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(18)しっかり女と楽天男|フィリピンで見た“女の強さ”と“男ののん気さ”

🌏酒井先生のまっすぐ手記|旅で出会った、人と知恵とユーモア

1947年 新潟県長岡市(栃尾)生まれ。
青年海外協力隊員として2年半フィリピンに派遣され、理数科教師を務める。
長崎大学熱帯医学研究所での研修を経て、1997年に酒井歯科医院を開院。
長年にわたり歯科医師として地域医療に携わってきた。
そんな酒井さんが、旅先で出会った人々との交流や、異文化に触れて感じた驚きや学び――
すべてを“まっすぐ”に綴った、ちょっとユーモラスで深みのある旅の手記です。

📘Kindle書籍では掲載しきれなかった魅力的なエピソードを、note限定でお届けします。
たとえば…
・異文化とのギャップに笑った出来事
・現地の人との心あたたまる交流
・歴史や社会制度へのちょっとした気づき など
旅の中で酒井さんが見つけた「人のあたたかさ」と「小さな学び」を、どうぞお楽しみください。

※1995年。酒井先生のフィリピン手記より

フィリピンで暮らしていて、まず驚いた。
「なんだか、この国は女でもっているぞ」

家庭でも職場でも、学校でも役所でも、どこへ行っても女の人がしっかりしている。銀行の窓口に並んでみても、応対してくれるのは大抵女性。男はどこへ消えたのだろう?と思うくらいだった。


💪 大黒柱はお母さん?

「フィリピンは母系社会なのだろうか」
そんな疑問が、頭の中をぐるぐる回った。

家族を思う気持ちが強いのは、どうやら男よりも女らしい。兄弟の多い家庭では、姉が看護師になって海外で働き、弟や妹の学費を負担する――そんな話を耳にすると、「いやはや、大黒柱はお父さんじゃなくてお姉さんか」と思わずつぶやいてしまった。


🌏 姉が稼ぎ、弟はのんびり?

もちろん、全員が看護師になれるわけではない。一部の女性はダンサーやエンターテイナーになる。いわゆる「ジャパユキさん」の道だ。

※補足:「ジャパユキさん」とは1983年に流行語となった言葉で、日本へ出稼ぎに来ていたフィリピン人女性を指す。当時、夜の店などで働く姿が注目され、社会現象にもなった。

また、女中(メイド)として香港やシンガポール、中東に出稼ぎに出る人も多い。こうして見ると、女性には男性よりもはるかに“出口”が多いように思えた。

香港の路地で、籠いっぱいの果物を抱えながら汗をぬぐうフィリピン人女性を描いた線画


🚹 男の選択肢は意外と少ない

「それにしても、男は大変だな」
資格がなければ芸能ビザは下りないし、運がよければ中東で単純労働に就ける程度。もしそれすら叶わなければ、不法入国に頼るしかない。世界が不況にでもなれば、それすら不可能だ。結局、国内でたむろするしかないのだろう。

※芸能ビザ(興行ビザ)とは、日本などで外国人が歌手・ダンサー・俳優などとして公演や撮影に参加するときに必要な就労ビザのことだ。活動計画や契約先が明確で、収入の裏付けがないと発行されない。要するに“誰でも取れる切符”ではない。

まるで人生ゲームで「進めるマス」がほとんどないプレイヤーを見ているようで、気の毒に感じた。


😂 なのに妙に明るい男たち

ところが!そんな男たちが驚くほど明るいのだ。
「まあ、なんとかなるさ」
とでも言いたげに、道端で集まっては冗談を飛ばし、ケラケラ笑っている。

仕事も収入もなくても、一族の誰かが働いていればOK。心配なんてしない。日本の父系社会で育った私には理解しがたいが、母系社会ならではの余裕なのかもしれない。

「いや、ほんとに心配じゃないのか?」
横で笑う男たちを見ながら、私は思わず聞きたくなった。


🧺 香港で見たフィリピン女性

私は香港で、女中として働くフィリピン人女性や、露店で物売りを手伝う姿をたくさん見かけた。どれも骨の折れる仕事だ。

日本の「ジャパユキさん」もそうだが、体を犠牲にして稼がなければならない現実がある。彼女たちが毎月仕送りを続ける心境を思うと、「残業してローン返済をする日本のお父さん」とは、似ているようでまったく違うと感じた。そこには切実さの濃度が違う。

寮の部屋で送金用の封筒と家族写真を手にし、疲れながらも力強さを感じさせるフィリピン人女性を描いた線画


🔄 強い女と、ゆるい男

「いやあ、それにしてもフィリピンの女は強い!」
そう痛感する一方で、男はどうにもだらしなく見える。いや、むしろ女が強すぎるから、男が相対的にひよわに見えてしまうのかもしれない。

私はフィリピンの家庭に下宿したこともあるし、学校で働いたこともある。そこで見たのも、公私にわたって女性が力を発揮する姿だった。台所でも教室でも、女が仕切り、男は…まあ、横でのんびり笑っていた。

教室で真面目にノートを取る女性学生と、隣でへらへら笑って授業を聞いていない男性学生を描いた線画


結び

「フィリピンは女で持っている国だ」
この思いは、滞在を重ねるほどに確信となった。

しっかり者の女と、楽天的な男。時に頼もしく、時にユーモラス。
私はその対比から、人間の生き方の幅広さを教わった気がする。


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