【宇宙一わかりやすい僕らの憲法のお話( ・ω・)】12 ほんとに守られてますか?学問の自由~学者だけの話じゃない!市民の自由と未来を守る防波堤~
こんにちは。
アレテーを求めて~
今日もトコトコ( ・ω・)
弁護士の岡本卓大です。
宇宙一わかりやすい僕らの憲法のお話( ・ω・)
の第12話です。
1 憲法って、なんだろう?立憲主義のお話
2 民主主義って、多数決のことじゃないの?
3 三権分立 独裁者を生まないためのシステム
4 憲法前文って、なぁに?
5 象徴天皇制とジェンダーのお話
6 「個人の尊厳」と「公共の福祉」って、なんのこと?
7 「人権」とはなにか?
8 税金と民主主義
9 平和主義、その本当の意義
10 表現の自由って、どうして大事?
11 信教の自由って、どういうもの?
12 ほんとに守られてますか?学問の自由
13 昔はあたりまえじゃなかった婚姻の自由
14 生存権・・・教えて、僕らの生きる権利
15 一人の個人として育つために~学習権
16 職業選択の自由とは?
17 働く人の権利
18 財産権という人権
19 「平等」って、なに?
20 適正手続~刑事裁判と人権
21 憲法の条文に書いてない人権は認められないの?
22 国会とは?
23 内閣とは?
24 裁判所とは?
25 地方自治って、なんだろう?
26 憲法改正の手続のこと
27 最後に繰り返そう!「憲法」が大切な理由(最終回)
「学問の自由」と聞くと、どこか大学の研究者や専門家だけに関係のある難しい話に思えるかもしれません。
しかし、憲法第23条でわざわざ「表現の自由(21条)」とは別に独立して保障されているのには、僕たちの社会全体を守るためのとても大切な意味があります。
今回は、憲法23条がなぜ存在するのか、そして現代の日本でどのような課題に直面しているのかを、わかりやすく紐解いていきます。
憲法23条「学問の自由」とは?
まずは憲法23条の条文を見てみましょう。
憲法第23条 学問の自由は、これを保障する。
たった一文ですが、ここには過去の痛烈な反省と、未来への強い教訓が込められています。
なぜ、表現の自由とは別に「学問の自由」が独立して掲げられているのでしょうか?大きく3つの理由があります。
1. 歴史的経緯(戦前への反省)
戦前の日本では、1933年の滝川事件や1935年の天皇機関説事件のように、政府に都合の悪い学説を排除・弾圧し、学問の自由を脅かした歴史があります。政治権力が学問に介入することの危険性を踏まえ、憲法で独立して保障されました。
2. 学問の特質(真理は多数決で決まらない)
一般の表現活動とは異なり、学問上の「真理」は世の中の多数決や流行で決まるものではありません。学術的な検証と合理的なプロセスによってのみ導き出されるため、政治や世論の圧力から保護される必要があります。
3. 学問の自律性(大学の自治)
真理の探究から生み出される知見は、巡り巡って社会全体の財産(公共の利益)となります。そのため、研究教育機関が「自律的」にルールや選考基準を決められる環境(大学の自治)を守ることが不可欠なのです。
具体例で考える:「大学の自治」の本当の意味
憲法学者・長谷部恭男教授の議論でも指摘されるように、大学という場には講義の規律や教員の選考基準など、外部にはない一定のルール(制約)が存在します。
例えば、スポーツにルールや審判が必要なのと同様に、学問の場でも「法律の授業で無関係な政治活動を強制してはいけない」「専門分野の業績に基づいて教員を選別する」といった一定の規律がなければ、質の高い教育や研究は成り立ちません。
ここで重要なのは、「そのルールを決めて運用するのが、外部の政治権力ではなく、教育研究機関(大学)自身である」という点です。
○ 大学自身がルールを決めること(自治・自律):
専門的な実績に基づいて教員を採用・評価したり、授業を円滑に進めるための規律を設けること。
× 外部の政治権力が干渉してくること(干渉・他律):
政府に都合の悪い研究をしている教授を辞めさせたり、特定の政治的思想を教育現場に強要すること。
このように「制約がないこと」ではなく、「自分たちで自分たちのルールを決めること」こそが、「大学の自治」の本質です。
現代における危機:日本学術会議問題とこれからの課題
しかし近年、この「学問の自律性」に対する国家権力の介入が危惧される出来事が相次いでいます。
代表的な例が、日本学術会議の会員候補者に対する任命拒否問題です。
日本学術会議は、戦前の反省から「時々の政治的便宜のための制肘を受けることがないよう、高度の自主性・独立性」を持つ独立組織として発足しました。
しかし、2020年に当時の菅義偉首相が学術会議の推薦した候補者6名の任命を拒否したことを皮切りに、政府側による選考・組織改革への介入議論が続いています。
現代の日本で懸念されること
批判的意見への萎縮効果
政府の政策に批判的な研究者が排除される実例ができると、研究者が自主的な発表や研究をためらう「萎縮効果」が生まれます。
「経済安全保障」や「有用性」偏重の圧力
近年は、軍備・防衛技術への研究協力や、即座に利益を生むイノベーションへの資金集中が進む一方、基礎研究や社会批判的な人文・社会科学への圧迫が懸念されています。
おわりに:学問の自由は「市民の自由」を守る防波堤
学問の自律性が失われ、政治権力が「何が正しい学問か」を決め始める社会は、一見効率的に見えても、多様な視点や批判的精神を失っていきます。
学問の自由を守ることは、学者たちの権益を守ることではありません。権力が都合よく事実を捻曲げるのを防ぎ、市民一人ひとりが自由な思考と思想を持てる社会を維持するための防波堤なのです。
「遠い世界の出来事」と思わずに、今どんな議論が行われているのか、僕たち一人ひとりが関心を持ち続けることが求められています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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