大犬空港物語(24)「〇〇が決まらない」
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俺の名前は、大谷浩平。
来週、海外旅行に旅立つ。すでに心は海外だ。海の上を飛んでいる。
なんだか事務所内がにぎやかだな。
秋田犬大好きCAが打ち合わせに来ているせいか。
大犬空港の「〇〇任命式」の件?
まあてきとうにやってくれたらいい。トラブルなんか起きっこないだろ。
「〇〇任命式」の話は、〇〇の部分が決まらないまま、中身だけがとんとん拍子に進んでいった。
開催は、1か月後の8がつく日曜日。
それはもともと、秋田犬が出勤する日。
しかもその日は、月に一度の「大犬空港マルシェ」の日でもある。
つまり――なにもかも“すでにあるもの”を利用し、名前だけ「〇〇任命式」と銘打って、もう一度注目を集めようという作戦だ。
任命者として戸田市長のスケジュールも押さえた。
「困ったなぁ。どうしても任命式の名前が決まらないんですよね。アンバサダーってピンと来なくて」と竹野内さん。
「もう“おもてなし係”でいいんじゃないのぉ?」ヘラヘラっと軽い感じで答える俺。心は海外に――オーストラリアに行ってしまっている
「おもてなし…係?」ゆっくりと振り返る竹野内さん。幽霊がいるのを確かめるみたいに、時間をかけて、俺に視線を向ける。
「はい。“大使”でも“アンバサダー”でもない。係。どう?」
竹野内さんの口角が片側だけ上がる。
言いにくいことを言うときの、彼女の癖。
感情と裏腹のことをしようとするとき、こんな顔をする。
「わーかーりましたよ、気に入らないんですね。はいはい。
いいんです、おじさんの意見はお気になさらず進めてください。」
「わたし、まだなにも言ってないですよ?」
少し離れたところから、施設担当の唐沢部長が言った。
「空港長でいいんじゃないですか?うちの空港、いま空港長いないし。」
「空港長、いないんですか!?」
「はい、昔は航空局の所長が“空港長”だったんですけどね。
管制が遠隔になって、現地に航空局の職員がいなくなったもんで、
今は“空港長”もいないんです。
いないから、犬でもいいんじゃないですか、空港長犬。」
「それだ!空港長だ!」
「いいですね!空港長!」
よし、名前も決まったし、思い残すことはない。
もうすっかりさっぱりした気分で、俺は東京へ向かう。
まずは表参道のヘアサロンへ。旅立ちの前には髪をさっぱりさせないとね。
※この物語はフィクションです。
大犬(おおいぬ)空港は架空の空港ですが、東北の小さな空港をヒントにしています。そして私の“本業”は、そのモデルとなっている空港のファンクラブ会員を増やすこと。この小説を通して、少しでもこの地域や空港に親しみを感じていただけたら、うれしいです。
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