MBAは「スマートな学び」なんかじゃない。泥臭く「自分のキャパ」を広げる、2年間の猛特訓だ。
グロービス経営大学院に入学して、もうすぐ1年が経とうとしています。単科生として学び始めた時期を含めれば、もう1年以上、この生活を続けていることになります。
正直に白状します。入学前、僕はMBA(経営学修士)という響きに、どこか「スマート」で「知的」なイメージを持っていました。スタバでMacBookを開き、涼しい顔で経営戦略を練る。週末はワイン片手に仲間と高尚な議論を交わす……。
大間違いでした。
僕の今の現実は、そんな綺麗なものじゃありません。睡眠時間を削り、重たい瞼(まぶた)をこじ開け、自分の限界値をギリギリまで引き伸ばし続ける。これは「お勉強」ではなく、「人生の基礎体力を叩き直すブートキャンプ(猛特訓)」だったのです。
今回はパンフレットには載っていない、MBA生活の「泥臭いリアル」について書きます。
記憶が飛ぶほどの、睡眠不足
この1年で、僕の生活は激変しました。授業、レポート作成、予習復習。これだけでも大変なのに、そこへオンライン勉強会、セクション活動、読書会、業界勉強会……と、雪だるま式に「やりたいこと・やるべきこと」が増えていきます。さらに、授業でおすすめされる書籍がどれも面白そうで、読書欲も爆発する。
そこに、家業である「珈琲青木堂」の経営、新しく始めた「金曜夜のワイン営業」、ケータリングの「福むすびコーヒー」の準備が重なります。
削れるのは「無駄な浪費の時間」と「睡眠時間」しかありません。結果、平均睡眠時間は以前より2〜3時間減りました。
先日、こんなことがありました。レポートの提出期限が迫り、深夜までPCに向かい、数時間の仮眠をとって朝の電車に乗った時のことです。
「移動中も1ページでも読まないと……」
必死にスマホで課題図書を目で追っていました。しかし、気づいた時にはスマホが手から滑り落ち、カタンという音でハッと目が覚めました。窓の外を見ると、降りるべき駅を遥か通り過ぎた、見知らぬ景色。
「やってしまった……」
絶望感と共に、反対方向の電車を待つホームで、僕は呆然と立ち尽くしました。スマートさの欠片もありません。ただただ、必死で、泥臭い毎日です。
「君たちは、キャパを広げる訓練をしているんだ」
「なんで自分は、こんなに自分を追い込んでいるんだろう?」
ふと、そんな弱音が頭をよぎりそうになった時、ある学事行事(ブリッジングセッション)での担当教員の言葉が、僕を救ってくれました。
先生は、諭すような優しい口調で、こう言いました。
「MBAの2年間はね、とにかく『自分のキャパシティ(容量)』を広げるための2年間なんですよ」
ハッとしました。
知識を詰め込むことが目的ではない。膨大なタスク、複雑な人間関係、次々と現れるチャンス。それらを処理し、決断し、行動し続けることで、「自分という器」のサイズそのものを無理やり押し広げているのだ、と。
実際のビジネスの現場も同じです。膨大なタスクがあり、複雑な人間関係が入り組み、次々とチャンスとピンチが入れ替わり立ち替わりあります。
筋肉と同じです。重い負荷をかけなければ、筋繊維は太くならない。今のこの「しんどさ」は、まさに脳と心が筋肉痛を起こしながら、成長しようとしている証拠だったのです。
「シュリンク(縮小)」することへの恐怖
先生はこう続けました。
「卒業後、何もしなければ、広がったキャパはまたシュリンク(縮小)してしまいます」
この言葉は、優しさの中に鋭い棘を持っていました。僕には、強烈な恐怖があります。
それは、「ただ仕事をして、家に帰って寝るだけの生活」に戻ることです。
かつての僕はそうでした。22:30にはベッドに入り、明日の仕事のために体を休める。平穏だけど、刺激のない日々。もちろん、それが悪いわけではありません。でも、今の僕は知ってしまいました。
人と人がつながる喜びを。「青木堂」という場所で誰かの背中を押せる幸せを。 学びが誰かの役に立つ興奮を。
もし今、ここで負荷をかけることをやめてしまったら。 僕はまた、あの「縮こまった日常」に戻ってしまうかもしれない。せっかく広がり始めた「3rd・コミュニティ」の輪が、また小さくなって消えてしまうかもしれない。
それが何よりも怖いから、僕は今日も眠い目をこすりながら、本を開き、店に立ちます。
経営とは、生き様だ
MBAは、単に「3C分析」や「ファイナンス理論」といった武器を手に入れる場所ではありません。その武器を使いこなすための「足腰」を鍛える道場です。
活動量を増やし、できることを増やし、自力をつける。そうやって広げたキャパシティの分だけ、僕はより多くの人を応援できるし、より多くの感謝を受け取れるようになるはずです。
今の僕は、決してスマートではありません。目の下にはクマがあるかもしれないし、電車で乗り過ごして走っているかもしれない。
でも、「キャパを広げている最中の自分」は、嫌いじゃありません。
あと1年。縮こまることなく、限界まで手を伸ばして、器を広げ続けてみようと思います。その先に、どんな景色が見えるのかを楽しみにしながら。
✅関連記事
👉【MBAの気づき】ファイナンスも戦略も、結局は「応援」と「感謝」でできている。
👉 2025年4月入学の現役生が語る。「MBA生活のスタートダッシュ」で失敗しないために、入学前に知っておきたかったこと
✅記事を書いた人 大塚 修平
グロービス経営大学院 本科生(2025年4月入学)。神田の老舗喫茶店「珈琲青木堂」4代目継承予定。「応援と感謝」を軸に、スポーツ、コーヒー、ワインで人と人をつなぐ活動をしています。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければチップでの応援お願いいたします!