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人事は経営会議にどんなアジェンダを持ち込むべき?

経営会議に参加するたびに、いつも考えることがあります。
「人事は、この会議で何を問題提起すべきなのか」と。

新しい制度の提案、研修の成果報告、サーベイのスコアの共有…。
どれも大切ですが、これらは経営会議のアジェンダにはなりません。

そもそも経営会議とは、資源をどこに投じ、どこを縮小し、何をやめるかを決める場だと考えます。

では、この場の意味合いを踏まえ、どんなアジェンダを持ち込むべきなのでしょうか。いくつかの例をもとに考えてみたいと思います。


「人が足りない」は、どんな経営課題か


「採用が大変です」
「エンジニアが足りません」

どちらも現場では切実な課題です。解決しなければなりません。

ただ、それをそのまま経営会議に持ち込んでも、議題にはなりにくいと考えます。なぜなら、それは“困っている状況”の説明であって、経営や事業にどう影響があるかの議論になっていないからです。

たとえば、売上の30%を3年以内にAI・データ関連事業に転換しようとする会社があるとしましょう。

そして、その会社の実態として、エンジニアの7割が既存システムの保守運用に従事し、評価制度は短期売上への貢献度を重視、報酬も既存事業の成果基準で決まっている。
さらに、AI人材の育成予算は全体人件費の1%未満にとどまっているとしましょう。

この状態で「AIにシフトする」と言っても、現実は変わりません。人も制度も既存事業に最適化されたままだからです。
結果として、戦略は掲げられているのに、組織は動かない状態に陥ってしまいます。

だからこそ、経営会議で立てるべき問いはこうなります。
「戦略を実行するために、人材資源をどこに再配分すべきか」

具体的には、
・AI領域の人材を何名増やすべきか。
・保守運用領域はどこまで効率化・縮小できるか。
・既存人材のうち何%をリスキリングに振り向けるか。
・その投資は、3年後の売上目標に対して妥当か。

ここまで踏み込んで初めて、議論は「採用が難しい」という現象報告から、「資源配分をどう変えるか」という経営判断の領域に移ると考えます。


「あの人が辞めそう」は、どれだけの経営リスクか


「優秀な人が辞めそうです」
これもまた、よくある報告です。

しかし経営が知りたいのは感想ではありません。それよりも重要なのは、辞めたら何が起きるのかを具体的に示すことです。

例えば、次のような観点です。
・その人の代替可能性はどの程度か
・担当顧客や案件への影響はいくらか
・売上や利益へのインパクトはどれほどか
・後任を育成するのに必要な時間とコストはいくらか

仮に、その人が担当する売上が年間2億円で、その大半を占めるクライアントとの関係構築に5年を要しているとしましょう。
この場合、離脱は単なる人員減ではありません。将来キャッシュフローの毀損リスクです。

このとき、数値で示せて初めて、経営会議の議論は「慰留するかどうか」ではなく、「どの程度の投資をして守るべきか」という資源配分の話になります。

この場合も、人事が持ち込むべきなのは、離脱した場合の事業インパクトを定量化し、選択肢を提示すること。
そこまで踏み込んで初めて、キーマンの問題は“現場の話”から“経営の話”へと引き上がると考えます。


「現場が忙しい」は、何が経営的に問題なのか


多くの会社で、気づけば会議時間は増え、間接業務は膨らみ続けています。
しかし、その状態を「忙しい」という一言で片づけ、構造として捉えていないケースが少なくありません。

では、「忙しい」ことの何が経営的な問題なのでしょうか。

問題は、忙しさそのものではありません。
忙しさが、資源配分の歪みを示している可能性があることです。

経営会議で問うべきは、感覚ではなく構造です。

・管理部門比率は事業規模に対して適正か
・会議時間の総量は、売上や付加価値と連動しているか
・人件費ROIは改善しているか、それとも低下しているか

例えば、売上が横ばいにもかかわらず管理部門比率だけが上昇している場合、それは組織が重くなっているサインかもしれません。
また、月間の会議時間が前年比20%増えているのに意思決定スピードが変わらないのであれば、時間が価値に変わっていない可能性があります。

つまり、「忙しい」という状態は、
人件費という最大コストが、十分に価値に転換されていないサインかもしれないのです。

だからこそ、「忙しい」はアジェンダではありません。
問うべきは、非効率が構造として固定化していないか、そして資源が適切に配分されているかということです。


最後に:人事が“支援”で留まるのは、もう止めよう


人件費は、多くの企業で最大のコストと見られがちです。しかし、私は同時に、最大の投資対象でもあると考えます。

だからこそ人事は、「応援します」という立場ではなく、
この戦略を選ぶなら、人の構造をこう変える必要があります
と言える存在であるべきだと考えます。

それは時に、経営に覚悟を迫ることにもなります。
けれど、そこまで踏み込めてこそ、人事は経営の一員になるのだと思います。


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