9月10日 世界自殺予防デー 【SS】愛した人(見せかけ)
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】- 世界自殺予防デー
国連の専門機関である世界保健機関(World Health Organization:WHO)が制定。国際デーの一つ。英語表記は「World Suicide Prevention Day:WSPD」。
この国際デーは、2003年(平成15年)に世界保健機関(WHO)と国際自殺防止協会(IASP)がスウェーデンのストックホルムで開催した世界自殺防止会議において制定された。日付はこの会議の初日であり、自殺に対する注意・関心を喚起し、自殺防止のための行動を促進することを目的としている。この日を中心として、世界中で自殺予防のためのイベントが開催される。
🌿過去投稿分の一覧はこちら👉 【今日は何の日SS】一覧目次
【SS】愛した人(見せかけ)
歩道橋から転落した芳雄は、運悪く工事用の土を満載した大型トラックの前に落ちてしまった。地面に落下する前に、トラックの前面にぶつかって前方に飛ばされてしまい、急ブレーキをかけたトラックの下に入り込みタイヤに巻き込まれてしまった。即死だった。ドンという鈍い音と、急ブレーキの音に驚いて振り返る歩行者が何人かいた。そのうちの一人が慌てて警察に電話を入れていた。
「歩道橋から人が落ちてトラックに撥ねられたようです。自殺みたいです」
「わかりました。救急車とともにすぐ行きます。詳しい場所を教えてください」
パトカーは、すぐにやってきた。トラックの運転手からも連絡が入っていたようだ。運転手も気が動転していた。走っていたのは、三車線の中央分離帯寄りのレーンだった。やって来た警察官は、手際よく二次被害が起きないように交通整理を実施。中央寄りの車線の手前に発煙筒を焚いて後続車に事故を知らせていた。
芳雄が救急車に乗せられ病院に運ばれた後、警察官はトラックの運転手に状況を確認していた。
「ぶつかった時の状況を教えてください」
「いや、状況も何も、まさか歩道橋から飛び降り自殺をするとは思ってませんから、どうすることもできず撥ねてしまいました。目の前に人が落ちて来たことがわかり、急ブレーキをかけましたが、当然間に合いません。なんとも、気分が悪い結果となってしまいました。あのう、これって、私にも責任があるのでしょうか」
「まだ、なんとも言えませんよ。スピードが出すぎていたのか、脇見をしていなかったのかなど確認する点はいくつかありますので。トラックに取り付けられているドライブレコーダーの映像は一旦こちらで預からせていただきますので、ご了承ください」
「わかりました。とりあえず、私はどうなるのでしょうか?」
「あなたの奥様と連絡もついて、身元も確認できましたし、ご自宅も近くのようなので、この後の事故現場確認終了後、一旦はお帰りになって問題ありません。ただ、明日以降、いつ連絡がきてもいいように待機はしておいてください」
「分かりました。免許証はどうなりますか」
「今すぐにどうなるという事ではありません。今後の事実調査次第です」
この後、歩道橋から落ちた芳雄の上着に入っていた財布から免許証が見つけられ、一之関芳雄であることがわかり、実家に連絡が入った。自殺か事故か確認するために翌日、芳雄のマンションの調査と実家を含めた聞き込みが始まった。実は、証刑事が確認をしている事故で亡くなった男性と友達であり、一緒に飲んでいた日の夜の事故が二人の男性の身の上に起こってしまったのだ。そんな偶然があるのかと証刑事は疑いを持った。そして、芳雄の方の確認を縁梨刑事にお願いしたのだった。
縁梨刑事はまず、芳雄が住んでいるマンションに行き、管理人に部屋の鍵を空けてもらった。部屋は綺麗に片付けられていた。洗面所には歯ブラシが二つ立てられている。部屋の中を確認していると愛子と二人で写っている写真が何枚も出てきた。机の上にあるパソコンの電源を入れてみると、パスワードも無くすんなりとファイルを確認することができた。同時に愛子とのツーショット写真も山ほど保存されていた。縁梨刑事は、これらのことを証刑事に連絡した。
「証刑事、なんだか妙ですね。自殺じゃないのかもしれませんよ。一之関芳雄という男性は大杉翔太の妻の愛子と付き合っていたようです。たくさんツーショット写真が出て来ましたよ。男性が二人とも車に撥ねられて亡くなるなんて偶然が過ぎるようですね」
「ありがとうございます、縁梨さん。なんだかプンプン匂いますね」
「えっ、電話なのに匂いますか。ちゃんとシャワー浴びて来たんですけどね」
「縁梨さん、そうじゃなくて。事件性を感じるということです。もう、全くふざけないでください。一之関芳雄さんを司法解剖に回してもらうように手配をお願いします。そして、実家のご両親に確認する時、お酒が強かったかどうかも合わせて確認しておいてください」
「了解」
証刑事は、二つの離れた場所で起きた交通事故は関係がありそうな気がしてならなかった。急いで、刑事課長に連絡をして、大杉翔太の司法解剖も依頼した。もしかしたら、共通点が見つかるかもしれないと淡い期待を抱いていた。
次の日、縁梨は一之関芳雄の実家を訪ねた。すでに警察から連絡は入っており、本人確認のために出かける直前だった。
「お忙しいところ申し訳ありません。刑事の縁梨といいます。移動しながらで結構ですのでお話を聞かせてください。芳雄さんはお酒は強かった方でしょうか、弱かった方でしょうか」
「えっ、お酒ですか。強い方だと思いますよ。大学でもラグビーをやっていたので体だけは丈夫でしたし、飲んでも酔わないのが自慢だと言ってましたから。友達に大杉くんというのがいて、二人で浴びるように飲んでましたよ。それがこんなことになってしまうなんて」
「そうだったんですか。因みに、恨みを買うようなことはなかったでしょうか」
「刑事さん、変なことを聞きますね。芳雄は飛び降りたんでしょ。信じられないけど自殺したって聞かされました。もしかして何かおかしいところがあるんでしょうか。もちろん、人に恨みを買うような生き方はしていなかったと信じてますよ、親としては」
「そうですか。いや、一応、自殺の時は確認することになっていますので、お聞きしたまでです。嫌な気持ちにさせてしまって申し訳ありません。また、何かありましたらご連絡差し上げます」
縁梨刑事は証刑事とともにドライブレコーダーの映像を確認するために、警察署に戻った。
明日に続く
🙇🏻♂️お知らせ
中編以上の小説執筆に注力するため、コメントへのリプライや皆様のnoteへの訪問活動を抑制しています。また、ショートショート以外の投稿も当面の間は抑制しています。申し訳ありません。
🌿【照葉の小説】今日は何の日SS集 ← 記念日からの創作SSマガジン
↓↓↓ 文書で一覧になっている目次はこちらです ↓↓↓
一つ前のお話し
連載最初のお話し
いつも読んでいただきありがとうございます。
「てりは」のnoteへ初めての方は、こちらのホテルへもお越しください。
🌿サイトマップ-異次元ホテル照葉
#ショートショート #創作 #小説 #フィクション #今日は何の日ショートショート #今日は何の日 #掌編小説 #超短編小説 #毎日ショートショート
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければチップによるご支援をお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。いただいたチップは創作活動費用として使わせていただきます。