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第2話 | いつかこれがペンでなくなる日が来るなんて





第2話 日常の紛失 | いつかこれがペンでなくなる日が来るなんて


 これからこの町に住むことになるのか。
 僕は初めて親元を離れた。いつでも良かったが、よく晴れているから、今日、転入の手続きを済ませてしまうことにした。

 ここが市役所か。思ったより立派な建物だった。ちょっと広すぎて、僕は迷ってしまった。

「あの、転入届はどこで?」

 とりあえず受け付けにいくと、「こちらになります。順番が来たらお呼びしますから、その間にこれにご記入ください」と言われた。

 言われた台に向かうと、一本の万年筆が無造作に置かれていた。見た感じ、だいぶ年季が入っている。ボールペンも置いてあったが、僕はその万年筆を手にとった。

 だいぶ重かったが、滑らかでとても書きやすい。僕は覚えたての新しい住所を書き込んでいった。

 たいした時間はかからなかった。ちょうど書き終わった頃に、僕の番号が呼ばれた。窓口に向かい、書類を提出して、そのまま家に帰った。

 明日は新歓コンパがある。僕の自由な4年がいよいよ始まるのだ。


 僕はテニスサークルに入った。自分でも驚くほど早く彼女ができた。特別にかわいいというほどではなかったけれど、しばらくして、なかば同棲のような生活になった。1つ上の女の子で、恋愛経験も豊富だった。

「もしかしてキミ、童貞くんかな?誰でも最初はビクビクするものよ。心配しないでいいからね。お姉さんが、いろいろいけないことを教えてあ・げ・る…。D.Tくん」

「D.T.くんって?」

「そのままのことよ。私はS.J.じゃないから。あはは、ガッカリした?」

 女の子には性欲なんてないのかな、と思っていた。正真正銘の童貞の僕には、お姉さんはかなりエロいと思えた。妙なイニシャルはすぐに「童貞」と「処女」のことだとわかったが、彼女がS.J.だろうがなかろうが、やれるならどうでも良かった。

「今度さぁ、ラブホ、一緒に行こうか?ここでもいいんだけどさ、声がとなりの部屋に聞こえてもイヤでしょ?」

 お姉さんがあっけらかんと言った。僕は今すぐここでやっても良かったが、初めてそういうことをするなら、そういう雰囲気のラブホがいいな、と思った。

「はい、じゃあ今度。楽しみにしています」


…つづく




こちらのマガジン(↓)に全話収録します。


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山根あきら | 哲学者 記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします