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AIがうばえなかったもの:  第2話それぞれの夢

高校三年の春。

教室には進路希望調査の紙が配られていた。

彩乃は迷わず書く。

『法学部』

将来は弁護士になる。

困っている人を助けたい。

その気持ちはずっと変わらなかった。

先生も満足そうにうなずく。

「彩乃なら大丈夫だな」

彩乃は小さく笑った。

期待されることには慣れていた。

―――

一方、直人も進路を決めていた。

『医学部』

成績は学年でも上位。

教師たちも期待している。

昼休み。

裕太が聞いた。

「医者か」

直人はうなずく。

「人の命を助けられる仕事だからな」

「すげえな」

裕太は素直に感心した。

直人は少し笑う。

「お前は?」

「弁当屋」

即答だった。

「継ぐのか?」

「親父も年だしな」

裕太は照れくさそうに頭をかいた。

大きな夢があるわけではない。

でも、店を守りたいと思っていた。

―――

放課後。

千夏は進路希望調査を前に悩んでいた。

先生が声をかける。

「大学は考えてないのか?」

千夏は首を横に振った。

「介護の専門学校へ行きたいです」

先生は少し驚いた。

「介護か」

「はい」

千夏はうなずく。

祖母が入所している施設。

そこで働く人たちを見てきた。

利用者の手を握り、

笑顔を引き出す姿に憧れていた。

「人の役に立つ仕事がしたいんです」

その言葉に先生は微笑んだ。

「いい夢だな」

―――

数日後。

千夏は祖母のいる施設を訪れていた。

庭のベンチで祖母と話していると、一人のおばあさんが転びそうになった。

慌てて支える。

「大丈夫ですか?」

「ありがとうね」

おばあさんは笑った。

その時だった。

「千夏」

振り向くと直人がいた。

祖母の付き添いで来ていたらしい。

「珍しいね」

千夏が笑う。

直人は少し周囲を見回した。

「こういう場所、初めて来た」

「そうなの?」

「病院とは全然違うな」

しばらく二人で利用者たちを眺めた。

楽しそうに話す人。

将棋を指す人。

昼寝をしている人。

直人がぽつりと言う。

「医者は病気を治すけどさ」

「うん」

「こういう時間も大事なんだな」

千夏は少し驚いた。

勉強ばかりしているイメージだった直人から、そんな言葉が出るとは思わなかった。

「そうだよ」

千夏は笑った。

その笑顔を見て、直人も少しだけ笑った。

―――

夏休み。

受験勉強は本格化していた。

彩乃は図書館にこもる毎日。

直人も医学部受験のため必死だった。

裕太は店の手伝い。

千夏は介護施設でボランティア。

それぞれの未来へ向かって進んでいた。

誰もが信じていた。

勉強を頑張れば報われる。

いい大学へ行けば安泰だ。

医師や弁護士になれば将来は明るい。

そう思っていた。

だがその頃。

世界では静かにAIが進化を続けていた。

まだ誰も気づいていない。

十数年後。

そのAIが、

彼らの人生を大きく変えることになるとは。

第3話に続く

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