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1からの水理学(3)エネルギーの3成分


図1 固体と水のイメージの違いの例

図1の左の図はすべり台です。下の子供は「早い、早くなった!」と言っています。一方、右の図では太さが一定のホースの中を魚が泳いでいます。しかし、下の魚は「下の方が速い」とは言っていません。子供たちとは、セリフが違いますよね。結論を先に言えば、下の子供が運動エネルギーを獲得した代わりに、下の魚は圧力水頭を獲得しています。ここで、圧力水頭は、子供たちには付随していない成分です。この(3)では、その成分の違いについて、整理してみました。

図2 エネルギーの転化

👉準備1:固体と液体(流体)の違い
図2中の左の2つ絵から判断してほしいのですが、位置エネルギーと運動エネルギーの2成分に基づく大気中の固体の動きと同様に、大気中の水の動きも、これらの2成分で説明できます。放物線運動((2))の内容がそれでした。
そして、図2中の右端の絵から察してほしいのですが、位置エネルギー、運動エネルギー、さらに水圧Pの3成分に基づいて、タンク中の水の力学的エネルギーを扱うことが可能になります。ただし、図2中の中央の絵に描いたように、固体の場合、タンク中では固体がブリッジを構成するでしょうから、このように3成分だけでは語れないと思います。

水圧P[Pa]による力学的エネルギーはP×Volume[J]ですが、これを位置エネルギーや運動エネルギーと同様にmgで割って、新たに水圧の比エネルギーHpを定義できます。ここで、密度ρ=質量m÷体積Volumeという関係式を用いました。そのようにして、前章で示した(1),(2)式に並べて、圧力水頭Hpの定義式を以下のように示せます。
Hz= z (1)  Hv=v²/(2g) (2)    Hp=P/(ρg) (3)
今、ρは水の密度ですので、この圧力水頭Hp[m]は、水(流体)に特有の水頭です。結果的に、水について力学的エネルギーの合計は次式のように示せることになりました。
Hz + Hv + Hp = Ht (4)
(4)式中の4つの項は左から、位置水頭、速度水頭、圧力水頭、全水頭(トータルヘッド)と呼ばれています。仮に、流れの途中で摩擦とかのエネルギー損失が発生していないと扱える場合(すなわち、ベルヌーイの定理が成り立っている場合)、全水頭Ht[m]は上流端から下流端まで水路内の各場所で一定になります(エネルギー線は水平になります)。
 
👉準備2:絶対圧とゲージ圧との違い
私たちは標準大気圧の中にいることが多いので、圧力Pは、ほぼ標準大気圧1013[hPa]に近いのですが、水路内の各場所に関する差を知りたいことが多いので、水理学ではしばしば、圧力Pについては、絶対圧から標準大気圧1013[hPa](一定値)を差し引いたゲージ圧を利用します。すなわち、水理学において、記号P[Pa]はゲージ圧です。
例えば、東京とロンドンで時差が9時間ある場合、東京の時計の文字盤を9時間分回転させてロンドンの時計として使う場合をイメージしてください。絶対圧を測定する圧力計の丸い文字盤を1013[hPa]分回転させれば、ゲージ圧の圧力計として使えます。

図3 時差のイメージ
選択問題です

図4のように水槽に水があり、点①は水面の高さ、点②と⑥は点①より下1[m]、点③と⑤は点①より上1[m]と仮定して、Qに答えてください。

Q:点②〜⑥の壁に小さい穴を開けた場合、水が出てくる穴にチェックを入れてください。(□② □③ □④ □⑤ □⑥)

図4 穴をあけてみた!

ヒント:比エネルギーの図(描き順)
🖌️図5のように、ベースライン(緑色)を水槽の底と設定して書き込めます。そして、①~⑥の水のあるところまで位置水頭Hzの矢印(緑色)を書き込めます。ただし、どの点でも速度(流速)はゼロ(Hvはゼロ)ですので赤い矢印を描くことはありません(長さゼロです)。
🖌️今、点①で水圧は大気圧に等しくHp=0ですので、Hz①は全水頭Ht①に等しくなります。ちなみに、点④も水面ですが、大気につながっていないので大気圧という保証はなく、エネルギー線に含めません。そして、エネルギーの損失はないことを想定できるので、点①を含む水平線がエネルギー線(赤色)になります。
🖌️最後に、位置水頭Hzの矢印の先からエネルギー線までを、圧力水頭Hpとして青い矢印でつなぐことができます。

図5 各点Hz, Hpの書き込み

図5によれば、点③~⑤において青い矢印は下向きになりますのでどれも負圧状態です。負圧の点では大気圧の方が大きいので外から空気が水中に入ってきます。一方、点②と⑥において青い矢印は上向きになりますので正圧状態です。正圧の点では逆に中から水が空気に向かって飛び出してきます。

👉ANS:
図5から、点②と⑥では正圧、点③~⑤では負圧なので、水が出てくるのは、(☑②  ☑⑥)ですね。

付記です

付記1:
💡ベルヌーイの定理は本来、1本の流線上でエネルギーの保存を説くものですが、これを静止した水に適用すると、不思議なことに静水圧の原理と一致します。 そのために、今回の説明では、静止状態を「速度が無限にゼロに近い、極めて穏やかな流れ」の極限状態として捉えることで、流体現象を一つの共通したルールで説明しました。

付記2:
💡圧力の単位PaがN/㎡に等しいことにも示唆されているように、理科でその意味は面積当たりの力でしたね。しかしよく見てみると、圧力の単位はJ/㎥とも書けますことから、圧力はエネルギー密度であることも示すことができます。このようなことからも、位置エネルギー、運動エネルギーと並んで、水圧(正確には水圧×体積)も力学的エネルギーのひとつとして、メンバーに加えてもらいたいわけです。

水があっても出てこない時がある・・・


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