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読書中心でも多言語話者になれる?シャイな子の3言語習得記録(8歳/日英仏)

こんにちは、阪口です。2025年から家族で南フランスに暮らしています。

8歳の娘は現在、日本語・英語・フランス語の三言語環境で育っています。家庭では日本語、学校ではフランス語、娯楽では英語という生活です。

娘は内向的な性格で、おしゃべりなタイプではありません。フランス語も、聞き取りや読み書きはできるようになってきたのに、自分からは話そうとしない。「会話の機会を増やせば?」と思ってオンラインレッスンを検討しても、知らない人と話すのは苦痛だと言う。

親としては「話せるんだから、どんどん会話してほしい」と思うのですが、叶いません。

そこで気になったのが、「娘が好きな読書中心でも、多言語話者になれるのだろうか?」ということでした。

調べてみると、「読書中心でも問題なく多言語話者になれる」というのが研究の示す答えでした。むしろ読書の方が効率的という結果もあり、少し安心しました。

この記事では、読書と言語習得に関する研究データを紹介しながら、娘の三言語習得の現在地を記録していきます。



娘の現状1:聞き取れる、書ける、でも話さない

娘はフランスの公立小学校に通い始めて約10か月になります。

フランス語の習得は、親から見ると順調に進んでいるように見えます。登校して数週間で先生や友達の言っていることは聞き取れるようになり、今では先生の指示も理解できるし、2〜3行の文章も書けるようになりました。

ただ、話さない。

学校の成績表でも発語以外は学年相当に到達しているとの評価ですが、必要に迫られない限り、学校でフランス語を話そうとしません。これは渡仏当初から一貫しています。

理由を聞くと、「赤ちゃんじゃないから単語だけで話したくない」「ちゃんと文章で言えるようになってから話したい」と言います。自分が納得できるレベルになるまで、話すことを選ばない性格のようです。

友達とのコミュニケーションはとれていて、クラスメイトの名前も全員覚えています。誕生日会やパーティーにも誘われるし、孤立しているわけではありません。

それでも、自分からフランス語で話しかけることはない。

クラスメイトはいまだにフランス語が話せないと思っているようですし、親としては「話せるんだから、どんどん会話してほしい」と思うのですが、なかなか叶いません。ただ、考えてみれば英語でも日本語でも積極的に話しかけるタイプではないので、これは性格なのだと思います


娘の現状2:オンラインレッスンも苦手

「会話の機会を増やせばいいのでは?」と思い、オンラインレッスンを検討したこともあります。

でも、娘にとって「知らない人と画面越しに話す」というのは苦痛でしかないようです。実際、以前通っていた英語スクールのオンラインレッスンも、本人から「どうしても嫌だ」と言われて辞めました。

娘が好きなのは、自分のペースでできること。

一人で本を読む、粘土やレゴで何かを黙々と作る、絵を描く。そういう時間が一番楽しいようです。大人数より少人数、外遊びより室内遊び。

典型的な内向型の性格だと思います。

粘土で作った「パパとママの結婚式」。黙々と5時間くらい作っていました

疑問:読書中心でも多言語は育つのか?

そこで気になったのが、「娘が好きな読書中心でも、多言語教育はできるのだろうか?」ということでした。

会話が苦手なら、読書で補えないか。そもそも読書だけで言語は育つのか。

ということで調べてみることにしました。

結論から言うと、「読書中心でも多言語話者には問題なくなれる」というのが、研究が示す答えでした。

むしろ、読書の方が効率的という研究結果もありました。以下、調べたことをまとめていきます。


言語習得は「インプット」で起こる

発語<理解可能なインプットが大事

言語学者Stephen Krashenは「理解可能なインプット仮説」という理論を提唱しています。

この理論によれば、言語は「聞いて理解できる・読んで理解できる」インプットを大量に浴びることで習得されます。話すことは習得の「結果」であって「原因」ではない、というのがポイントです

Krashenが2004年にまとめた研究レビュー「Free Voluntary Reading」では、持続的黙読(SSR)プログラムの効果を検証した54件の比較研究のうち51件で、読書グループは従来型授業グループと同等以上の読解力・語彙力・文法力を示したと報告されています。

さらに興味深いのは、読書に文法学習や作文練習を追加しても、読書のみのグループと成果に差がなかったという結果です。つまり、読書だけで十分に言語は育つということになります。


「沈黙期間」は正常なプロセス

第二言語を学ぶ子どもには沈黙期間(Silent Period)」と呼ばれる、話し始める前の蓄積期間があるそうです

研究によれば、この期間は2週間〜6か月、幼児の場合は1年以上続くこともあります。この間、子どもは話さないけれど、インプットを蓄積し続けています。

娘の場合も、まさにこれに当てはまるのかもしれません。

フランス語は早くから聞き取れていますが、半年をすぎてようやく買い物などでポツポツと話しはじめました。ただ、その時には単語でなく、5〜7単語くらいの文章で話しています。

「話せないから話さない」のではなく、「自分が納得できる形で話せるようになるまで話さない」という感じ。いまも学校でクラスメイトに算数を教えるときはフランス語で話すようですが、基本的には友達が話すことに対して、頷いたり首を振ることで返事をしています。

娘の性格と沈黙期間が重なって、引き続き学校生活では長めの蓄積期間になっているのだと思います。


内向型は学業成績が高い傾向も

Quiet Kids: Help Your Introverted Child Succeed in an Extroverted World」という研究レビューでは、内向型の学生は外向型より学業成績が高い傾向があると報告されています。

内向型の子どもは分析的で、読書や静かな作業で力を発揮します。言語学習においても、じっくり観察し、蓄積してから出力するスタイルが有効に働くようです。

20か国語以上を操るポリグロットのSteve Kaufmann氏も、自身のブログ「Introverts Vs Extroverts in Language Learning」で、「言語学習の成功に性格は関係ない。大切なのは態度・時間・気づきだ」と述べています。

