リーマンショック後の金融株を買った日|#10(第1章)
私が株式投資を始めようとしたのは、ちょうどリーマンショックからしばらく経った頃でした。
世界的な金融危機の影響で、株価は大きく下落し、多くの企業の株が安値圏にとどまっていました。
ニュースでは連日のように企業倒産や株価暴落が報じられ、職場でも「この先どうなるのだろう」という不安の声が広がっていました。
そんな重たい空気の中で、私は逆にこう考え始めていました。
「そろそろ、買ってもいいのではないか」
私が実際に購入した銘柄は、
みずほ銀行とオリエントコーポレーションです。
どちらもリーマンショックの影響で株価が大きく下落していました。
私は金融の専門家ではありません。ただ、金融業界に身を置く者として、「このままずっと低迷が続くとは思えない」という、極めて素朴な感覚がありました。
突き詰めれば理由は単純です。
「安そうに見えるから、買ってみよう」
それだけでした。
証券口座を開設し、合計で約1,000万円を分散して投資しました。
購入ボタンを押す瞬間、何度も見返して緊張しながら購入したのを今でも覚えています。
とはいえ、株を買ったからといって、私は株価を頻繁にチェックしていたわけではありません。
当時はまだスマートフォンは普及しておらず、私はガラケーを使っていました。
株価を確認しようとすれば、パソコンを開く必要があります。今のようにワンタップで簡単にチェックできる環境ではありませんでした。
そして何より、仕事が忙しすぎました。
カード会社本社のシステム部門に所属し、連日の残業。
システム障害が起きれば深夜や土日も対応。
株価を気にしている余裕など、正直ありませんでした。
結果的に、私は株を“放置”することになります。
今振り返れば、それが本当に良かったのだと思います。
もし今のように、スマホで簡単に株価をチェックできる環境だったらどうでしょうか。
少し下がれば不安になり、
少し上がれば欲が出て、
ボラティリティに一喜一憂していたはずです。
そしてきっと、余計な感情が生まれ、
余計な売買を繰り返していたでしょう。
でも当時は、チェックしたくてもできない。
忙しくてそれどころではない。
その「不便さ」と「忙しさ」が、結果的に私を守ってくれました。
時間だけが静かに流れ、私は感情に振り回されることなく、株を持ち続けることができたのです。
株を買うという行為は、私にとって「お金を働かせる」第一歩でした。
同時に、「自分はもう貯めるだけの人間ではない」という、小さな自信も芽生え始めていました。
株価がどうなるかは分かりません。
それでも、自分なりに考え、行動した。
その事実だけで、私は確実に“増やす側”へと足を踏み入れたのだと思います。
次回(第11話)は、初めて配当金を受け取った日のことを書きます。
郵便局で受け取った通知を見たとき、私は初めて「お金が働く」という感覚を実感することになります。
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