【プロ8戦目】柴山鷹成戦の裏話
小林戦が終わり1ヶ月。
旅行に行ったり大好きな酒を飲んだり、もちろん練習中心ながらもそこそこ自由な生活をしていた。
すると9月上旬、パンクラスからオファーが来て11月3日の大会で無敗の柴山鷹成選手と対戦することが決まった。
※このあたりの詳しい経緯は下記記事を参照
ちなみにこの試合はめちゃくちゃしんどい試合だったが当大会のベストバウトに選出され、人生初のファイトボーナスを獲得した。
沢山試合をしてきたが、この試合は自分としても人生のベストバウトではないかと思う。
対戦相手について
柴山選手はレスリングを得意とするグラップラー。
当時のプロ戦績は1戦1勝1フィニッシュ。
レスリングでインターハイ出場の実績があり、前田戦以降組みの強い選手に苦手意識ができていた自分にとってかなり嫌な相手だった。
パンクラスの他にアマチュア時代はアウトサイダーなどにも出場しており、過去の試合映像を見ても苦戦している試合がなかった。
それまでの相手があまり強くないため参考にならないというのはあるが、それでも柴山選手がめちゃくちゃ強いことは映像で動きを見てすぐに分かった。
パンクラスでオファーが来るたびに思うが、提示される対戦相手がやたらと強い。かなり強い無名の選手をゴロゴロ抱えているので、どの試合も全然楽させて貰えない。
柴山選手もその部類で、既にパンクラスでメッキが剥がれまくっていた自分と違い、無敗の若者はキラキラに輝いて見えた。
パンクラス側としては、しっかりフィニッシュしろよという意図のオファーだったかもしれないが、自分としては
このレベルのレスラーにフィニッシュを求められるのかよ...
みたいな感じで、そもそも勝てるのかというところも含めて実は結構危機感を感じていた。
ついでに試合前に対戦相手のSNSを調べてみたところカザフスタンかどこかでファイトキャンプを組んでいた様子が見られ、俺岐阜で練習してて大丈夫か...と不安もありつつ、自分のやってきたことを信じて練習に励んだ。(というか自分にはそれしかなかった)
試合前の練習と膝の怪我
試合の作戦としてはテイクを取るのが難しいと思ったので、とりあえず打撃中心で攻めようと思い、シャドーではタックルを切る動きや膝を合わせる動きなどを多めにやった。
そんな感じで試合1ヶ月前に迫ったころ、居残り練習でグラップリングをしていた際、相手にカーフスライサーをかけようと動いたら自分の膝に変なテンションがかかりポンッと鳴ってしまった。
足関のセンスが無いのは薄々気付いていたけどまさか足関で自爆する程とは思っていなかったのでビックリしたのと、膝に痛みとかなりの違和感があり、力も入らなかったのでその日の練習は終了した。
その場での痛みはアドレナリンが出ていたこともあり大したことはなかったが、家に帰って冷静になるとかなり足が痛いことに気がついた。
これはヤバいと思い、靭帯損傷が怖かったので近くの整骨院に行って診てもらうと半月板に傷がついてるっぽいけど靭帯は問題ないと言われた。
ちょくちょく靭帯を怪我して手術などもしている身としては、とりあえずよく分からないけど靭帯じゃなければ大丈夫か、みたいな感じで治療に通いながらできる練習を続けることになる。
とはいえ、派手なスパーリングなどは出来ないので今回の試合も激しい追い込みなどはせず、できる練習をこなす事とした。
結局試合の直前まで整骨院に通っており、完治とはいかなかったが7〜8割ほどの動きはできる感じだったので、そのまま試合に挑むことになった。
※補足しておくと、試合中はアドレナリンが出ているので膝の怪我とか完全に忘れて良い動きが出た。
この辺りから怪我が多かったこともあり、強度の高いスパーリングを極端に嫌うようになる。というか、膝や肩の怪我が怖くて試合以外の場で100%の実力はもうこの先出せないと思う。
水抜きと前日計量
大会が金曜日ということで水曜日の朝から中津川発の高速バスに乗り東京へ。
自分の場合は交通費が別途で出ない(ファイトマネーに全込み)のと、中津川から乗れる手軽さもあり高速バスをよく利用する。
※ちなみに新幹線で行くのと1時間ちょっとしか変わらない。
夜からの水抜きに備えるため、水をとにかく沢山飲み、塩分の無いものでお腹を満たす。

