見出し画像

【プロ9戦目】岸田宙大戦の裏話

細かい経緯は前回の記事で書いてしまったが、柴山戦が終わり、パンクラスにはすぐに試合がしたいとの旨を伝えたところ、ネオブラ(パンクラスの新人王トーナメント)参戦を勧められた。
最初は絶対出たくないと思ったが、堅実なルートもありだと思い、悩みつつもネオブラ参戦を決める。
※前回の記事はこちらから読めます


安牌だと思ったネオブラだったが、参戦選手が発表された時に2人ほど当たりたくない選手がいた。
その2人というのが前戦ギリギリで逆転勝ちした柴山選手と、デビュー戦ながら柔術黒帯の岸田選手で、優勝するにはこの2人のどちらかを倒さなくてはいけないという嫌な状況だった。
1回戦を大阪大会で行うと言うことが分かり、岸田選手が大阪の選手ということでめちゃくちゃ嫌な予感がしていたが、そんな不安を取り払うように練習をした。
しかし試合約1ヶ月前となる2024年1月末、トーナメント表が発表され、シード枠を獲得できたものの1回戦の相手は最も恐れていた岸田選手。さらに隣の山には2番目に当たりたくなかった柴山選手が居るという、最悪の布陣でネオブラが開幕した。

勝っても負けても地獄


対戦相手について

1回戦の相手の岸田選手は2025年6月現在4勝1敗でパンクラスフライ級11位。年齢は自分の2つ下で、当時22才の若い選手。ちなみに次戦はパンクラス元王者の猿飛流選手と試合が決定済み。

当時はMMAプロデビュー戦と実績はなかったものの、若くして柔術黒帯を持ち、茶帯で全日本優勝など柔術の実績がとにかく凄かった。
※柔術の黒帯は他競技の黒帯よりレベルが高く、取ることがめちゃくちゃ難しい
アマチュアでもMMAを1試合しか経験しておらず、30秒ほどで一本勝ちしていた。
前回はレスリングがめちゃくちゃ強い柴山選手が相手だと思ったら、今回は柔術がめちゃくちゃ強い岸田選手と戦うことになり、この時期は本当に尖った選手ばかりとやってるなと思う。
そんな感じで前戦に引き続き、他競技で実績のある未知の強豪との試合となった。


試合前の練習

柴山選手にレスリングで追い込まれたこともあり、この時期はレスリングの練習に行きまくっていた。
仕事が終わると近くの高校にレスリングを習いに行き、その後は所属ジムでいつも通りの練習。水曜日以外は全て2部練でかなりハードで精神的にも結構追い詰められていた気がする。
岸田選手との試合が決まってからは、ぶっちゃけ
今回レスリング頑張っても相手柔術家だし相性悪すぎるよな
と気付いていたが、これまでやってきたことを急に変えるのも良くないと思い、レスリングの練習に集中した。

他には、対戦相手が岸田選手と発表される少し前にT-CUPというスパーリング大会に出場。
グラップリングで出場し、1日で2戦2勝。
柔術黒帯の選手にもしっかり完封勝利し、少しだけ自信がついていた。
柔術黒帯もこんなもんか、案外いけるかも
なんて楽観的に考えていた当時の自分を今思うとぶん殴りたい気持ちもあるが、そのくらい自信になっていたんだと思う。
この試合でまた膝が鳴り、ガチガチのスパーリングなどはあまりできなかったが、それでもやれることをやりつつ追い込みは終了した。

前日計量

岸田戦は水抜き4kg。
そんなにキツくもなく、割と無難に終了した。
前日計量の場ではフェイストゥフェイスで岸田選手と向かい合い、小顔だったのでパンチ効きそうだなと、薄っぺらすぎる感想を抱いて終了。
計量の帰りはベンチに座ってしっかりと時間をかけて水分補給。その後はお粥を食べ、以前からの教訓を生かした良いリカバリーのスタートができた。
その後は電車に乗ってホテルに帰ろうとしたところ、切符売り場でホームレス(?)のおじさんに声をかけられた。
自分はあまり人に優しくないので普段はガン無視するところだが、ようやく計量が終わりご飯が食べれた喜びでめちゃくちゃ機嫌が良く、話を聞くことにした。
帰りの電車代が無いということだったので、嘘つけ!と思いつつも200円を渡す。
すると次はおにぎり代も欲しいと言われたので、贅沢なやつだなと思いつつ追加で100円を渡したらニコニコでお礼を言ってどこかに消えていった。
多分、少し離れたところに次のカモを探しにいったんだと思う。笑
薄々気が付きつつも翌日の試合をいい結果で終わりたいということもあり、ここぞとばかりに徳を積み、
これ明日の試合マジでもらったわ
なんてことを思いながら自分もニコニコでホテルに帰った。(この試合に限らず、自分は試合が決まると床に落ちているゴミを拾ってみたり、エレベーターのボタンを自分から押したりして徳ポイントを貯め始めます)

