うにっき帳 vol.13 |自分史編|アッチッチ、帰ろ!――茶碗蒸し一杯で家族崩壊!(3)
はじめに
こんにちは。吉村うにうにです。「うにっき帳」のvol.13を掲載します。
「うにっき帳」は日記と銘打っていますが、①日記編 ②語彙増量編 ③自分史編の三部のいずれかを取り上げます。
今回は、自分史編で。アッチッチ、帰ろ!――茶碗蒸し一杯で家族崩壊!の続きです。これまでのお話はこちら
では、始めます
ちなみに、本文は常体で書いております。また、日付は自分史編では、エピソードが生じたと思われる日です。
二〇〇〇年八月十五日頃 アッチッチ、帰ろ!――茶碗蒸し一杯で家族崩壊!(3)
私の左隣には、後に『黒豚』と母から渾名をつけられた姉の夫と、姉には二歳くらいの娘がいた。よちよち歩きはできていたと思う。私から見たら姪にあたる彼女を、父親は膝に乗せ、茶碗蒸しをスプーンで掬って食べさせようとしていた。母が「熱いから気をつけて」と注意したはずだが、黒豚は気にかけず、スプーンの先を娘の口に入れた。
口に含んだ瞬間、彼女は咳込みながら、茶碗蒸しを吐き出した。それはその父親の顔に直撃した。よく見えていたから、やはり私の真横が黒豚の席だったのかもしれない。
「アッチッチ、帰ろ!」
突然、黒豚は立ち上がった。姉も躊躇い気味に立ち上がった。
ちなみに、黒豚というのは表記上そう書くが、母は中国語読みで「ヘイチュウ」と呼んでいた。母は中国の青島生まれで、戦後、日本に引き揚げてきたので、中国に愛着があるようだ。まあ、体が大柄で日焼けしており、行儀や礼儀に少し問題点はあるとは私も思っていたが、母は、この事件を機に軽蔑して「黒豚」と呼ぶようになった。私は、姉の夫とはほとんど関りを持っていなかったので、あまり思うところはないが。
アッチッチは理解できたが、「帰ろ」の言葉に、何が起きたのかわからなかった。まあ、この日の暑さによってストレスが溜まっていて、それが爆発したというのは推測できた。しかし、アッチッチはともかく、そこから「帰ろ」とはどのように思考が飛躍したのだろうか? 今思っても、首を傾げてしまう。まだ、阿呆だのボケだのならわかるが。
私は、母の気の短さというか、場を乱す無礼な振る舞いに対して厳しく断罪する性質を知っていた。その性質受け継いだ姉も、よく知っているはずだ。黒豚は怒っているし、母も怒っていると思う。姉はどう動くのか?
沈黙が数秒流れた。誰も何も発言しなかった。母の方をちらと見たが、伯父の手前、怒りを堪えている顔だった。やがて、黒豚は立ち上がり、帰り支度を始めた。本当に帰る気か? 自分の子どもが吐き出した茶碗蒸しが熱くて帰るのか? 人生経験の浅い私は、キレてそのまま帰る大人を、まだ見た事がなかった。姉は部屋を出た夫を宥めて止めるだろうと思ったが、そのまま夫に付き従い、仏間から出て行ってしまった。 (つづく)
さいごに
いかがだったでしょうか。次回、アッチッチ事件は最終回です。いろいろなキャラクターが出て読者の皆さんにはわかりづらいかもしれませんが、今後も重要キャラは何度も登場しますので、ご安心を。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
