大犬空港物語(23)「あるものみな集めて」
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「『アンバサダー』って言って、ピンと来ますかね?」
「うーん、わたしはギリギリわかるけど、うちの母あたりだとピンと来ないかもねぇ」
「副市長、『アンバサダー』って言ってピンと来ます?」
「うーん、俺はわかるけど、地元の人はわかんないんじゃないかなぁ」
俺の名前は、大谷浩平。
弘前に向かうジャンボタクシーの中である。
その名も「大犬エアポートシャトル」。
大犬空港から弘前城を一直線に結ぶ二次アクセスだ。所要時間は70分。
出向者会議で元上司から受け取った「オオイヌから弘前へのアクセスを作れ」というミッションを、俺は、いや、俺たちは、こんなかたちで実現した。
弘前市で開催される 年4回の祭り期間だけ、ジャンボタクシーを走らせる。期間限定にすることで運行費用を抑えつつ、毎回テーマを変えたPRを重ね、露出を積み上げていく作戦だ。
しかもこの祭り期間というのが、航空便としては見事に閑散期に重なる。
空港としては旅客数を増やしたい時期に、弘前としても観光客を呼び込みたい時期。利害がぴたりと一致する“黄金のタイミング”だった。
季節は、春。
「弘前城さくらまつり」がもうすぐ始まる。
俺たちはいま、「大犬エアポートシャトル」運行開始の歓迎式典に向かっている。式典を行えばテレビや新聞の取材が入り、自然と宣伝にもなる。
乗り合わせたのは、俺と竹野内さん、戸田市長のピンチヒッターで副市長、市の観光部長、そして秋田犬大好きCA。
秋田犬大好きCAが熱く語る。
「もっと秋田犬のお出迎えをPRすべきです!
るかちゃんとれんすいくんを“アンバサダー”に任命しましょう!」
「日本語の名前がいいんじゃないかなぁ。“おもてなし大使”とか。」と竹野内さん。
「大使だと、出ていく感じがするよな。迎えるのは大使じゃないよな。」と副市長。
「じゃ、天使にしますか~。“おもてなし天使”。」
「やっぱりアンバサダーなんですかねぇ」「う~ん」
名前が決まらないまま、企画は進んでいった。
このとき俺は、彼ら彼女らの会話にまったく入っていけなかった。秋田犬たちを〇〇(※名前が決まらない)に任命するなんてことに、まったく興味がなかったんだ。
個人的な事情で大変恐縮なのだが、超久々の海外旅行を控えており。頭の中、英語でいっぱいだったんです。
「大谷取締役、話に入ってきてくださいよ」
いきなり振られ、英語脳のまま、口が勝手に動いた。
「I can set up the meeting, if you want.」
「……え? ミー…? ミートって言いました?肉の話ですか?」
CAの眉が寄る。
「段取りしましょうかって言ったんだ」
「すみません…聞き取れませんでした。
肉の段取りがどしたんですか?」
「いや、肉は関係ない。ミーティングだってば」
「よかった。急に“肉どうです?”って言われたのかと思って」
あれ?俺の英語、通じない?
毎日YouTube見ながら練習してるのに?
副市長も、観光部長も、竹野内さんも、気まずそうに外の景色を見ている。
俺たちを乗せたジャンボタクシーが「津軽藩ねぷた村」の門をくぐる。
「♪ヤーヤーヤードー♪」
太鼓と鐘に合わせて、園児たちの元気なお囃子が聞こえてきた。
作者のひとりごと
大犬空港物語season3 第1話、お読みいただきありがとうございます。
季節は巡り、主人公 大谷浩平は出向3年目の春を迎えました。この先、どんな困難が待ち受けるのか、どうぞお楽しみにお付き合いください。
大犬(おおいぬ)空港は架空の空港ですが、東北の小さな空港をヒントにしています。そして私の“本業”は、そのモデルとなった空港のファンクラブ会員を増やすこと。この小説を通して、少しでもこの地域や空港に親しみを感じていただけたら、うれしいです。
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