その後は写真もなかったので何を食べたか覚えていないけど、確か炭水化物を中心に食べまくり就寝。


試合当日

試合当日会場入り。
会場が駅から遠くて朝からめちゃくちゃ彷徨ってしまった。
パンクラスでは当日も参考のため体重測定があり、確かこの日は65.3kgくらいあったと思う。(8.3kgリカバリー)
いつも通りリカバリーしたつもりだったが、体重がかなり戻ったことで階段を登る足が重く、体重計に乗る前からなんとなく体重が重いのが分かった。
アップでも少し反応が悪く、今日大丈夫かなと思いつつアップ終了。
相手が柔術黒帯ということで打撃全振りで行く予定だったが、相手のリングチェックを見ていたセコンドが
相手の打撃、結構キレイでしたよ
なんて言うからマジかよ、俺打撃で行って大丈夫かなとか直前で色々揺さぶられつつ試合へ。
この日はプレリミでの試合ということで、試合順も早く入場曲はおろかまともな入場すらなし。リングサイドで前の試合が終わるのを待ち、昔アマチュアDEEPに出た時と同じような感じで淡々と名前を呼ばれてリングイン。
相手も全く同じ条件なので何も文句は言えないし勝敗に絡んだわけではないけど、この感じで100%の実力を出せる奴は中々居ないと思う。※ネオブラは下積みだからそんな贅沢言うな!みたいな意見も分かります
そんな不安もありつつ試合開始。

普段だったら自分から組みに行くことが多いが、岸田選手に関しては寝技がめちゃくちゃ強いので捕まったら終わりだと思っていた。とりあえず当たればラッキーの精神でハイキックをフルスイングしてみたら空振ってこけてしまい早速組みの展開に。自分が思い描いていた中で1番最悪の形で試合がスタートした。
組んでみた感じ、とりあえずレスリングでは勝てそうだなと思い壁際でテイクダウン。
テイクをとったところまでは良かったが、少し組みをやって打撃に戻したいなと思っていたところネルソンからマウントを取られ、なんやかんや壁を使って立とうとしたところ飛びつきのような形で三角絞めを仕掛けられた。
壁を使って立つところはあまり悪くなかったんじゃないかと思うけど、普通に岸田選手が一歩上手だったんだと思う。
三角の対処は勿論知っていたけど、自分より強い柔術家に三角を極めまくっている岸田選手に普通の対処をしてもどうせ極められると思い、MMAならではの技術であるバスターを仕掛けることにした。

バスター:相手を持ち上げて頭から落とす力技

ぶっちゃけると三角に入られた瞬間にもうこれしかないと思ったし、試合前から三角の形になったらバスターにいこうと決めていた。
1度目のバスターは結構いい角度で頭から落としたと思ったけど意識が飛ぶ様子も無かったので、続けて2回目のバスター。

全力で落としたのにケロッとしてた

2回目はズラされてしまいあまり効いてなかったと思う。
欲張りまくって3回目のバスターに行こうとしたところ、岸田選手に足を掬われてしまい持ち上げることができない状態にされ、そのまま三角絞めを極められて1Rで一本負け。

一部ファンの間で2024年ネオブラ優勝候補と言われ、解説でも推されながら、1回戦開始2分半での完敗。
結局自分が強いのか弱いのかまるでよく分からない感じで、ネオブラは終了した。

負けた後はやっちまった...という気持ちもありつつ、
かなり練習がキツかったこともあり、もう練習しなくていいんだという気持ちが1番大きかった。
そもそもネオブラは優勝できる可能性が高いと踏んで出場したこともあり、これまで積み重ねてきた勝利が全部チャラになるくらい1回戦負けのショックは大きく、
もうプロとして格闘技をやるのは辞めよう
と決意した。

そんな感じで試合後は結構晴れやかな気持ちで、結構普通にヘラヘラしてた気がする。
※そもそも自分は試合で負けて悔しいとかそういう気持ちが他の人より薄く、練習通りのことを試合で出来れば負けても満足、できなくても相手が強いから仕方ないと思ってしまうタイプ。

