AIが組織の“暗黙知”を理解する日へ。Ubieが挑む次世代のAI活用インフラ「Activity Report」構想
こんにちは!UbieでAI活用を推進している林田です。この記事は「Ubie 生成AI Advent Calendar 2025」の12/14投稿分となります。各メンバーが様々な事例を放出しておりますので、是非次のリンクからご覧ください!
1. はじめに:AI活用の次なるフロンティア、「組織インフラ」の重要性
生成AIの活用がビジネスの標準装備となりつつある現在、個人のタスクレベルでの生産性向上は、もはや競争優位の源泉とは言えなくなりつつあります。資料作成の高速化、コード生成の補助、リサーチの効率化といった「点の活用」は、すでに多くの企業で実践されているかと思います。
Ubieでの事例
しかし、本当の変革はここからだと私は考えています。次なるフロンティアは、AIをいかに組織全体の知的生産システムに統合し、再現性のある形で価値を創出し続けるかという「面の活用」です。そして、このステージで多くの企業が直面するのが「AI活用インフラ」の不在という壁です。AIが組織の一員として自律的に機能し、その能力を最大限に発揮するためには、AIが組織の文脈を理解し、学習し続けるための土台が不可欠となります。
本記事では、UbieがAIとの真の協働関係を築くために着想し、開発を推進している情報インフラ「Activity Report」の構想と、それが拓く未来についてお話しします。
2. Ubieの現在地:自律的に思考する「AIパートナー」とその成果
Ubieでは、生成AIのポテンシャルを組織能力に転換すべく、かねてより「AIパートナー(AIP)」と呼ぶ、自律型エージェント群の開発と社内実装を進めてきました。彼らは単なるチャットボットではなく、Slackを介して、それぞれが特定の役割や専門性、そしてコンテキストを持って活動する、まさに組織の「仲間」です。
具体的なユースケースは多岐にわたります。

業務プロセスの一部代行:社内の定型的な問い合わせやルーチン化された業務への対応をAIPが担うことで、人間はより創造的な業務に集中できます。
専門家としての知識提供:特定分野の専門知識を備えたAIPは、各分野における最新の事例やベストプラクティスの知識を備え、複雑な質問に対して迅速かつ正確な回答を提供します。
仮想的な壁打ち相手:プロダクトの概要や目標の情報に基づいて、プロダクトバックログアイテムの壁打ちや分析のサポートをしてくれます。


具体的な事例については以下の記事でも紹介しています。
これらの取り組みにより、個々の業務効率は飛躍的に向上しました。しかし同時に、継続的にAIを活用する上での構造的な課題が浮き彫りになってきたのです。
3. 向き合うべき課題:AI活用の「賞味期限」と「負の学習サイクル」
これらの取り組みは確かな成果を上げていますが、同時に、AI活用のスケールを目指す上で避けては通れない、より本質的な課題に直面することになりました。
それは、手塩にかけて育てたはずのAIエージェントが、数ヶ月後には使い物にならなくなる、という問題です。私たちはこの現象を「AIの陳腐化」と呼んでいます。この課題は、主に3つの要因から構成されています。

高すぎるメンテナンスコスト:組織の戦略、目標、メンバーの役割は日々変化します。しかし、AIに与えた初期知識は静的なままであり、このギャップを埋めるための手動メンテナンスは、極めて非効率かつ属人的です。手作りのAIは、まるで砂上の楼閣のように、常に崩壊のリスクを抱えています。
コンテキストウィンドウの限界:AIが一度に処理できる情報量には物理的な限界があります。「あれもこれも」と情報を詰め込む「情報の洪水」は、AIの思考を阻害し、本当に重要な文脈を見失わせます。結果として、当たり障りのない、誰にでも言えるような凡庸なアウトプットしか得られなくなります。
負の学習サイクル:そして最も深刻なのが、この問題が引き起こす「負の学習サイクル」です。GIGO(Garbage In, Garbage Out)の法則の通り、質の低いインプットは、質の低いアウトプットしか生みません。そして、その質の低いアウトプットが次のインプットとしてAIに学習されることで、組織全体の知的生産性がスパイラル的に低下していく。これは、組織の意思決定の質を蝕む、静かなる脅威です。
4. 私たちの挑戦:「Activity Report」という名の情報インフラ革命

この構造的課題を根本から解決するため、私たちが開発を推進しているのが「Activity Report」です。
これは、端的に言えば 「AIによる日報の自動生成システム」 です。Slack、Notion、Jira、会議の発話録など、組織内に散らばるあらゆる活動のログをAIが自動で集約し、個人・チーム単位で「誰が、いつ、何をしたか」をまとめたレポートを日々生成します。
しかし、その本質は単なる日報に留まりません。Activity Reportは、組織のあらゆる活動を構造化し、動的なインデックスを生成し続ける 「学習する情報インフラ」 そのものなのです。
活動の網羅的な集約:Slackでの議論、Notionのドキュメント、Jiraのタスク、GitHub上での開発ログ、Salesforceに記録された顧客とのやり取り、Google Calendarの予定、そして、会議の発話録まで。あらゆるツールに散らばった活動の断片を、個人・チーム単位で日次で自動的に集約します。
動的な構造化:そして、ただ集めるだけではありません。「誰が(ロール)」「何のために(OKR・KPI)」「何をしたか(Activity)」を自動で紐付け、構造化します。これにより、誰がどんなミッションを現在担い、過去に何を成し遂げたかが、常に最新の状態で記録され続けます。
この構想の根底には、 「AIが組織の一員として自律的に機能するためには、人間のあらゆる活動がデジタルデータとしてAIに可読でなければならない」 という思想があります。口頭での意思決定や個人の頭の中にしかないアイデアは、AIにとっては存在しない情報と同義です。
そのためUbieでは、かねてからAIリーダブルな情報基盤の構築に取り組んできました。基本的には社内のすべての会議を文字起こしし、AIが発話録を参照できる状態の構築や、重要情報のnotionデータベースの運用ルールの整備といった、 あらゆる活動をAIリーダブルにしていく取り組みを行ってきました。
Activity Reportは、こうして生成された活動ログをAIがインプットとして集約し、意味のある情報へと変換するためのエンジンなのです。

Activity Reportの仕組みの詳細については以下の記事で紹介しています!
5. 「Activity Report」が拓く未来:AIが“阿吽の呼吸”を身につける日

この情報インフラが整備されることで、AIは組織の“暗黙知”を理解し始め、人間との間に“阿吽の呼吸”が生まれます。
Activity Reportがあれば、例えば新しいプロジェクトを立ち上げる際のあり方も変わっていきます。アサインの検討にActivity Reportを参照し、ベストな経験を持つチームの組成が可能になったり、チームで動き出す際の相互理解、過去のプロジェクトにおけるボトルネックや成功パターンをAIが可視化することもできます。
良質なインプットが、良質なアウトプットを生み、そのアウトプットがさらに次のインプットの質を高めていく。この「正の学習サイクル」こそ、私たちが目指す未来です。
6. 現在地とこれから
この構想は、すでに机上の空論ではありません。 現在、Ubieの全従業員約250名分のActivity Reportが日次で自動生成される基盤が稼働を開始しました。そして、いくつかのチームで、このレポートを週次の活動振り返りに活用し、議論の質と速度を向上させるという取り組みを開始しています。

私たちは、この「Activity Report」を基盤に、AIと人間が真に協働する、新しい働き方を社会に提示していきます。これは単なる生産性向上の話ではなく、組織のあり方そのものを再定義する挑戦です。Ubieの次なる一歩に、ぜひご期待ください!
