第3話 | いつかこれがペンでなくなる日が来るなんて
第3話 情念の書き置き | いつかこれがペンでなくなる日が来るなんて
「この部屋、前から泊まってみたかったのよねぇ」
お姉さんのテンションはいつになく高かった。ドアを開けると、カーテンも壁も、すべてがピンクだった。とあるネコのキャラクターが至るところに見えた。
「これは女の子好みの部屋だなぁ。アメニティもぜんぶ揃っているし、申し分ないわ」
僕はラブホ自体初めてだから、そういうモノなのかなぁ、としか思えなかった。ピンクのエロい雰囲気はいいが、僕は落ち着かなかった。
お姉さんは、僕をベッドに座らせたまま、風呂場へ向かった。
「うわ~、これゴージャスだわ。ねぇねぇ、D.T.くんもこっちへおいで!」
たしかに僕は「D.T.くん」だが、今日、それを捨てるために来たんだ、と思いながらお姉さんのいる風呂場へ向かった。
「見て見て!これ、超~ジャグジーなんだけど」
遠目でもすごいジャグジーだとわかったが、このままD.T.くんを返上してしまおうか?
お姉さんの近くに行こうとしたとき、僕はつまずいてしまった。その途端に、部屋がぜんぶピンク色に照らされた。
「何を急いでいるのよ。D.T.くん。どこのボタン押したの?」
僕はどうやら、ミラーボールのボタンに触れてしまったようだ。お姉さんの体が、よりいっそう妖艶になった。
僕がお姉さんの手を強引に引っ張り、キスをしたとき、お姉さんの手が僕の股間をギュッと握りしめた。
「もう準備はできているようね。カチンコチンのチンコになってるね。でも、そんなに急いじゃいけないわ。それじゃまるで、D.T.くんみたいじゃないの」
「だって、僕は『D.T.くん』だから」
「あっ、そうか。そうだったね。ごめん、ごめん。まぁ、そんなに焦らないで。で、お風呂は先に入ってもらえるかな?お風呂はなんかね、恥ずかしくて、男の子と一緒に入ったことはないのよね」
「僕が先に入るんですか?」
「そうよ。女の子は時間がかかるからね。D.T.くんが先に入る。そのあと、私がゆっくりと入る。その間に、AVでも見ながら、気分を高めておくといいかもね。私がお風呂を出たあとに、エッチする前に、一緒に見てもいいけどさ」
僕はお姉さんの指示に従うことにした。
小一時間過ぎて、ようやくお姉さんが出てきた。バスローブの下には、何も身につけていない。いよいよ始まるのだと思うと僕の胸は、いまだかつてないほど高まった。
お姉さんは、ゆっくりと、僕の股間に自分の尻を押し付けてきた。そして、僕のあそこが充分に膨らんだことを確認すると、僕と向かいあい、僕のパンツをおろし、僕のあそこを口に含み始めた。
お姉さんの舌がとても温かい。舌は這うように、僕の理性を溶かしてゆく。危うく、そのまま発射しそうになったが、僕は耐えた。
「いいのよ、我慢しなくても。何回出したっていいんだから。わたし、ゴックんするのも好きだから。」
そうは言うものの、しかるべきに時に出すものがないでは、『D.T.くん』を返上できない… …。
振り返るとあっという間の出来事だった。
「D.T.くん、すごいじゃん。初めてだよ。こんなの。5回戦まで出来た人、初めてだよ。わたしって可愛いからなぁ。でしょ?キミの息子さんも、固くて大きくて、とっても気持ち良かったよ。こんなにわたしの奥まで忍び込んできた人、初めてかもしれない」
事のあと、お姉さんは満足そうに言った。僕も無事、『D.T.くん』を返上出来たし、感無量だった。
これから少し寝ようかと思ったとき、ベッドの備え付けの抽斗の中に、ノートがあることに気がついた。そこには、この部屋に泊まったカップルたちの生々しい言葉がたくさん並んでいた。
「私たちも何か書いておこうか。記念にね」
そう思ったが、あいにく備え付けのボールペンのインクがなかった。その時、僕は、あの春の日、市役所から持ってかえってきたしまった万年筆のことを思い出した。
「これで、2人、何か書きましょうか?」
お姉さんに万年筆を見せた。
「あら、これ、古いけど、すごく高そうな万年筆だね。なんか色んな歴史がつまっていそうな。ちょっと貸して!」
お姉さんは万年筆を軽く握って、ラブホ・ノートに何か書き始めた。
「わたし、D.T.くんの卒業式に立ち合いました❤️。とても優秀でした。5回戦に突入できました❤️。とっても固くて、大きくて、と~~~っても気持ち良かったです」
書き終わると僕にニコッと微笑みかけた。
「この万年筆、ここに置いていきましょう。なんとなくなんだけどね、その方がその万年筆には、お似合いのような気がするの。もう、本当の持ち主は誰だかわからないんだから」
僕もそんな気がした。
翌朝、僕たちは、エアシューターでお金を送ったあと、万年筆を置いたまま、部屋をあとにした。
…つづく

こちらのマガジン(↓)に全話収録します。
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