会場を後にし、応援に来て頂いたスポンサーさん達に励まされながら焼肉へ連れて行ってもらった。
この日は試合に負けただけではなく、その後の焼肉でも悲劇が起こる。


試合後の焼肉で食中毒くらう

試合後は焼肉屋さんへ直行。
メニューを見る感じめちゃくちゃ美味しそうで、減量からもようやく解放され、久しぶりに良い肉が食えるなとワクワクしていた。
注文しても注文しても中々肉が届かないトラブルがありつつも、生タンや生レバーがテーブルに届き、とりあえず食べてみることに。
※もちろん店側からは焼いて下さいと言われた気がする。そんな気がするだけ。

毒味をした先輩が
これは新鮮だから絶対生でいける!
みたいな感じで断言したので、ちょっとビビりながら自分も生で食べてみることに。
ちなみに味はめちゃくちゃうまかった。
その後も色々と美味しいお肉をご馳走になり、お腹がいっぱいになった後は、次の日も仕事が休みということで家族と一緒にホテルへ帰って寝た。

翌朝起床。今日は何をしようかという話の中で京都へ寄って岐阜に帰ろうということになった。
とりあえず美味しいわらび餅を探して店に入り、わらび餅が出てきたけどなぜか食欲がない。
少し食べるだけで冷や汗が出て、そんなに大きくないわらび餅を食べるのにめちゃくちゃ時間がかかってしまった。

冷や汗と吐き気の中のわらび餅

昨日食い過ぎたなと思いつつ車に乗るが、冷や汗と半端じゃない吐き気が止まらない。
そんな感じで車に乗っているだけでもキツく、観光どころじゃなくなりそのまま岐阜に帰ることになった。
岐阜に着き、死にそうな体調の中スポンサーさんにお礼の連絡。その流れで一緒に焼肉を食べたスポンサーさんも同じ症状ということを聞き、確実に食中毒だなと思ったがどうしようもないので安静にして就寝。
ちなみに1番最初に毒味をした先輩は翌日何事もなくマジで元気だった。1人だけ腹強すぎる。


後日談。修斗世界王者と試合オファー

試合の話をしているのに焼肉がメインになりつつあるが、とりあえずネオブラも負けてしまったのでプロは辞めて趣味で格闘技をやろうと思い、あまりプロへの未練もなく週2〜3回くらいの頻度でボチボチ格闘技をやっていた。
試合が終わり1ヶ月くらい、割と楽しく格闘技をやっていたところ、ジムの代表から一通のラインが。
「元修斗世界王者の山上幹臣選手がフライ級で相手探してるけど、やる?」
とのことだった。
山上選手は元修斗世界フライ級(現ストロー級)チャンピオンで、家族を持ち一度は格闘技を引退するも9年5ヶ月ぶりの復帰戦として5月5日に開催されるGLADIATOR026の舞台で相手を探していたとのこと。

上述した通りこの時期はマジで全然練習しておらず、趣味格闘技おじさんになりかけていたが、元修斗世界王者と戦えるならもう一回頑張ろうと思い、やります!と即答。
とはいえネオブラで負けたばかりの自分と、元世界王者の山上選手が試合してくれるわけないよなと思い、他にも本命の候補がいるだろうとも思ったので正式に決まるまでは特にペースを上げず楽しく格闘技をやっていた。

そんな中、試合から1ヶ月半が経った3月31日に、岐阜市で地下格をやるから見に行こうということで先輩と一緒に見に行くことになった。
観戦にはジムの代表も来ており、イベントも終わり岐阜の街に飲みに行こうと思っていたところで代表から山上選手との試合が正式に決まりそうということを告げられた。

自分としては即答してから特に音沙汰がなかったことから完全に流れたと思っていた話だったので、嬉しかった覚えがあるが、これから飲む気満々だけどほんとに大丈夫なのかと、試合のことが心に引っかかったまま飲みにいった。
ちなみに、1時間後にはそんなことは頭の片隅にもなく、しっかりお酒を飲み岐阜の街を楽しんだ。
マッスルバーにも行ったけどここに載せられそうな写真がないので割愛。

岐阜市のやたらうまい串焼き屋さん

その日は夜遅くまで飲み、近くのネットカフェへ。
明日からまた試合に向けて練習を頑張ろうと決意してぐっすり寝た。

流れたと思っていた元修斗世界王者とのオファーが試合1カ月前に1ヶ月前に正式決定。急発進となったがこの試合が自分の格闘技人生を変えることになる。

プロ10戦目 山上幹臣戦へ続く



いいなと思ったら応援しよう!