マクラメの「カバンドリーワーク」。その名の由来がわかった
皆さまこんにちは。リリヤーンを使って昔のマクラメを再現する「マクラメ100年プロジェクト」首謀者の owarimao です。いろいろ寄り道もしますが、今はようやく4作目の制作をしております。
今回はこんな雰囲気の袋を作ろうと考えています。まるで桜の花びらが集まったようなかわいらしい模様です。

このあいだ下の記事に書いたことですが、100年前の日本ではリリヤーンを使ったマクラメが大流行する一方、それに不快感を示す人もいました。その言葉をもう一度引用しておきましょう。
(マクラメは)弱々しい中に美しさを出すものには不向です。日本で今流行している水色や桃色のリリアンで編んだマクラメは、マクラメの本質から見て不自然でもあり、誤った応用の仕方であります。
要するにパステルカラーのリリヤーンは「軟弱」っていうことですかね? でもそう言われると、なんだか反発を感じます。ピンクのリリヤーンを使ってやろうじゃないの。

でもね……
確かにピンクだけでは、子どもっぽく見えてしまうかもしれない。だから引き締める意味で、ダークグレーの市松模様を組み合わせてみることにします。
ぱっと見にはほどんど黒に見えますね。銀色みたいに見えてほしかったんですけど、ただの黒だ。

いちばん単純な模様なのに、魅力がある
もっと薄いグレーも試しましたけど↑、今度は薄すぎてはっきししません。やっぱり濃いほうにします。
2色の糸をタテヨコに使って配色模様を作っていく手法は「カバンドリーワーク」と呼ばれます。去年の4月にマクラメを始めたときも、まっさきにこれを作りました。やり始めると止まらなくなるような、独特の面白さがあります。クロスステッチの図案を転用することもできます。



ところで「『カバンドリー』って何のことだろう?」 という疑問は、だいぶ前の記事でも書きました。本来の綴りは「cavandoli」で、イタリアっぽい名前なので「イタリアのカヴァンドーリ村で作られたのかな?」などと、いい加減な憶測をしていました。
でも少し前に、この手法についてもう少し詳しいことがわかったので書いてみます。糸口を与えてくれたのは下の本でした。

原書は1979年に出ている
むかし公共図書館で見かけて、面白いと思っていた本です。さいきん安く売りに出ているのを見つけて、飛びついて買いました。
この中に次のような説明が載っています。
カバンドリー・ワークは、19世紀の末にイタリアで生まれたマクラメの一種で、バレンチナ・カバンドリー夫人が考案して、子供たちに伝えたものだといわれています。
Cavandoli は人名だったんですね。「バレンチナ」というファーストネームがわかったので、「Valetina Cavandoli」でネット検索してみました。するといくつか、もっと詳しい情報が見つかりました。
https://www.youtube.com/watch?v=57-7PS7xjXw
これらに出ている情報を総合しつつ抄訳すると、次のようになります。
Valentina Cavandoli(1872〜1969)はイタリアのエミリア=ロマーニャ州に生まれ、教師として働きました。寄宿学校の校長となった彼女は、1915年ごろから、子どもたちの「レクリエーション」として、マクラメの一種を教えるようになりました。このマクラメはのちに「カバンドリーワーク」と呼ばれるようになりました。彼女はそれを、マクラメの専門家である祖母の Virginia Lamberti から習ったのです。子どもたちの作品は学校のバザーで販売され、その売上は記録されて、作った子が学校を出るときに与えられました。
つまり「カバンドリーワーク」の技法そのものは、19世紀(あるいはもっと前)からあったけれど、この名称で呼ばれて有名になったのは20世紀になってから、ということですね。
彼女がこの技法を教えていた時代は、日本でいえば大正から昭和初期……ちょうどリリヤーンのマクラメが流行していた時代と重なります。
その頃の本の中では、この技法が「織リ結ビ」と呼ばれたり、あるいは特に何とも呼ばれていなかったりします。「カバンドリー」の名前は、まだ日本には伝わっていなかったことになります。


それにしても……
「カバンドリーワーク」を子どもに教えるのは、それ自体けっこう根気のいる仕事だったんじゃないかと思います。手間がかかるし、きれいに作るためにはある程度練習が必要です。
もし私が子どもに手芸を教えるとしたら、かぎ針編みかクロスステッチを選びますね。そのほうが簡単だもの。
でもイタリアは伝統的に手芸が盛んですから、人々の目も肥えていたでしょう。「平凡なものでは買ってもらえない」とヴァレンティナ先生は考えたのでしょうか? (また憶測)
とにかくイタリアにも、こんな素晴らしい人がいたんですね。