バスの中でげっそりした男が頻繁にトイレに行き完全に不審者と化しつつ、新宿へ到着。
少し移動してホテルにチェックインし、軽く体を休めたら夜は水抜き。
ホテルは計量会場から近いところを適当に取って、不満はなかったけど間接照明に血痕が付いてたことだけがずっと記憶に残ってる。床とかなら分かるけど、何が起きたらこんなところに血痕がつくのか不思議で仕方ない。
しかも血痕がある方を反対側にして隠してあった。新調してほしい。

そんなプチホラーな展開もありつつサウナへ。
この時はあまりキツかった覚えが無いので、無難に終了したと思う。
水抜き後は毎回恒例のコーラ(250ml)と果汁100%ジュース(180ml)を飲んで就寝。
翌日も残った体重を調整し、無事に計量をクリアした。

計量帰りのエレベーターで柴山選手御一行と被ってしまい、試合前ということもあり気まずいなぁと思っていたら柴山選手のお父さんが声をかけて下さった。
一言くらいの短い挨拶のようなものだったが、明日よろしくお願いします!みたいな言葉を交わしてエレベーターを降りたと思う。
格闘技という競技の性質上、翌日に相手と殴り合うわけなので試合前に対戦相手サイドと話すことはほとんど無く不思議な感じだったが、こういう爽やかな感じもいいなと思い、明日は誰が見ても気持ちがいい試合をしようと思った。
※ちなみにパンクラスでは一度もないが、稀に相手サイドがピリピリした雰囲気で威嚇(?)してくる事とかもある。笑
そんな感じで計量を終え、お粥などを食べていつも通りのリカバリー。
次の日の試合に備えて12時に就寝した。
試合開始。投げられまくり蹴りで肋骨折られる
この日は試合が3試合目だったのですぐに自分の番が回ってきた。アップなどは特に面白いこともなかったので割愛。
そして普段通りに入場を済ませて試合開始。
予想通り、柴山選手が速攻でタックルに来たのをなんとか切りつつ壁際の展開へ。
壁レスになれば勝負できると思っていたが、壁があっても柴山選手のレスリング力には遠く及ばないことがすぐに理解できた。
背中をベッタリと漬けられることは無かったが、立ち上がっては寝かされ、立ち上がっては寝かされをひたすら繰り返した気がする。
1Rから柴山選手がめちゃくちゃ攻めてきたこともあり結構動きの多い試合だったが、組み技に無理に対抗しても体力を使うだけだと思ったので、あまり力を入れずにとりあえず凌いだ。
そんな感じで、完全制圧され1Rが終了。
1R終了時点で既に判定で勝つのは無理だと思ったが、うまく力が抜けていたので疲労はなかったのと、フィニッシュされる感じはしなかったのでここからどう挽回しようかと思っていた。
2Rを取られたらいよいよピンチなので、とにかく絶対に初手の組を切って打撃で勝負に出ようと決め、2R開始。
少しずつ慣れてきてタックルを切れるようになるも、永遠にタックルに入ってくるので自分のターンが来ない。
ちなみに、誰も気づかなかったと思うけど2R開始10秒で柴山選手の右ミドルを貰い、左の肋骨が折れた。笑

