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[人事制度 ver.37]「新人事制度時の等級・ランクの配置」についての解体新書

「新人事制度の等級/ランクへの反映はどのようにしたら良いですか?」
人事制度を新しく作る・刷新するにあたり、新しい等級定義に現社員を当てはめなければなりません。
その場合、どうしても年収との差分が発生します。
それに対してどのように対応すれば良いのか?について説明していきたいと思います。


0. 新人事制度への配置とは?

なるべく「配置」という言葉は使いたくなかったのですが、わかりやすいので使わせてください。

人事制度を新しく作る、もしくは刷新(作り替える)のいずれの場合においても、「等級定義」が新しくなるにあたり、現社員の現年収とギャップが生じます。
その場合、年収が上がる人もいれば下がる人もいます。
これは歪みを発生させる原因にもなるため、うまく対応したいところではあります。

今説明をした作業を「配置」と呼ぶことにします。
そして、なぜ年収に変動が起きるのか?についてステップを踏んで説明していきたいと思います。

0-1. 等級とは

本ブログの内容を理解するために「等級」について正確に理解しなくてはなりません。
等級=レベルのことです。

僕が等級について説明する際には、「ロールプレイングゲームのジョブ」の話をすることが多いです。
最も説明をしやすいのは、ファイナルファンタジーというロールプレイングゲームにおけるジョブの「能力数値」の定義です。

こちらは、ファイナルファンタジーのジョブにおける能力数値ですが、勇者、魔法使いなどジョブによってレベルの定義が異なります。
これは当たり前ですよね。

たとえば、勇者は「力」が高い必要性があると思いますし、魔法使いは「知性」が高い必要性があることはご理解いただけるかと思います。

0-2. 等級定義とは

等級定義とは、御社独自の等級(レベル)の定義のことです。

前述したファイナルファンタジーのジョブを思い浮かべていただけると、「勇者」「魔法使い」のレベルの定義は、当然異なるわけです。
そのため、同じ業界であっても、等級定義が異なることはよく発生します。
また、企業の中でも別の職種や別の部門であれば、等級定義が異なることも発生します。

たとえばですが、食べログを運営するカカクコムと、一休レストランを運営する一休は、ビジネスモデルは同じです。
ただ、顧客対象が全く異なります。
一休はリッツカールトンホテルやマンダリンホテルが対象、食べログは高級レストランから顧客単価が1000円未満のランチを提供するお店も対象。
この場合、「活躍する方の傾向」が異なると思うのですが、そうなると「レベルの定義」は差分が生まれます。
その場合、「同じ事業内容・同じビジネスモデルであっても、等級定義は異なる」
ということです。

0-3. 会社の規模拡大・事業内容変更による変化

  • 10名のスタートアップ

  • 50名のミドルベンチャー

  • 150名の上場手前のベンチャー

この3つの企業を比較していただいても「どういった人材が活躍しているか?」に差分があることはご理解いただけるかと思います。
また、

  • 業界特化したコンサルティング事業

  • 業界特化したSaaS事業

  • 全く別の業界を対象としたAI新規事業

この3つの事業を比較していただいて、「どういった人材が活躍しているか?」に差分があることもご理解いただければと思います。

前者と後者について「別企業」と無意識的に思っていませんか?
そうではなく、前述した2つの箇条書き × 3通を全て1つの企業の文脈において発生したらいかがでしょうか?

たとえば、

  • 創業期(2017年〜2018年)

    • 社員数:3〜6名

    • フェーズ:代表と数名で立ち上げ。プレイヤー主導で事業を推進

    • 事業構成:コンサルティング事業(業界特化型)

  • 拡張準備期(2019年〜2020年)

    • 社員数:10〜20名

    • フェーズ:再現性や分業体制の必要性が高まり始める

    • 事業構成:コンサルティング事業(継続)
           SaaS事業(構想・開発フェーズ)

  • 機能分化期(2021年)

    • 社員数:50名

    • フェーズ:営業/CS/開発など、職能別の組織が成立

    • 事業構成:コンサルティング事業(継続)
           SaaS事業(正式リリース)

