放電と充電――灰色の町で息をすること
直線を交わらせて遠近法の図を描きます
アスファルト、工場のずっと続く塀、スモッグの空
中学2,3年の通学路はそんな灰色の世界でした
街路樹はまだ整備されていないのです
1961年、昭和36年、東京の下町に転校しました
中学2年のことです
台本担当なのに毒盃も出てきた
時間は数年進み高校の文化祭のことです
何をやるか話しているうちに
雑談の中でハムレットをやることに決まりました
図書室で本を借りて台本に収録する場面を決め
ガリ版を切って(鉄筆で書いて)
刷ります
修正出来ないので集中して切ります
生徒会室の備品を借りています
職員室にも備品があり
毎朝ミニテストが用意されていました
話を戻すと
クラスのかわいい女子にオフィーリアを頼み
衣装の手伝いをし
例えば袖の膨らみを和紙を丸めて出すなど
クラスで手分けをします
悪役の王女役もなぜか私が担当し
女子が調達してきたドーランで派手なメイクをされ
廊下の移動で驚かれたりしながら文化祭を終えました
文化祭の他の仕事
私の高校は、クラス委員は前期・後期に分かれています
クラス委員もなんとなく推薦されなりました
図書委員は本が好きなのでします
ペアの男子が図書室で寛ぎ仕事をしないタイプが
数人おり、忙しかった記憶があります
本を元の棚に戻さない生徒がいるので
本棚を整えたり
ビニールの表紙が無い時代なので
汚れを取ったり修繕したりも必要です
貸出返却もします
通学で精一杯
家から遠く、乗り換え、駅から高校まで
離れているけれどバスを使うほどではないので
高校生活で精一杯でした
中学時代の視界が灰色の世界も抜け出していました
暮らしの中の整う場所
パワースポット、ヒーリングスポットと呼ぶのでしょうか
学費を稼ぎ単位を取るのに忙しい大学時代も
社会人や結婚してからも
町に草花はあり青い空もありました
梅の木の蕾が膨らむ
歌の練習中の鶯が「けきょけきょ」と鳴く
背の高いひまわりと雄大な入道雲
犬を連れて耳にする鈴虫の音
関東の澄んだ冬の静かな空
遠くまで行かなくても、自然や美しさは身近にありました
都会に潜る息継ぎをする場所
私はミロのように鮮やかで明るく分かりやすい絵や
ルノワールの愛されて育っていると感じられる子どもや
人生を感じさせるお年寄りなど、小さな幸福と
人間の描き方に惹かれます
暗い絵、それは劇的な荒海と帆船ですとか
フランスの冬の海などは
綺麗ですけれど求めるものが違ったようです
明るい色彩を好んで
企画展ではなく常設展に行きました
父と行くこともあれば
自分一人でも行きました
月に一度くらいでしょう
長野の故郷は村の中に小学校があります
自宅を出ると200m先に木造の小学校が見えます
背の高い建物はなく
民家の垣根があり、民家は密集しておらず
水田が多く、民家はポツンポツンとあります
里山の共有林にもすぐ行けます
川を渡り電車で一駅行くと
つまり自宅から4km程度先に
中学がありました
今思えば、下町のアスファルトと塀の通学路を
スモッグで蓋をしてあることは
山の麓で暮らした自然とコントラストが強いです
環境が変わり都会の生活に慣れようとします
そして思春期ですから悩みもします
月にいちどは西洋美術館へ行って
心のバッテリーをチャージする必要がありました
企画展は多くの方がこられるので
西洋美術館が混雑します
そんな時は上野の森を動物園や不忍池など
美術館の外の自然を楽しみ
チャージが済むと家に戻りました
自分の中にたまった何かを放電し
西洋美術館の好きな絵の前に立っていられる静けさや
上野の森から無形の何かを受け取り
灰色の町へ戻る、そんな人生の季節がありました
上野からずいぶん離れていますが
西洋美術館とその周辺は心の故郷です