タックルが切れるようになり、少しずつスタンドの時間が出来てきてもタックルを警戒するあまり自分も中々前に出られないという悪い流れだった。
2Rはなんやかんや柔道投げでテイクダウンを取ったり、ラスト5秒くらいでラッシュをかけたりと少しずつ良いところが出つつも全体的には負けており、ジャッジ2人が柴山選手を支持。
2R終了時点で自分が勝つにはフィニッシュしかない状況となってしまった。
そして3R開始。
凌いでいるだけの自分とは違い柴山選手は攻めまくっているので疲れてきても良いはずだが、スタミナが無限にあるのか中々動きが落ちてきてくれない。
1R同様に3Rもひたすらタックルに来る。
残り2分、ここでタックル食らったら時間的にもう終わりだというところでも柴山選手の攻め手が緩まず壁際でテイクダウンを許してしまった。
起き上がってラスト打撃に賭けようと頑張るが、残り時間も少ないため、セコンドからは下から勝負しろと指示が飛んできた。
自分ももうそれしか無いと思ったので、自ら壁から離れ、ヒップスローの様な形でスイープするフリを見せつつ、戻り際に三角絞めの形に入った。
相手がガッチリと両手でクラッチしていたので三角絞めは時間がかかると思い、練習で度々食らっていたティーピーチョークに移行。
ゴキブリは追い詰められるとIQがめちゃくちゃ上がるというが、あの時の自分はそのくらい冷静だったと思う。
ガッチリ入り、柴山選手がタップ。
途中から自分でも負けると思っていたが、まさかの大大逆転勝利することができた。

サラッと勝った時とは違い、ほぼ負けていた試合を奇跡的に取れたことで、ここまでの人生で1番くらいに嬉しかった覚えがある。
試合後は相手サイドと軽く挨拶を交わし、次の日も仕事だったので急いで岐阜に帰った。
後日談
パンクラスが30周年記念ということもあり、この年からファイトボーナスというものが始まった。
このボーナスは各大会毎に、ベストバウト、ベストフィニッシュ(KO、一本)が選出されるというもの。
この大会は試合数が少ない上にフィニッシュもあまり多くなく、ティーピーチョークが結構珍しい決まり手だったこともあり、ベストフィニッシュが貰えるんじゃないかとドキドキしていた。
ボーナスの総額が確か50万円と公表されており、それをベストバウトやベストフィニッシュで選出された選手達で分け合うような形だったと思う。
中々発表されないなとソワソワしていたところ、翌日の夜くらいにパンクラスから連絡があり、ベストバウトを受賞したとの連絡があった。

規定により賞金額は公表できないが、ファイトマネーよりも全然多く、下積みの自分としてはかなり嬉しい金額だった。
そんな嬉しい出来事もあり、戦績も6勝2敗とかなり整ったものになったので、次は前田戦ぶりに本戦に呼ばれるんじゃないかと思った。
すぐに次の試合をしたい旨を伝え、パンクラスからの返事を待つこととなる。
ちなみに試合の翌日は自分でカーフキックを蹴った際に自爆した足首がめちゃくちゃ痛かったので病院に行った。
下手したら折れてるな...と思いつつ、1番痛かった右足首と、ちょっと痛みのあった肋骨のレントゲンを撮ってもらったところ、本命の右足首は何の異常もなく、ついでに撮ってもらった肋骨はしっかり折れていた。
肋骨は固定もできず特に治療もないので、ペラッペラのコルセットみたいなやつをもらって帰宅。
すぐに試合がしたいと言ったものの、しっかり怪我人だった。
そんな怪我もありつつ、翌年2024年の1月に入った頃くらいにパンクラスから次戦の話が来た。
コンスタントに試合がしたいならネオブラ参戦はどうですか?
みたいな感じだったと思う。
ネオブラはパンクラスの新人王トーナメント的なもので、各階級最大16人で1年かけてトーナメントを戦う。
優勝するとランキング入りが約束されており、確実にランキングに入りたければネオブラに出るのが固かった。
正直、デビュー戦の選手達が出てくるようなトーナメントなので相手のレベルはこれまでより落ちるが、試合映像すらない選手もおり結構嫌だなとおもった。しかし結局、少し悩んだ末にネオブラを優勝して確実にランキングに入ろうと思い、出場を決めた。
有難いことに第一シード的なポジションに入れて頂き、一回戦少ない状態で参戦。

結構普通に優勝できると思い参戦を決めたネオブラだが、トーナメントが決まる前の参戦選手が発表されたあたりから少しずつ雲行きが怪しくなり、
あれ、俺もしかしてはずれクジ引いた...?
と思うようになる。
プロ9戦目 岸田宙大戦へ続く。