  • 多事業展開期(2022年〜2023年)

    • 社員数:70〜90名

    • フェーズ:複数の事業・職種・文化が並存し始める

    • 事業構成:コンサルティング事業
           SaaS事業
           AI事業(R&D/β版フェーズ)

  •  組織統合期(2025年)

    • 社員数:150名

    • フェーズ:上場準備期。制度統一・等級刷新が必要となる段階

    • 事業構成:コンサルティング事業
           SaaS事業(主力事業化)
           AI事業(収益化フェーズ)

このような文脈(変遷)がある企業において、人事制度を作ったままにしておくこと自体が危険な行為であることは、なんとなくご理解いただけるかもしれません。

先程の食べログと一休の比較を見ていただきましたが、事業内容やビジネスモデルが同じだとしても、そこまでの違いがあるわけです。
そんな中で「社員数」と「事業内容」が変わる(追加される)のであれば、等級定義が変わらざるを得ないことはご理解いただけるかと思います。

1. 等級定義の変更における新等級への配置について

では、具体的な話を進めましょう。
等級定義の変更によって、新しい等級の配置についてのステップを紹介したいと思います。

1-1. 旧等級の一覧表の作成

人事制度がない場合は、現社員の給与一覧表は作成しておきましょう。
それが本項目の代替になります。
すでに人事制度がある場合は、どの社員が、どの等級・ランクに配置されているのかの一覧表を作成しておきましょう。

1-2. 新等級定義への配置

新しい等級定義されてる表に、全社員を配置していきましょう。
ここでのポイントをいくつかご紹介します。

  • 報酬レンジは一旦見ないこと
    新等級定義表には報酬レンジが記載されていることが多いのですが、あえてここは報酬レンジを見ない状態で、「新等級定義内容のみを見て」全メンバーをそれぞれの等級に配置していってください。

  • 現年収・旧等級は一旦見ないこと
    前述した報酬レンジを見ないこと、についての理由と全く同様です。
    「一旦」と記載したことがポイントになるのですが、全くもってこれを無視するわけにはいかないのですが「新しい等級定義において当てはまる方を見る」と言う目的に絞って作業を実施した方が間違いなく良いです。
    なぜならば、目的はミッション・ビジョンの達成であり、事業成長です。
    そのため、社員数の増加事業内容の追加をされた場合、必然的に「活躍する人材」の特徴は変わってきます。
    ただ、
    「これまで、〇〇さんが会社を引っ張ってきたから」
    「〇〇さんが今の部長だから」
    と言うのはもちろん考慮はしてあげたいのですが、「以前に活躍していたから」と言う理由で、新等級定義当てはめていくと、パズルのピースが崩れるというか、歯車が狂うというか、そんな感覚を持たざるを得ないかもしれません。

1-3. 新等級で評価項目に則って評価してみる

ここまでのステップで、「新しい等級定義において、誰がどの等級に当てはまりそうか?」という仮配置までは終わっている状態かと思います。
ここで次にやっていただきたいのは、実際の評価項目に基づいて、その配置が本当に適切かどうか?を検証するフェーズになります。

具体的には、新等級定義における“等級別の評価構成”に沿って、一度実際に評価してみるということです。

たとえば、ある企業様で新たに設定された評価構成が下記のようなパターンだったとしましょう。
今回は、等級が7段階(等級1〜等級7)ある設計で想定しています。

仮に、高木さんが新等級定義に基づいて等級4に配置されたとします。
この場合、評価を行う際には「バリュー評価50% × 目標評価50%」の構成で、実際の行動や成果を見ていくことになります。
では、実際に評価をしてみた結果、どうだったのか?
ここでの“最終評価の出方”によって、次の3つのどれに該当するか?を見ていきます。

① 最終評価が著しく「高い」場合
このパターンは、等級定義がその人に対してやや低く設定されていた可能性があります。
つまり、「等級4に配置したけれど、評価構成で見ると等級5に近いアウトプットが出ている」というような状態です。
この場合、以下のような選択肢が検討されます。

