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#03びお子の自習大作戦(2)『ネオニコチノイド 静かな化学物質汚染』の著者に聞いてみよう!この農薬、どうして禁止にならないの?

【これまでのあらすじ】岩波ブックレットの『ネオニコチノイド 静かな化学汚染物質』を読んだびお子は、著者のオンライン講演会に潜入! チャットを使って著者の平久美子さんに質問もしてみた。これでモヤモヤがスッキリするかと思いきや、どうもなかなか一筋縄ではいかないみたいだ。

第3回(1)はこちら

ネオニコを知らないと時代遅れになる!?

平久美子さんの講演会がオンラインであった。講演タイトルは「効きすぎるネオニコチノイド系農薬は人体にも影響する:日本の子どもたちを守るための脱ネオニコ戦略」だよ。このイベントを主催しているアクト・ビヨンド・トラストという組織は、ネオニコ問題を10年くらい前から取り上げている助成団体とのこと。

講演のさわりは、ここでも見られるよ。

「どういう人にこの本を読んでもらいたいか」って話から始まって、本の内容のダイジェストを解説してくれた。私みたいに農薬問題なんかに関心がなかったタイプも、想定読者に入るみたい。事実を知ったうえで、感情的にならずに冷静な議論をしようという呼びかけは、科学者ならではだね。ネオニコの問題を考えることは、社会や経済や自然のすべてを考えることだから、時代遅れにならないためにも、この本を読んで考えてみてね、とのこと。何だか話が大きくなってきたぞ。

ちょっと難しいのは化学の話

いちばん面倒なのは「この化学物質のどういう性質が問題なのか」という部分だったんだけど、他の種類の農薬が生物の細胞にダメージを与える仕組みと比較しながら、図解も交えて説明してもらって、本を読むだけよりもイメージが少しはとらえやすくなったかな。

虫に「よく効く」仕組み。昆虫などの節足動物の脳にあるニコチン性アセチルコリン受容体に結合して、脳の神経細胞の働きをおかしくする。
効き目の時間変化を説明する式。「細胞成分に不可逆的に結合」(=いちどくっついたら離れない)して、「細胞変化に不可逆的な機能変化を引き起こす」(=もとに戻らない損傷を与える)物質は、低濃度でもくっついたままなので時間とともに効果が増大する。赤い破線がそうで、昆虫に対するネオニコチノイドの効果はこんな感じ。有機リン系などの従来の農薬は、昆虫の「細胞変化に不可逆的な機能変化を引き起こす」けれどすぐに細胞から離れるため、青の破線のような効き方になる。

びお子、シンポジウムで質問するの巻

うーん。みんながいちばん気になるのは、このような農薬が使われているものを食べたらどうなるのか、ってことだよね。それは医学者である平さんから、「ここまでは確実に言えること」をストイックに限定しつつ、世界中で報告されているいろんな研究事例を紹介しているから、詳しくはブックレットを読んでみるといいよ。会場からの質問をチャットで受けていたけど、そういう心配をしている人も多かった感じ。ヒトへの毒性が確実視されているものも、ネオニコの種類によっては、すでに研究で明らかになったものがあるとか(チアクロプリド、チアメトキサム、クロチアニジン、イミダクロプリド、アセタミプリドの5種だそうです)。

私が気になったのは、この農薬の未来。2018年に改正された農薬取締法によって、農薬の再評価が始まったって、ブックレットの最後に書いてあった。だったら、環境や人間への危険性がわかってきた農薬は、使用禁止になったりしないのかな。でも、その再評価の仕組みにも平さんはちょっと懐疑的みたいで、「国がどのような施策を行うのかは、予断を許さない」としているんだよね(p.70)。だから、そのへんを聞いてみたよ。

これに対して平さんは、再評価制度は、そういう「白か黒か(安全だから使い続けてOKか、危険だから使用禁止か)」をハッキリさせる契機にはならないかも……という見立てを示してくれた。もし完全に使用禁止にしてしまうと、たとえば国産米が不作の年に、海外から米を輸入しようとしても、禁止農薬が使われている米は輸入できない。食料自給率だってカツカツの日本なんだし、そういう「万が一」の事態になることを、どうも農水省は恐れているんじゃないかと想像しているそうだ。学界ではネオニコの危険性を証明する論文が後からたくさん出てきたけど、最初に登録したときには必要な要件をクリアしていたんだから、そのままで進めたいということみたい。うーん。それじゃ、再評価って言わないんじゃないかなあ。

でも、だからといって、「農薬登録しているから使い放題」という現状はオカシイんじゃないかな、とのこと。国全体で一律の規制ができないとしても、地域の生産者の工夫によって、危ない農薬の使用は減らしていけるんじゃないかな、って。

じゃあ、やっぱりこれからどうする、ニッポン?

なるほどねー。

国がどうにかしてくれるのではないか、というのを待っている間に、この農薬が開発されてからもう長い年月が過ぎてしまった。ならば、できることから始めたほうがいい、というのが平さんの現状分析みたい。

確かに、あいコープみやぎの人たちがやっているのも、農民連食品分析センターの八田さんたちがやっているのも、そういう「できること」の一つなんだよなあ。このシンポジウムでは、自治体がオーガニック給食を採用することなんかも、その方法の一つとして強調していた。

とりあえず自分だけ、危ない農薬の入った野菜を食べなければいいや、という単純なモンダイでは済まないことは、これまでいろいろな人の話を聞いて思ったことだよね。私たちが主食にする米が、農家さんの健康や周囲の生態系にも害を与えずに生産されて、安全な食品としてみんなの食卓に届けばいいのに。それは難しいのかなあ。その過程には、何が必要なんだろう……。

もうちょっと考えてみるよ!

#4教えて! 馬込さん――お米が私のもとに届くまでって?へ続く

【チームびお子】
文:八木晴花 絵:まるなが
制作:アクト・ビヨンド・トラスト