葉の途中で、紙袋を抱えて満足げに出ていくスーツ姿のおじさんたちが視界を横切る。
2軒目も同じ。
“ついてるポーズ”の写真が貼られた売り場は、見事に空だった。
そして3軒目。

「若返り?偶然さ…フッ」——薬局のポスターから放たれる、青葉社長の圧倒的存在感。
最後の1本をなんとか確保した僕は、キャップを開けることなく研究所へ持ち帰った。
成分分析の結果—— 一致。
やっぱり……そうか。
「……気のせいじゃなかった」
僕は静かに絶望した。
そして、すべてを悟った。
このまま放っておけば――
「高速道路が全線“王子ポスター”で埋まる未来しか見えない……」
あのテンションで“全線開通ポスター”とか、社会的にアウトだ。
「行かなくちゃ。僕が止めないと、あの社長……じゃなくて、社会が危ない」
机の上に置かれたクマの頭部を、そっと撫でる。
このまま人前に出ていいのか。
けれど、それを気にしている場合ではない。
「……いや、大事なのは中身だ。中身がちゃんとしてれば、見た目はクマでも……って、クマじゃない(?)」
自分でも何を言ってるのか、もうよくわからなかった。
でも、なんかもう、勢いで決めた。
「覚悟を決めよう」
「このポンコツ劇場に、僕が終止符を打つ」

「僕は“頭だけ”……でも、行くしかない」
クマの頭をそっと撫でながら、クマリンは決意する。
ドアが開く。
冷気が背中を押す。
そのとき、研究ノートがパラリとめくれた。
※副作用:ごくまれに“毛が止まらなくなる”ケースあり(参考:データNo.7)
つまり、髪が生えるだけで終わらないかもしれない。
全身、モジャモジャに……!?
「……それ、もう“クマ”じゃん……僕なんて“頭だけ”なのに……」
誰もそれに気づくことはなかった。
まだ、この時点では。
🐻✨つづく!
🎬【とある日のテレビ局】
「さぁ!今日も“ついてるポーズ”で華麗に登場だッ!」
気合を入れたその瞬間——
バフッ!

「コード?踏んでこそ人生だろう」
——バフッと転んで、バズった男の伝説的瞬間。
床に伸びたコードに引っかかり、見事にスライディングする社長。
スーツのバラが宙を舞い、スタジオに静寂が走る。
スタッフがそっと声をかけた。
「……コード、見えてたんですけど……」
それに対して社長は、何食わぬ顔でこう言い放った。
「見えてたら踏まないなんて、誰が決めた?」
そう、青葉社長はいつもこう。
コードがあっても、道があっても、
――行くと決めたら、踏み抜くのだ。
だが、誰も気づいていなかった。
社長の“若返り”と、クマリンの“封印レシピ”が——
とある企業の “企業レーダー” を、すでに反応させていたことに。
「……やばいな。あの会社、鼻が利くから」
「髪が生えたって聞いただけで、“飲料販売”に走るようなとこだぞ……」
そう、それは“ある会社”の噂話。
業界では有名だ——表ではおとなしく、裏ではちゃっかり動くあの企業。
その名前は……まぁ、ここでは伏せておこう。
言わずとも、察しのいい人ならピンとくるはずだ。
次回、
「例の会社、動くらしい。」
——静かに、でも確実に、“なにか”が動き出していた。
……いや、もう、動き始めているのかもしれない。あなたの知らないところで。
「もう展開が多すぎる」
つづく!
第4話:「システナリオ中部、出動!」
🪞 前回のあらすじを読む →第2話「バズる男とハイウェイの女」
🌱 はじまりの物語へ戻る → 第0話「これは、高速道路と芸能事務所と、ちょっぴり不思議な話。」
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