  • 一段階上(この場合は等級5)へのスライドを検討する

  • ただし“今回たまたま高かった”のか、“常に高い状態を維持している”のかを慎重に見極める

  • 次回評価で同様の水準が出るようであれば、正式に昇格検討を行う

大事なのは、「評価が高かった=即昇格」ではなく、「継続性と安定性も含めて判断する」というスタンスを持つことです。

② 最終評価が「±0(妥当)」だった場合
この状態が最もスムーズです。
等級定義の役割期待と、実際の評価項目でのアウトプットが一致している状態です。
この場合は、そのまま新しい等級で配置・報酬レンジを設定して問題ありません。
むしろこのパターンが多ければ多いほど、「新等級定義が現場実態とフィットしている」という証明にもなりますし、
納得感のある人事制度への移行がしやすくなるはずです。

③ 最終評価が著しく「低い」場合
このパターンが出てきた場合は、配置した等級が少し高すぎた可能性があります。
等級定義として求められているアウトプットや振る舞いに対して、現状そこまで届いていないという評価になっている状態です。
特に、「今のポジションが部長だから等級6」「これまで引っ張ってくれた人だから等級5」といった、
過去の経緯や感情で配置してしまった場合にズレが生じやすい傾向があります。
このようなケースでは、以下のような対応が考えられます。

  • 本人と丁寧に面談をし、現状と期待のギャップについてすり合わせる

  • 1段階下の等級で“改めて期待値を整理する”という運用を一時的に行う

  • 評価構成そのものが厳しすぎる可能性があるため、定義自体を見直す余地があるかどうかも検討する

ただ、誤解がないように申し上げると、本ブログは「新等級定義への配置」について説明をしてる内容になります。
そのため「仮評価」について焦点を当てているわけではありません。

もし仮にこれが仮評価についての実施であれば、下記のような検討が必要になります。

  • 評価項目が適切ではないのでは?

  • 評価基準が適切ではないのでは?

  • 最終評価基準が適切ではないのでは?

  • そもそも等級定義が適切ではないのでは?

ただ、本ブログは、新等級定義の配置になるため、このタイミングで実際に全社員を評価してみて、評価が高すぎたり、低すぎたりする場合は、「等級定義と評価項目・基準のバランスが悪い」と、捉えていただいた方が良いと思います。

1-4. 現年収・現等級との見比べ

このタイミングで、新等級定義への配置と、年収・等級と見比べるステップを入れましょう。
それと、3つのパターンがあることがわかるかと思います。

  • 現年収・現等級 > 新等級定義における報酬レンジの場合
    このパターンが一番悩ましいケースです。
    つまり、新しい等級定義に照らしてみると、「現年収の方が高い」という状態ですね。
    年収を下げるという選択は、基本的には避けた方が良いと思いますし、そういった対応をしてしまうと不信感にもつながります。
    そのため、以下のような運用パターンを取られるケースが多い印象です。

    • 報酬水準は維持しつつ、等級を一段階下げる(役割期待の明確化を重視する)

    • 一時的に「猶予期間」を設け、半年〜1年程度は現年収を維持する

    • ランクを上限ギリギリで調整して吸収する(新定義の中で“枠内”に納める)

僕のおすすめとしては、「個別運用をしても良いが、それが例外であることを明文化しておく」ということです。
“場当たり対応”ではなく、“想定済みの対応”として準備しておくことが、全体のバランスを保つ上で大事になるかと思います。

  • 現年収・現等級 = 新等級定義における報酬レンジの場合
    このパターンは最もスムーズです。
    新しい等級定義における報酬レンジと、現年収・現等級の水準が一致しているということなので、そのまま新しい枠組みに移行していただく形で問題ないと思います。
    本人にとっても、「ちゃんと今の役割と報酬が一致しているんだな」と納得しやすいですし、経営サイドや評価者にとっても、違和感なく新しい定義にスライドできる良いパターンです。
    このパターンが多く出てくると、新しい人事制度への移行そのものがすごくスムーズに進みやすくなります。

