時代の流れが変えた資産形成|#12(第1章)
株を買ってからというもの、私はその存在をほとんど意識しなくなっていました。
2011年にカード会社を退職し、大手IT企業へ転職。ちょうど結婚も重なり、生活は大きく変わりました。
仕事は以前ほど多忙ではなくなりましたが、関心は自然と「自分の生活」に向いていきました。新しい環境、新しい家庭、新しい暮らし。株のことを考える時間よりも、目の前の生活を整えることのほうが優先でした。
ちょうどその頃、私は湾岸エリアのタワーマンションを購入し、引っ越しも経験しました。通勤のしやすさが決め手でしたが、もう一つ理由があります。
東日本大震災の後で、湾岸エリアは一時的に人気が落ちていました。津波を想起させるイメージもあり、価格は今と比べればずいぶん抑えられていました。今となっては考えられない水準だったと思います。
そんな生活の変化の中で、株価のチェックはほとんどしませんでした。
理由は単純です。
ずっと低迷していたからです。
リーマンショック後の金融株は大きく動くこともなく、まるで「貯金」のような感覚になっていました。増えもしないが、大きく減りもしない。たまに配当金がもらえる。そんな存在です。
もし株価が日々大きく動いていたなら、きっと気になって毎日のようにチェックしていたと思います。
しかし実際には、動かない。
その結果、株を見る習慣すら身につかないまま、私は自然と株から距離を置くようになっていました。
本屋へ通うことも、その頃はありませんでした。
投資よりも、新生活のほうがよほど現実的なテーマだったのです。
そして2013年の冬。
久しぶりに証券口座を開いた私は、自分の目を疑いました。
保有していた金融株が、大きく上昇していたのです。
背景にはアベノミクスによる株高がありました。大胆な金融緩和と経済政策が市場を押し上げていました。
さらに後から知ったことですが、オリエントコーポレーションの財務状況の悪化に対して、みずほ銀行が実質的な支援を行っていたことも、株価上昇の一因だったようです。(※当時、私はそこまで理解していませんでしたし、今も細部までは把握していません。)
約1,000万円を投じていた株は、気づけば約3,000万円近くまで評価額が膨らんでいました。
含み益はおよそ2,000万円。
正直に言えば、自分の実力だけで増えたとは思っていません。
ただ、後から振り返れば、リーマンショック後の極端な悲観局面で金融株を購入し、その後の金融緩和やアベノミクスによる相場回復の流れに、結果的に乗ることができていたのだと思います。
また、頻繁に売買をせず、生活を優先して自然と持ち続けていたことも、大きかったのかもしれません。
当時はそこまで深く理解していたわけではありません。
ただ結果として、「安い時期に買い、長く持ち続ける」という形になっていました。
そして――
私は嬉しさと同時に、不安を感じていました。
「また、減ってしまうのではないか」
自分の力で増やしたわけではない。
再現できる自信もない。
だからこそ、この利益はどこか不安定なものに思えました。
この“運で増えた感覚”が、私に次の問いを投げかけます。
「これは本当に、自分の仕組みなのか」
そして私は、株式投資そのものを見直す決断へと向かっていきます。
次回(第13話)は、なぜ私は、増えている株を手放すことを考えたのか。
増えているのに、なぜやめるのか。
そこには“仕組み”を見直し、再設計するという選択がありました。
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