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胡乱な男 #4 I 罠 be with you

#3 ブタ野郎とお喋りクソ野郎

※BL/犯罪コメディ/軽い性的表現あり


俺は通称ジュード。本名はジュリアン。
現代に生きるトレジャーハンター。
泥棒だろって?
うん、まあ、そうとも言う。
ちょっとカッコつけたかっただけ。

そんな俺は今、スミスと名乗る得体の知れない男に付き纏われている。



案の定、翌朝、俺はベッドの上で屍と化していた。

「はい。朝ごはんだよ」
スミスがベッドまでトーストとコーヒーを運んできた。シャワーを浴びたようで、髪が少し濡れていた。

「君の冷蔵庫、空っぽだな。食材があれば僕の手料理をご馳走したのに」
「ヤバいもの入ってそうだから、遠慮する」
「仕事以外ではしないよ」
「聞かない方が良さそうだ」
「そうして。ディナーは何がいい?」
「来る前提で話をするな」

スミスがネクタイを締めながら言った。
「名残惜しいけど、僕は仕事に行かなくちゃ」
「おうおう、早く行け」

急にスミスがふふ、と笑った。

「何?」
俺がトーストを齧りながら聞くと、スミスはうっとりと頬を染めた。やめろ、気色悪い。

「『行ってらっしゃい』って、新婚さんみたいでいいなって思って。そうなるように僕、頑張るよ」

トーストをごくんと飲み込んだ。
俺、「行ってらっしゃい」なんて言ったっけ。
しかも、一体何をどう頑張るつもりなんだろう。

「じゃあね、行ってきます。ハニー」
「調子に乗るなよ!」

スミスは俺の頬に軽くキスすると、笑顔で部屋を出て行った。

一体、なんでこんなことになったんだっけ。



いよいよ我慢の限界で、誰にも言わずに引っ越した。

ボロいアパートの五階。
前の部屋より古いけど、少し広い。
ここなら、しばらく見つからないだろう。

そう思っていたら、引っ越して三日目の朝。
カーテンを開けたらスミスがベランダに立っていた。

「何でいるんだ」
「やあ、ジュリアン。僕から逃げられるとでも?」

しかし、今度の窓は、赤外線センサーを張り巡らせ、勝手に開けると電流が流れるように細工してあるのだ。
どうやら、窓には触れなかったらしい。
チッ、バレたか。

「良い部屋だね。セキュリティも万全だ。サンドイッチあるんだ。一緒に食べよう」
「嫌だね。サンドイッチ置いて帰れ!」

「謝るから」
「何を」
「ギルドを潰したこと」
「今さらかよ!いずれ俺が潰すつもりだったのに」
「すまなかった」
「勝手なことしやがって」
「……君に危険が及ぶのを避けたかった」

「どうせ、俺は弱いから、俺には無理だったって言いたいんだろ」

俺はそう言い、肩を震わせて俯いた。目元をこすって、鼻を少しすすった。
我ながら名演技だ。これでヤツが窓に手をかければ、一撃で感電ノックアウト。

「まさか!君が大事だからだ!」
スミスがハッと目を見開いて、窓に手を伸ばした。
よし、いいぞ。あと数センチ――。
が、寸前でピタリと手を止めた。

「……おっと。危うく君の愛の洗礼を受けるところだった」
「チッ、引っ掛からなかったか」

ヤツが感電するところが見れなかったのは残念だが、この際だ。言わせてもらおう。

「まだある。俺の車を勝手に使うな」
「ごめんよ」
「なんで爆破したんだよ!何でもかんでも爆破しやがって!」

引っ越す前、駐車場から車が消えた。
問い詰めたら、こいつが勝手に持ち出して爆破したと言う。

古いフィアットでボロかったけど、いろいろカスタムして気に入ってたんだ。ついでに、お気に入りのサングラスとCDも車と一緒に吹っ飛んだ。
手元には空のケースしかない。

「同じ車を用意するから」
「ターボ付けろよ。CDとサングラスも弁償しろ」
「もちろん」
「爆破までしなくてもいいだろ」
「一旦君が死んだことにしたかった」
「あんたこそいっぺん死んでみたら?」
「それは嫌だ。死んだら君に会えなくなる」

スミスは紙袋を持ち上げた。

「ほら、君の好きなローストビーフのサンドイッチ買ってきたんだ。ね、お腹、空いてるだろ?」
「俺は窓を開ける気はない」
「そうか。わかった。出直すよ」

スミスは紙袋をベランダに置くと、ふっと姿を消した。今日はやけに物分かりがいいな。

俺が窓を開けてサンドイッチを回収したら、玄関がガチャリと開いた。

振り向くと、スミスが玄関からスタスタ入ってきた。
「サンドイッチ、一緒に食べようね♪」

その後、サンドイッチだけじゃなく、俺も美味しくいただかれました、ってな。
バカヤロウ!!

シャワーを浴びる気力もなく、ぐしゃぐしゃになったシーツの上で横になっていたら、スミスが俺の頭を撫でてきた。

「逃げても無駄だよ」
「逃げるのは趣味なんでね」

声が掠れていた。腹が立つ。

「僕も追いかけるのは大好きだよ。やっぱり僕たち、気が合うね」

スミスは微笑み、俺の頭を撫でてつむじにキスしてきた。

腹立ち紛れに腹にパンチしたが、相変わらずニコニコしている。全く効いてなさそうで、余計に腹が立った。

「そもそも、何で俺なんだ」
ふと思ったことを口にした。

「あんた、顔はいいからモテそうなのに」
「嫉妬かい?嬉しいよ」
「ちっっげーーわ!不思議なの」

不意にスミスの顔にすっと影が差した。
「それは…」
「それは?」

固唾を飲んで見守ると、スミスは物悲しげにふるふると首を振った。

「駄目だ。君への愛は、簡単に言語化できない。語り出したら三日ほどかかりそうだ。それでもいい?」
「聞いた俺がバカだったよ」

はあ。全く厄介なやつに気に入られたもんだ。

つづく

#5 ここでキスして


※スミスのヤバすぎるカメラフォルダも公開中
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