配当金を受け取った日──お金が働く感覚を知る|#11(第1章)
それは、2011年ごろのことでした。
リーマンショック後に金融株を購入してから、しばらく経ったある日、自宅のポストに届いた一通の封筒に目が留まりました。差出人は、私が保有している企業の名前でした。
中を開くと、「配当金領収証」と書かれた書類が入っていました。
「ああ、これが配当金か」
株を買う前から、配当金という仕組み自体は知っていました。年に二回ほど支払われることも理解していました。ただ、「決算後のどこかのタイミングで受け取れるもの」という、かなりざっくりとした認識しか持っていなかったのです。
実際にそれが自分のもとに届くと、不思議な感覚がありました。
金額は約26万円。
決して人生が劇的に変わる金額ではありません。それでも、自分が保有している株が、実際にお金を生み出しているという事実は、想像以上のインパクトがありました。
当時は、今のように自動的に銀行口座へ振り込まれる仕組みではなく、受け取りには郵便局へ足を運ぶ必要がありました。
その頃、私は六本木の東京ミッドタウンに本社を構える大手IT企業で働いていました。ミッドタウン内に郵便局があり、昼休みを利用して受け取りに向かいました。
二つ折りの小さな財布だけをポケットに入れ、軽い気持ちで窓口へ。
そして現金を受け取った瞬間――
財布にお札を入れようとすると、厚みが出てうまく閉じられなかったのです。
「まさか、こんなことで困るとは……」
六本木の高層ビルの中で、26万円の札束を前に少し戸惑っている自分が、どこか現実味のない存在のように感じられました。
給料ではありません。
残業の対価でもありません。
ただ、株を持っていただけ。
それなのに、お金が増えている。
そのとき私は、初めて「お金が働く」という感覚を体感しました。
生活が急に変わるわけではありませんでした。配当金はやがて生活費の一部に組み込まれ、「しばらくATMに行かなくて済んだな」という程度の出来事で終わりました。
それでも、心の奥に残った感覚は確かでした。
「この株は、大事に持っておこう」
初めて、自分の資産に対して“守りたい”という気持ちが芽生えた瞬間でした。
そして同時に、こうも思いました。
「もしこの仕組みを、もっと大きくできたらどうなるだろう」
自分が働くだけでなく、お金にも働いてもらう。
その仕組みを積み上げていけたら――。
今振り返れば、この26万円の配当金こそが、その後の不動産投資や債券投資へとつながる原点のひとつでした。
当時の私はまだ気づいていませんでしたが、確実に一歩、前へ進み始めていたのです。
次回(第12話)は、「ほったらかしでも増えた」時期について書きます。
自分では何もしていないのに資産が増えていった、少し不思議で、少し怖かったあの感覚についてお話しします。
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