なぜ個別株をやめたのか──仕組みを見直した日|#13(第1章)
金融株の評価額が3,000万円近くまで膨れ上がったとき、私は迷うことなく売却を決めました。
いわゆる“利確”です。
この判断に、大きな迷いはありませんでした。
今回の株価上昇は、明らかにアベノミクスという経済政策の追い風によるものが主な要因でした。自分の実力というよりも、タイミングが良かっただけだと、冷静に分かっていました。
正直に言えば――
自分の力で増やしたというより、時代の流れの中で大きく膨らんだ資産、という感覚のほうが強かったのです。
だからでしょうか。
不思議と「得をした」という実感はありませんでした。
むしろ、
「このままにしていたら、またしぼんでしまうのではないか」
というイメージのほうが強かったのです。
大きく膨らんだ風船が、いつか空気を失って元に戻る。
そんな感覚でした。
増えたお金を見ても、「少し使ってみよう」という気持ちはまったく生まれませんでした。
当時は安定した会社員の給料もあり、生活費に困ることはありませんでした。だからこそ、この利益は“使うためのお金”という感覚がなかったのだと思います。
さらに言えば――
どうやって増えたのか、自分でもうまく説明できないお金でした。
緻密に分析していたわけでもなく、明確な投資戦略があったわけでもありません。
ただ結果として、リーマンショック後の悲観局面で購入し、その後の相場回復局面を長く保有できていたのだと思います。
だからこそ、心の中で「これは自分の力だ」と整理することができなかったのです。
株式投資の世界では、「利確するまで利益ではない」と言われます。
どれだけ評価額が増えていても、売らなければそれはただの数字にすぎません。
私は、膨らんだ数字が再び縮むのを見るのが怖かった。
だから、一度きちんと現金化しました。
約3,000万円を現金に変え、通帳に並ぶ数字を見たときも、強い高揚感はありませんでした。
ただ、静かな安心感だけがありました。
そして、私は考えました。
このお金を、どうやって増やすのか。
市場環境に大きく左右される方法ではなく、自分でも継続できる、再現性のある方法はないのか。
そのとき思い出したのは、社会人になったばかりの頃につくった「貯金の仕組み」でした。
毎月5万円を必ず貯める。
ボーナスもルール化する。
感情に左右されず、淡々と積み上げる。
あの方法は、私にとって再現性のあるやり方でした。
ならば、投資も同じように仕組み化できないだろうか。
増えるかどうかを予想するのではなく、
積み立てる仕組みをつくる。
市場を読むのではなく、時間を味方につける。
そうして私が選んだのが、投資信託への積立投資でした。
次回(第14話)は、予測する投資をやめ、積立投資を選んだ理由について書きます。
市場を読むのではなく、仕組みで増やすという考え方にたどり着いた経緯をお伝えします。
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