  • 現年収・現等級 < 新等級定義における報酬レンジの場合
    このパターンはある意味で“メンバーにとって嬉しいズレ”かもしれません。新しい等級定義に当てはめてみたら、「本来このポジションは、もう少し高い年収でも良い」という判断になるケースです。
    これまでは役割定義が曖昧だった中で頑張っていたメンバーが、明文化された新定義の中で“正しく評価される”という状態ですね。
    この場合は、もちろんすぐに昇給を反映しても良いのですが、昇給幅が大きい場合などは段階的に引き上げていく、タイミングを分けて調整する、などの工夫をされる企業様もいらっしゃいます。

ただ、いずれにせよ「新しい人事制度によって、これまで見逃していた貢献が正しく見えるようになる」というのは、すごく健全な話ですし、僕自身も、こういったケースに出会ったときに「新しい定義を作ってよかったな」と実感することが多かったりします。

この3つのパターンそれぞれに応じて、どう向き合っていくか?を丁寧に決めておくことで、新しい人事制度への移行が、より納得感のあるものになるのではないかと思っています。

2. 現年収・現等級 > 新等級定義における報酬レンジの場合

前項目で説明をいたしましたが、
「現年収・現等級 > 新等級定義における報酬レンジの場合」
この場合は、メンバーにとってネガティブな作用が働くため注意が必要です。

ただ、本事象について詳しく触れているブログがあるため、下記を詳しくご覧いただければと思っています。

「新人事制度の等級/ランクへの反映はどのようにしたら良いですか?」
人事制度を新しく作る・刷新するにあたり、新しい等級定義に現社員を当てはめなければなりません。
その場合、どうしても年収との差分が発生します。それに対してどのように対応すれば良いのか?について説明してきたいと思います。

3. 配置の結果は、どう伝えるか?

最後に1点だけ、配置をした後の“伝え方”について触れておきたいと思います。

この話、意外と見落とされがちなのですが、「どう決めるか?」と同じくらい「どう伝えるか?」も大事なんですよね。
せっかく新しい等級定義を時間をかけて設計して、「この内容でいこう」と全社員を新しい枠組みに当てはめたとしても、その伝え方ひとつで、「納得感がある」か「押しつけられた」と思われるかが分かれてしまう、ということは実際によく起きます。

僕が推奨しているのは、「全体説明」→「個別対話」→「伝え方のトーン統一」の3点を最低限押さえておくことです。

まずは、「なぜ今回このような配置をしたのか?」という背景や意図を、会社全体に向けて説明する機会をきちんと持つこと。
Zoomでも、録画でも、文章でも構わないのですが、「社員数が増えた」「事業が増えた」「役割の幅が広がった」などの変化を踏まえて、「このままでは等級定義が現実とズレてくる」という危機感があったことを言語化するのがポイントです。

その上で、全体に方針を伝えたあとには、個別の面談をセットで行うことを強くおすすめします。
なぜこの人がその等級に配置されたのか?どういった観点で判断されたのか?を、丁寧に本人に伝える時間を設けておくことで、「ちゃんと自分を見てくれている」「納得できる背景がある」という理解につながります。
逆に、結論だけをSlackで送ったり、軽く話すだけで済ませてしまうと、
「一方的に決められた」という印象になってしまい、等級定義や評価制度そのものへの信頼が下がるリスクもあります。

最後にもうひとつだけ大事なことは、面談者によって伝え方にブレが出ないようにしておくことです。

これは本当に細かいところなのですが、「仮配置なので次回変わるかもしれません」と言っているマネージャーと「この配置で固定されます」と言っている部門長がいた場合、どちらが正しいのか分からなくなってしまいますよね。
だからこそ、伝えるトーンやFAQ、説明資料などは“揃えておく”ことがすごく大事です。

つまり、配置をどう決めるか?と同じくらい、その結果をどう伝えるか?をセットで設計しておくことで、新しい等級定義や評価体系が、“制度としてちゃんと信頼される形”で浸透していくのではないかと思っています。

最後に

皆さんいかがでしたでしょうか。
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