変身(メタモルフォーゼ) 第2話
暖炉でぬくぬくになって、
一切警戒することなく、僕を招き入れた女子高生の心底安心してそうな顔。
僕がこのままお前をレイプしないとでも思ったのか!
しないよ。できないよ。
『化け物』も振舞われた優しいきのこのスープの味には抗えない。
不安と寒さに当てられて余計に温かく感じる。
女子高生「ほっこりしててよかった!
美味しいでしょ?お母さんの作るスープ!
お兄さん、思い詰めた顔してたからあったまってもらいたかったんだ〜
あんな雪山にほおりだされたら、そうなっちゃうよね」
さっきまで他人だったのに、まるで兄ができたかのような距離感で声をかけてくる。
こんな陰キャクソメガネの僕に。
田舎では知らない男にその距離感で接しても、
執着されてトラブルになることがなかったの?
と心配になる距離感で。
僕「本当ありがとうございます!助かりました」
遥かに歳下の彼女に敬語を使う。
自分の氷山の一角の1%のまろやかな部分しか見せれない。
仮面を外せない外してはいけない。
こんなことを考えてしまう、そんな自分が自分が気持ち悪くてもどかしい。
こんなに優しさが目の前にあるのに、素直に甘えられない自分が嫌いで仕方なかった。
素直な人間としての温かな愛を受け止めたかった。
その後、僕は東京に行った彼女の兄が居たという部屋に通された。
お兄さんはよっぽど浮かれて、片付けもせずに東京の大学に行ったんだろうか、生活感のある空間がそのまま残されていた。
僕は夜通し泣いてしまった。
自宅よりもふかふかで寝心地が良かったベッドだけれど、夜が明けるまで一睡もできなかった。
けたたましい電話の音で目を覚ます。
部屋にかかった古びた時計の針が指すのは12時。
有休の連絡を送信できていなかったんだ。
もう会社になんて行きたくない。
仮面かぶって猫を被って、
後輩の目の前で上司に笑い物にされても、
笑顔を崩さず、
対人関係はあたり触らず、
心の中に膨れ上がってくる『化け物』は誰にも見せず、
そんな消化不良な毎日が突然嫌になった。
少女の温かさに触れて。
そんな温かさを、心の底から持てる少女を、
包む周りの暖かさに触れて。
いじめられてることを親に頑張って相談しても、
『男なんだからそんなの自分で解決すれば』
とあしらって笑う母親の顔と、
優しかった少女の母親の顔が、
綺麗に重なって、
脳内で罵倒と優しさが交互に繰り返されて頭が割れそうになる。
自分に優しくしてくれた少女を無性にレイプしたくなる。
恩を仇で返されて泣いているところを見て、
とっておきの射精をしたくなる。
そんな優しさを正しく受け取れない怪物の自分も嫌になった。
全て捨ててしまいたい。
頭の中を堂々巡りする、
解決しようのない思念は、
僕の体を突き動かして、
階段を降りて、
お礼も言わずにドアを開けて外に出てしまった。
こんな時間だからいても、母親だけか。
でも両親共働きだとか言ってたよな、
こんな不審者寝てるまま放置してるなんてどんだけ温かい田舎なんだよ、
陰湿な盗みとか村八分とか色々あってくれよ、
東京の風俗嬢の元で生まれた、
元々生まれることが望まれてなかった、
本来堕ろされる予定だった息子の僕が悲しくなるじゃないか。
せめて田舎で生まれるよりはマシだったと思わせてくれよ。
頭の中がいっぱいになって周りの雪の寒さも忘れて歩いていた。
鳥肌が立ってたけどそんなことは知らなかった。
どこに行くのかも知らないで、
「お兄さん!どこいくの!!」
部屋着姿のままの少女が追いかけてくる。
今日は学校が休みだったんだろうか?
休みで寝てたのに起こしてしまったのだろうか?
悪いことをしたな。それにしても、優しすぎる。
温かすぎる。
その優しさが憎い。
優しさの源泉が憎い。
恩を仇で返してやる、こんなクソみたいな僕も壊してやる。
そうだ名案が思いついた。
◯のう!!
目的地が決まった僕は走り出した!
迷いなんてもうない!
そうだ、
望まれてない命だし、
こんな欲が汚いし、
一番優しさを仇で返すことができるし、
きっと少女は死のうとする僕を見て顔を歪める、
それは最高に気持ちがいい。
ああ、名前も知らない女子高生よ、僕はあなたが大好きだ。
僕は初めて恋をした。
恋なんて呼ぶにはあまりにも一方的な下心だろう。
だから「待って!」と走りながら叫ぶ声には反応もしない。
踏切がカンカンと音を鳴らしていた。
なんでタイミングがいいんだろう。
こんな田舎なのにたまたま電車がいる時間帯に被ったんだ、◯ねるんだ!
解放されるんだ!
自由になれるんだ!!
バリンと音がした。
花瓶を踏んでいた。
踏切のそばに供えられていた花を踏みつけていることに気づいた。
やっぱここで◯にたくなるやつもいるじゃないか、
田舎だって捨てたものじゃないじゃないか、
ちゃんと東京と同じぐらいクソじゃないか。
僕は一人じゃないって自信持って◯ねるじゃないか。
そう言い聞かせて最後の覚悟を振り絞って、
そのまま踏切を乗り越えて走ってくる列車に向かって線路を走り出した。
緊急停止しようと急ブレーキをする音が聞こえてくる、
「やめて!!!」
と悲壮的な叫びが踏切から聞こえてくる、
大好きだその顔も、憎たらしい優しさも全てが大好きだ。
僕は性的興奮を覚えて、
そのまま絶頂すべくズボンのチャックをおろして陰部を曝け出して、
今まで見ていることすら気持ち悪がられると秘匿して趣味だとも口外できなかった、
プリ〇ュアのセリフを引用して叫んだ!
「変身〔メタモルフォーゼ〕!!!」
変身〔メタモルフォーゼ〕した僕は自由だ!!
どんな破壊的な衝動も出していい!
ち◯こだってだしていい!!
自分に優しくしてくれた女子高生の顔だって歪ませていた!!
やっと、やっと自由になれた。
その瞬間大きな警笛で鼓膜が破れて、
視界がだんだん暗くなって身体がぐちゃぐちゃになったのを認識して
そのまま意識が途切れた。
はねられてぶっ飛んだ時の視界の端に
大好きなあの娘が泣いているのを見て、
心底涙がでた気がした。
出たのはきったない肉片と血だけど。
そのまま優しい、愛おしい君のトラウマになってくれ!
僕は変態犯罪者だから、
大好きな君のトラウマになって傷跡を残して◯ねるのが心底心底嬉しいよ!
やっと僕は自分を外に出せた。
やっとこの世界から解放された。
生まれた時から当に望まれてなかった命をやっと消せた。
一番好きな人に覚えてもらえるタイミングで!
人生を絶頂の瞬間で終わらせれた。
