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夕飯のたび「座って」を何回も言ってしまう夜、私なら先に椅子の下を見ます

夕飯の時間なのに、食卓より追いかけっこの気配が強い夜があります。
一口食べて立つ。
戻す。
また立つ。
「座って」が増える。
だんだん声が硬くなる。
気づけば、ご飯を食べさせたいのか、座らせたいのか、怒らないように耐えているのか、自分でもよくわからなくなります。
食事が終わるころには、茶碗より先にこちらの気力が空になります。
こういう場面は、すぐに「しつけ」の話にされやすいです。
落ち着きがない。
ちゃんと座る習慣をつけないといけない。
食事中に遊ぶのはだめだと教えないといけない。
もちろん、それが全然関係ないとは思いません。
でも、小児の場面で子どもを見ていると、食事中に立つ子を「座る気がない子」とだけ見るのは、少し話が早いなと感じることがあります。

私はこういう子を見るとき、顔つきや返事より先に、椅子の下を見ます。

足が宙ぶらりんになっていないか。
足先だけ、かろうじて何かに触れていないか。
お尻が前にずれていないか。
テーブルが高すぎて、腕を上げ続ける形になっていないか。
食事中に立つ子の中には、食べることより前に、座っていること自体がしんどい子がいます。
大人は、座って食べることをほとんど無意識にやっています。
でも子どもにとって食事は、
座る。
姿勢を保つ。
手を使う。
口に運ぶ。
噛む。
飲み込む。
周りの音や会話にも付き合う。
これが一気に来る時間です。
そのうえ、足がつかない。
体がぐらつく。
テーブルが合っていない。
そんなことが重なると、食べる前にもう少し疲れます。
「座っていられない」の中には、やる気の問題だけではなく、座っていにくさが混ざっていることがあります。
ここを見ずに、「ちゃんと座って」を何度も重ねると、親も子も、どちらも報われにくいです。
だから私は、夕飯のたびに「座って」が増えていく夜ほど、先に椅子の下を見ます。

私が先に足元を見る理由

食事中に立つ子は、みんな同じではありません。
最初から座れない子もいます。
三口くらいで立つ子もいます。
後半になると崩れる子もいます。
好きなもののときだけ座れる子もいます。
同じ「立つ」に見えても、中身が違います。
なので私は、「立った」という結果より、どこで崩れたかを見ます。
最初のひと口の前からもう落ち着かないのか。
食べ始めると少しは持つのか。
食べること自体は進むのに、姿勢だけ先に崩れていくのか。
途中から遊びが勝つのか、疲れが勝つのか。
ここを見分けるだけで、対応はかなり変わります。

たとえば、最初から座れない子に、食事中ずっと「座って」を足しても、土台が不安定なら効きにくいです。
逆に、最初は座れるけれど途中で立つ子は、前半で使い切っている何かがあるかもしれません。
だから最初の観察は、長くなくて大丈夫です。
一回の夕飯で、ひとつだけ見てください。
この子は、食べ始める前にもう崩れているのか。
それとも、途中までは持つのか。
そこだけでも、かなり違います。

私が椅子の下を見るのは、子どもの姿勢を細かく採点したいからではありません。
足がついているかどうかで、座っていられる難しさが変わることがあるからです。
足がついていると、体は思ったより落ち着きます。
逆に、足がぶらぶらしていると、それだけで体は揺れやすくなります。
お尻の位置も定まりにくくなります。
背中が丸まったり、ずるずる前に滑ったりもしやすいです。
大人でも、足のつかない高い椅子で食事を続けると落ち着きません。
何となく座り直したくなります。
子どもはそこに、食べる・こぼさない・噛む、まで重なります。
なので、まず見たいのは難しいことではなく、このくらいです。

足の裏が何かに乗っているか。
つま先だけでなく、足裏全体が預けられる感じがあるか。
座るとお尻が前にずれていかないか。
テーブルが高すぎて、肩が上がったままになっていないか。
完璧な姿勢を作る話ではありません。
ただ、座っているだけでしんどい条件を減らせるなら、それだけでも食事の難しさは少し下がります。