彼によれば、ポリグロット会議で「バイリンガル家庭育ちの人」を聞いたところ、ほとんど手が挙がらなかったそうです。つまり、多言語話者になるのに、特別な環境や外向的な性格は必須ではないということです。


読書で語彙は自然に増える

子どもは年間約1,000語のペースで語彙を獲得しますが、その多くは直接教えられたものではなく、読書を通じて自然に身につきます。

言語学者Paul Nationの2014年の研究では、1日1時間の読書を3年間続けると、語彙力が2,000語ファミリーから9,000語ファミリーに到達可能とされています。

また、Ohio State Universityの2019年の研究では、毎日5冊の絵本を読み聞かせる家庭と、まったく読み聞かせをしない家庭では、入学時点で約140万語の差があると報告されています。

読書量と語彙力には、明確な相関があるということがわかりました。


娘の場合:読書中心の三言語習得

研究データを踏まえた上で、娘のこれまでの語学学習環境をまとめてみます。

日本語(母語)

日本語は娘の思考の土台です。

小さい頃から、読書量は多いと思います。月50-100冊読んでいたと思います。

フランスでも1日数冊、暇な日だと10冊読みます。星新一のショートショート、タイムワープシリーズ、ハーブ魔女ジャレットの魔法の庭シリーズ、世界の名作シリーズなどが好みです。海外で暮らしていますが、日本に帰国するときに本はまとめて持参したり、Amazon Japanから取り寄せています。

日本語の読書量が多いことで、抽象的な概念や論理展開を日本語で処理できています。これは他の言語を学ぶ際の土台にもなっていると感じます。

フランス生活中でも「日本語が混乱してきた」と感じるときには、自発的に大量の日本語の本を読んでいます。自分のペースで日本語が取り入れられて落ち着くそうです。

英語(0歳〜)

英語は0歳から音声インプットを開始しました。

読書については小1の夏から本格的にスタート、簡単な本からスタートしています。本棚には日本語と同じ量、だいたい100冊くらいの本があります。

現在は「勉強」ではなく「生活・趣味」として英語に触れています。Netflixを英語で見たり、オーディブルで英語の本を聴いたり。シャドーイングでの暗記も得意です。

英語スクールを辞めてからの方が、自主的に英語に触れる時間が増えました。強制されると嫌になるけど、自分で選ぶと続く。娘を見ていると、その傾向が顕著です。

フランス語(8歳〜)

フランス語を本格的に開始したのは8歳から。

以前からフランス語の音を聞かせる機会はありましたが(Peppa Pigやアナ雪などの仏語版など)、渡仏時点でフランス語はほぼゼロ。2ヶ月ほど公文のフランス語講座を受講したので、簡単な単語は知っていましたが、会話はできない状態でした。

現地校に通い始めて約10か月。教科書は読めるようになり、物語作文も書けるようになりました。いまだに会話は控えめですが、学校の授業(音読・詩の暗唱・ライティング)でアウトプットはしているようです。

学校で8時間フランス語をするので、家ではDuolingo以外やりたくないと。教科書は読みますが、自宅での読書はまだスタートしていません。


親として意識していること

最後に、娘の言語習得をサポートする上で、親として意識していることをまとめます。

読書環境を整える

多言語の本へのアクセスを確保することを意識しています。

住んでいる地域では、図書館や本屋屋さんで日本語と英語の本を見つけるのが難しいので、日本から取り寄せたり、amazonフランスで購入しています。

英語はアプリも多いですが、数カ月経つと読みたい本がなくなるらしいので、常にアップデートしている感じです。

読書量の把握は主に妻が行っていて、いろんな人のブログを読んだり、人やAIに相談しながら読む本を選んでくれています。

音声インプットを補完する

英語は、読書にプラスして、正しい音を入れるために、「Netflix・オーディブル・Duolingo」を行っています。娘が楽しいと思える形で、自然にインプットが増える仕組みを作っています。

本人の興味を尊重する

最終的には、本人が興味を持てるかどうかがすべてです。

むすめは読書好きですが、興味がないものは一切読みません。好きな本、好きなジャンル、好きなキャラクターを中心に据えることで、自然と読書量が増えていきました。

日本であれば図書館で好きな本を選ぶことが出来ましたが、今は本人が自由にアクセスするのが難しいので、こちらが選びながら、日々試行錯誤しつつ読書習慣を保っています。

「話させよう」と焦らない

「もっと話してほしい」と思う気持ちはありますが、焦らないようにしています。

研究が示すように、沈黙期間は正常なプロセスです。インプットが十分に蓄積されれば、アウトプットは自然についてきます。本人が話したいと思ったタイミングを待つことが大切だと、自分に言い聞かせています。


まとめ

バイリンガル・マルチリンガル教育というと「たくさん話す機会を作る」ことに目が向きがちですが、いろんな研究結果を見ると、読書だけでも語彙・文法・読解力が十分に育つし、むしろその方が効率的という結果もあり、少し安心しました。

娘は日本語・英語・フランス語の3言語に取り組んでいますが、うまくバランスが取れているような気がします。特に日本語は、海外生活で日本語を維持する上で読書は欠かせないように思います。

「話さないけど大丈夫かな」と不安になることもありますが、研究データを見て「蓄積の時間なんだ」と成長を待てるようになりました。

今のところフランス語に関しては、喋りもしないし、読書もしないのですが、気長に待とうと思います。

阪口ユウキ


参考文献・研究データ一覧

Stephen Krashenの研究

沈黙期間(Silent Period)

内向型と言語学習

読書と語彙獲得

バイリンガルと読書