第7話『パラレルコネクター』ファンタジー小説部門
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【一章‐二節 第四世界へ】
夢のない眠りから覚める。
俺が夢を見ることがなくなってから、どれくらいの月日がたったのだろう。
俺はどれくらいの夜を超えてきたのだろうか?
そして俺はいつ自分自身の望みを叶えられるんだろうか?
ああ、アンタとつながっていたんだったな。
……温かい。心の中に誰かがいるような感覚。懐かしい。昔もこうだった気がする。
窓の外はまだ暗い。第三世界の夜明け前は静かだ。第四世界も今頃同じような空をしているのだろうか。
「ヤマベ、起きてる?」
シロの声がした。
「ああ、起きてる」
「ダークマター、十分溜まったよ。いつでも飛べるよ」
「そうか。じゃあ出発前にゼンと打ち合わせをしておく」
俺はシロを手に取り、第五世界のゼンに通信をつないだ。
ゼンは第五世界の世界統一大統領だ。天人であり、地球と会話できる唯一の人間でもある。
この計画の発端はゼンからの接触だった。
「ヤマベ、準備はできたか」
ゼンの声はいつも落ち着いている。感情の起伏が読めない男だ。
「ああ。今日、第四世界に飛ぶ」
「天地人は間違いなく第四世界にいる。コネクターは引き合う。必ず会えるだろう。ただし、まだ俺たちの計画は伏せておけ。彼女は天地人だ。——下手に動くな……気づかれるぞ」
「わかっている」
「もう一つ確認しておく。コネクターは五つ集まれば世界の均衡を保てる。今、俺がブルーを持っている。お前がホワイトを持っている。残りの三つを集めることがまず最初の仕事だ」
「ダイヤモンド、レッド、ブラックだな。第四世界のもうひとつのコネクターは必要ないのか?」
「新しいコネクターだな。それは必要ない。従来の五つのコネクターがあれば問題ない。あのコネクターは特別だと言っただろう。直接回収するわけにはいかない。つながったままでいることに意味がある」
「どういう意味だ?」
「まだわからん。地球もそこまでは教えてくれなかった。ただ、そのコネクターは今まで誰も見たことのない形で作られているらしい。いけにえを使わずに作られた、唯一のコネクターだ」
俺は少し考えた。
いけにえを使わずに作られた、それがジルコニア。アンタが持っているそれが。
「わかった。天地人に会ったら連絡する」
「ああ。気をつけろ、ヤマベ。天地人は世界のすべてを知っている。お前の目的も、いずれ読まれる」
その言葉を最後に、ゼンとの通信が切れた。
俺は窓の外を見た。空が少しずつ明るくなっている。
「ねえヤマベ」
「なんだ」
「ゼンって信用できるの?」
「さあな」
「さあなって……」
「信用できるかどうかより、今は一緒に動く理由がある。それだけだ」
シロは黙った。
俺も黙った。
ゼンの目的と俺の目的は、一部だけ重なっている。完全には重なっていない。
でも今はそれでいい。俺には俺の目的がある。世界を救うことは、そのための道だ。
「ヤマベ、一つだけ聞いていい?」
「なんだ」
「天地人に会いに行くのは、世界を救うためだけじゃないんでしょ?」
俺はシロを見た。こいつは時々、鋭いことを言う。
「……まあな」
「教えてくれないの?」
「いつかな」
シロはそれ以上聞かなかった。
「じゃあ行くか」
「うん。第四世界、どんな世界なんだろう」
「俺たちの世界とほとんど同じらしいぞ」
「それって、面白味がないね」
「お前は何しに行くんだ」
「もちろん、世界を救うため! ……ねえ、でもヤマベ。どうしたらいいのか、私には全然わからないよ?」
「大丈夫だ。今はまだそれでいい」
俺はシロを握った。
右手にシロ。
アンタはここにいる。
並行世界への移動は、コネクターのエネルギーを使う。
所有者の意識とコネクターが同調し、目的地の気配を拾い、時空を飛ぶ。
理屈はわかっている。でも実際にやるのは、まだ慣れない。
「シロ、行くぞ」
「ラジャーだよ!」
景色が揺れた。
足元から感覚が消え、自分の重さが無くなるのを感じた。
暗闇。
そして一瞬の静寂。
次の瞬間、俺は再び重力を感じていた。
