中枢感作を伴う慢性腰痛〜軟部組織モビ&疼痛の教育〜
参考文献
Song J, Kim H, Jung J, Lee S. Soft-Tissue Mobilization and Pain Neuroscience Education for Chronic Nonspecific Low Back Pain with Central Sensitization: A Prospective Randomized Single-Blind Controlled Trial. Biomedicines. 2023 Apr 23;11(5):1249. doi:10.3390/biomedicines11051249.
中枢感作性慢性非特異的腰痛に対する軟部組織モビライゼーションと疼痛神経科学教育:前向きランダム化単盲検対照試験
とりあえず内容を知りたい方はここ(論文の要約)
この研究では、中枢性感作(central sensitization)を伴う慢性非特異的腰痛(CNSLBP)に対して、軟部組織モビライゼーション(STM)単独と、STMに疼痛神経科学教育(PNE)を組み合わせた介入の効果を比較したランダム化単盲検試験です。
対象は28名のCNSLBP患者で、STM単独群(SMG)とSTM+PNE群(BG)に無作為に割り付けられました。
STMは週2回×4週(計8回)、PNEは2回実施されました。
主要評価は疼痛強度です。、
さらに副次評価項目として
中枢感作インベントリ(CSI-K)
圧痛(PPT)
疼痛認知(PCSなど)
機能障害(ODI)
結果、STM+PNE群(BG)は、STM単独群(SMG)と比較して、
疼痛
圧痛
機能障害
疼痛認知
の全てで有意な改善を示しました。
効果は2週間・4週間後のフォローアップでも持続していました。
群間効果サイズでもBGのほうが大きな効果を示しました。
なお、中枢感作スコア(CSI-K)のみ、フォローアップ時の群間有意差はみられませんでした。
ポイントと感想
PNEとは
以前の記事でも出てきた気がしますが、いわゆる患者教育の視点ですね。
今回は、中枢感作を伴う慢性腰痛の症例に対して、教育(PNE)+徒手療法という組み合わせが有効でした。
PNE は 10章構成で、痛みの神経生理を理解させるために以下が扱われています(Table 1 より)。
旧来の痛みモデル(Traditional and Old Pain Models)
組織損傷 = 痛み、という従来の考え方の限界を説明。痛みに関する信念の変化(Changing Beliefs about Pain)
痛みは必ずしも組織の状態を反映しないなどの新たな理解を促す。侵害入力の仕組み:組織(Input Mechanism: Tissues)
痛みは末梢組織からの信号だけで決まらないことを学ぶ。侵害入力:環境(Environment)
ストレス・気温・状況など環境要因が痛みに影響することを説明。侵害入力:末梢神経(Peripheral Neurogenic)
神経の過敏化や末梢で起こる変化を説明。脊髄での処理(Spinal Cord, Dorsal Horn, Second-order Neurons)
脊髄後角での信号増幅(central sensitization)を解説。脳と痛みニューロマトリックス(Brain, Pain Neuromatrix)
脳の複数領域で痛みが構成される仕組みを説明。イエローフラッグと痛み体験の個別性(Yellow Flags & Personalization)
不安・恐怖回避・ストレスなどの心理社会的要因を扱う。出力:ストレス反応・内分泌・免疫(Stress, Endocrine, Immune)
痛みが体のシステム全体に影響することを説明。可塑性とシステムの統合(Plasticity & Merging of Systems)
神経可塑性による感作や改善可能性に言及。
とりあえず現状としては、これらを含めた資料の作成が必要かもしれませんね。
STMとの併用がカギか。
この研究の重要な点の一つとしては、PNE単独の効果は検証していない点です。
STMは痛みのある部位の筋膜や軟部組織に対する手技療法であり、局所の組織状態や血流、筋緊張に働きかけるアプローチです。そこにPNEを加えることで、「身体」と「認知」の両方向から痛みにアプローチできたことが、より大きな効果を生んだと考えられます。
複合的なアプローチによる相乗効果は重要な視点ですね。
ではでは。
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