クララの映画考察⑬ 「聖なる鹿殺し」【マーティンは神なのか】
荘厳なオーケストラの響きと外科手術の映像からスタート。どーんとクローズアップされた心臓に、まさに今、食べようとしていた手元のナポリタンが重なって「うっ」ってなった。
わたしはケチャップがニットに散ったら嫌なので母手製の水色の割烹着を着ており、奇しくも我が家の食卓でもオペが始まっていたことに今さら気が付いて「こんな偶然ある!?」ってナポリタンにフォーク刺しながら母と叫んだ。
ちなみに飯時に見る映画じゃなかった…
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拙者の記事をご紹介いただきありがとうございまする🥹
※インフルエンザになりかけながら書いた中途半端な感想文を拾っていただき感謝感激。マーティンという存在について、「初潮」について、神話に出てくる女神の処女性など、Paixiqueさんの考察をぜひお読みください👏
観た後一番の感想:
マーティン何者!?
どうやってこの「呪い」を発動させたの!?
そもそもこの映画、「アウリスのイピゲネイア」というギリシャ悲劇をベースに作られたとのこと。女神の怒りをかったアガメムノンが、「生贄に娘(イピゲネイア)を捧げよ」と言われ、迷った挙句、娘を生贄に差し出す話らしい。女神かぁ…。元ネタが神話みたいな話なら、マーティンがなんらかの非科学的な「力」を使えても不思議じゃないね。
でもわたしはこの映画には、単なる「神が与えた悲劇」ではなく、人が心理的に追い詰められていく様が描かれていると思った。夫婦関係が壊れ、正常な判断ができなくなっていく、崩れていく様子がリアルだ。
キムとボブの症状は原因不明がゆえに、映画の中でドクターたちに「心理的疾患」と結論づけられますが…わたしはドクターたちと同じ視点でずっとこの映画を見ていた。
マーティンは「神」ではない!
彼はなんらかの手法で子ども達に心理的ダメージを与え、マインドコントロール等をおこない、さらに大人達を巻き込み一家を破滅に導いたのだ!!
と思いたいんですよわたしは。
(ひねくれものだから)
それにその方がおもしろいじゃないですか。
また、そう思いたい理由は以下のような違和感からです。
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違和感①「妻のアナには麻痺が出なかった」
ボブ→キムと下半身麻痺するまで時間はかからなかったのに、アナにはなかなか症状が出ないところに違和感。
違和感②「マーティンの呪いで死んでない」
現実に起こったことだけを整理すると、血の涙の後の「死」はマーティンの呪いによってではなく、スティーブンが手を下している。※いずれ死んだだろうとは思うけど(後述)。これはマーティンの思う壺だった、とも言えるのでは?
違和感③「子ども達が知りすぎている上に冷静すぎる」
これが一番引っかかりました。なぜか自分たちの病状や症状の進行についてよく理解している様子、その上で冷静に構えている子どもたちに違和感がありました。原因不明の病ならもっと怖がってもいいはず。なんらかの情報をよくない形でマーティンから吹き込まれている可能性を感じる。
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ちなみにマーティンが用意した呪い(悲劇)というのが以下のようなもの
スティーブン以外の家族に次のことが起こる
① 手足の麻痺
②食事の拒否
③目から血が出る
④死に至る
家族は全員同じ経過を辿って死ぬ。ただ、スティーブンが家族のうち一人、犠牲にする者を選べば、それ以外の人間を助けることができる。
※スティーブンは死なない
ただ、呪いも現実的じゃないが、あれだけのこと(足の麻痺や目から血)を、予言通り他人の体に発動させられるマインドコントロール、そのスキル持ってるって考えるのも全然現実的じゃないけどね。笑
マーティンがこれを「どうやって」やったか、手法は分からないことは大前提として、思ったことを書いておきたいと思う。
マーティンにマインドコントロールや催眠術?のスキルがあったとしても「心理的なダメージ(もしくはマインドコントロール)で足の麻痺なんて起こるのだろうか」って疑問がまず起こるんですけど、個人的には「起こるんじゃない?」と思ったんですよ。というのも、似たような経験をしたことをふと思い出しまして。
※以下体験談
ある日のこと。朝起きると娘(当時小一)が「うまく歩けない」と言う。本人は股関節が痛い、足が曲がらないと言っていました。見てみると確かに痛いらしく歩き方もおかしい。周りも家族も大きな病気を心配し始めるし一時は大騒ぎ…ですが、わたしはひとり、「この足の不調は心理的なものではないか?」と疑っていた。なぜならその日は初めてのピアノの発表会の日だったから。おそらくとても緊張しているのだろうと思った。なんとか本番が終えた後、夕方には徐々に痛みも引き、翌朝には治っていました。
例えば学校に行きたくなくて、仮病でなく本当にお腹が痛くなることがある。心理的なもので引き起こされる体調不良というのは特に子どもにはあることだと思われます。
違和感①の「アナに麻痺が出なかった」理由として、彼女が大人で、医者でもあるから、マーティン少年が言うような「呪い」のような話を信じ込むのに時間がかかったのではないかと思うんですよね。その点、子どもは信じやすく、コントロールされやすい。だから立て続けに二人、足に麻痺が出たのではないか。
さらに我が子の病って親にとって本当に深い深いダメージを与えることになると思うんですよね。だから、この呪いはまず最初に子どもに発動しなければならなかった。操りやすいから子どもをターゲットにしやすかった上に、ここから先大人をコントロールしていく上で欠かせない最初の一撃になっているとも思うんですよ。
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それから、麻痺の後に起こる「血の涙」を見てわたしは「聖痕」みたいなもんじゃないかなと思ったんですよ。信仰の深い人に現れる、キリストの傷です。以下の記事には「血の涙」も聖痕に含まれるとあります。
解剖学的な実験では、手のひらに釘を打ったとは考えにくく、手首に打ったとする説が現れた。これにより、今まで手のひらに多かった聖痕が、手首に多く現れることが報告されている。脳の思い込みが人体に影響するという解釈も存在している
聖痕って、不思議ですね。信じる人に、信じる形で現れると?宗教のことでもあり、解釈はさまざまでしょうが、強い思い込みにより、ボブが血の涙を流すことがあってもおかしくないと思うんですよね。
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「血の涙を流すとそこからは早い。じきに死が訪れる」とマーティンは言ってましたが、その死というのは
「おまえの力ではなく栄養失調による「死」だろうが!」
と画面に向かってツッコんだだわたしですが。「聖痕、食事の拒否、栄養失調による死」だとすればこれは映画「エミリー・ローズ」にそっくりです!
エミリー・ローズは実際に起こった事件を元にした映画で、娘の体に起こる異変は「悪魔のせい」だと思った両親が正しい医学的治療をしなかったとして裁判にもなっています。元となった事件の少女本人も敬虔なクリスチャンで、悪魔のせいだと思っており、彼女も「食べることを拒否」していたとあります。
こう考えれば、この映画におけるマーティンの力=「神の力」では絶対ない!って思う。全ては精神的ダメージや思い込みで説明がつくものなのではないか。そして当初からマーティンが想定していた「死」というのは、栄養失調によって自然と起こるものと考えることはできるのではないか。
これがわたしのこの映画の見方です。
「マーティン」を、家族全員で完全に信じ込まされて崩壊する話
だとわたしは思うけど、でも結局、考えて考えても断言というのはできないものですね。映画だし。笑 これはわたしの妄想なので。笑
でもこれが「神話」ではなく、マーティンという生身の人間が仕掛けた復讐劇だとしたら、逆におもしろいなーと思うんです。
いろんな見方ができる、そんな映画はおもしろい!
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