食卓の空気は、最初の5分でかなり決まります

ここで言いたいのは、「最初の5分だけ頑張ればいい」という話ではありません。
最初の5分で、座ることそのものをしんどい時間にしないことが大事だということです。
いきなり長く座らせようとすると、子どもによってはそこで消耗します。
食べる前から、注意される。直される。待たされる。
この流れになると、食事そのものが始まる前に空気が重くなります。
なので私は、最初の5分は「ちゃんと座らせる時間」より、入りやすくする時間として考えます。
食べやすいものから入る。
最初から全部食べさせようとしない。
座っていることを褒めすぎるより、まず食事が始まる流れを軽くする。
声かけを増やしすぎない。

ここで大事なのは、親が張り切りすぎないことです。
食事中に座らない子を前にすると、どうしても「今日はちゃんとやらせたい」と思います。
でも、最初から全部取りにいくと、食卓がすぐに取っ組み合いになります。
最初の目標は、最後まで完璧に座ることではなく、
食事の始まりを、毎回しんどい時間にしないことです。
ここが変わると、後半も少し変わりやすくなります。

途中で立ったとき、親はすごく迷います。

すぐ戻すべきか。
一度好きにさせたら癖になるのか。
厳しく言うべきか。
黙って連れ戻すべきか。
ここに唯一の正解はありません。
ただ、私があまりおすすめしないのは、一回立った瞬間に、食事全体を立て直そうとすることです。
子どもが立ったとき、親の頭の中では一気にいろいろ起こります。
また始まった。
せっかく座っていたのに。
このままだと全部食べない。
毎日これだ。
なんで座れないの。
でも、その全部を一度にぶつけると、食卓の空気が一気に濁ります。

立ったときは、まず小さく戻すほうがうまくいくことがあります。
もう一回だけ座る。
次のひと口だけ戻る。
ここまで食べたら終わりに近づく。
全部を戻すのではなく、次の一歩だけ戻す感じです。
食事中に立つことを一回も起こさないことより、
立っても、そこから大荒れせず戻れる経験を増やすことのほうが、実際には強いことがあります。

逆に、悪循環になりやすいのはこんな流れです。
座ることだけが目標になって、食べることが消える。
食事中ずっと注意の実況中継になる。
椅子や足元を見ないまま、性格の問題にする。
一度うまくいった方法を、毎回同じように当てにする。

子どもはその日の体調も余裕も違います。
昼寝の長さでも変わります。
空腹でも変わります。
食事の内容でも変わります。
昨日は座れたのに今日はだめ、は普通に起こります。
だから必要なのは、「この方法なら絶対いける」という必勝パターンより、この子が座りやすくなる条件は何かを少しずつ拾うことだと思います。
足がつくと少し違う。
最初のひと口が入りやすいと流れが変わる。
疲れている日は崩れやすい。
食べる前から空気が重いと立ちやすい。
こういう小さな発見のほうが、実際の夕飯を助けます。

最後に

私は、食事中に立つ子を見たとき、すぐに「しつけが足りない」とは思いません。
もちろん、家庭ごとのルールはありますし、座って食べることを伝えるのは大事です。
でもその前に、その子は座れる条件の上にいるのかを見たいです。
立つ子を甘やかす話ではありません。
叱るなという話でもありません。
ただ、叱る前に一回だけ、椅子の下を見てほしいのです。
足がついていないだけで、食卓は小さなアスレチックになることがあります。
座ることに力を使いすぎる子は、食べる前に少し疲れます。
そういう子に「ちゃんと座って」を重ねると、親の言葉まで重く聞こえやすくなります。
夕飯のたびに「座って」が何回も増えていく夜ほど、
子どもの性格を考える前に、椅子の下を見てください。
案外、叱る場所ではなく、整える場所が見つかることがあります。

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