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行政が本気でマッチングアプリ作ってみた|第6話(終) 快楽機械の聖域


ハックへの情熱

謙虚で誠実でありたかった私は、システムからの過保護なまでのサジェストを、教科書のように律儀に守り続けてきた。
私たちは互いに、アマに鼓舞され、励まされながら最初の夜を乗り越えた、純粋なバージン同士の結婚だったからだ。自分が不完全な人間だからこそ、システムに縋(すが)り、彼女を傷つけないようにと必死に自らを律してきた。

……ゴシップ誌は今でも健在だ。人気があることは事実。
「誰と誰が不倫」だの「誰と誰が熱愛同棲」だの、「人妻は欲求不満!妻の本音リポート」なんて記事は、それこそ掃いて捨てるほどあふれている。
大昔からちっとも変わらない。

紙面を飾るのは、アマをインストールしない――いや、過去の亡霊が多すぎてインストールした瞬間に社会的死を迎えるため『登録できない』有名人やプロスポーツ選手、あるいはAIの査定を拒絶する本物の特権階級どもばかり。

私たちは、彼ら『持てる者たち』の泥沼の地雷原を安全な舗装道路から見世物として面白がるけど、自分が当事者になることは御免被る。
そんな人にとって、まさにアマはうってつけのツールってことだ。

もはやこれは「人間の業」というか、何と言えばよいのか分からないが、今でも不倫や離婚はありふれたことだ。
昔に比べて、勝負が一瞬でつくかつかないかの違いだけだ。不貞は隠蔽できず、数秒か数時間か、どんなにかかっても数日で完全にバレてしまい、有責配偶者は百戦百敗である。

だったら隠蔽を諦めて、「不倫の正当化ロジックの洗練」を志向したとしても、ほとんどすべて、アマに欺瞞を見抜かれる。そういう小細工は、余計に裏切られた側の怒りの火に油を注ぎ、有責側を地獄に落とすことになる。

しかし、ごくまれに、有責側が勝つ(と本人が思い込める)場合がある。
お察しのとおり、モラハラ、DV、ネグレクト、親世代との同居や病気等、そういったものへの対応で精神が消耗し、窒息しそうになって、余所の異性とコトに及んでしまった……という筋書き。本当にそのような事情があるのなら、有責側にも酌量の余地は大いにある――と、彼らは主張する。

そこまでして、婚姻外性交をしようとするのかよ……。
人間ってすばらしい!って、暗黒面からもそうだったんだと実感する。
普段から嫁に歩みよって、きちんとマメにコミットしろよって思う。
もちろん、そんな小細工、本気を出した行政アプリには通用しない。

――ある月刊誌からの引用。
当事者がどれほど精緻な「悲劇のヒロイン・ヒーロー」のシナリオを書き上げ、口先で「精神的に窒息しそうだった、だから仕方なかった」と叫んだところで、システムを騙しきることは不可能です。
なぜなら、アマが見ているのは「その瞬間の言い訳」ではなく、何ヶ月、何年にもわたって蓄積された「家庭内という密室の、生々しい行動ログの連鎖」だからです。

【チェックを欺けない理由】

一、多層的な因果関係の検証
仮に有責側が「相手のモラハラに追い詰められた」と主張しても、アマのAIは以下のような多角的なクロスチェックを瞬時に行います。

  • 家庭内の空気(ログ)の時系列解析:本当に相手のモラハラで窒息していたのか、それとも「自分が不倫をしたいがために、あえて冷淡に振る舞って相手を怒らせ、モラハラのログを意図的に生成した(偽装した)のか」は、その家の中のすべてデバイス(スマホ・スマート家電)が収集している過去のログからすべて暴かれます。

  • 「不倫相手」との接触ロジック:「苦しくて偶発的に一線を越えてしまった」のか、「かなり前から周到にお気に入りの異性を品定めし、言い訳の材料が揃うのを待っていたのか」は、アマの検索履歴や街中の顔認証、視線のログから筒抜けです。

  • 周囲のデバイスとの整合性:自分のスマホだけでなく、配偶者のアマ、不倫相手のアマ、さらには子供のデバイスのログまでを統合して「家庭内のパワーバランス」が計算されます。一人の人間の浅知恵で、これら無数のデバイスが証明する「客観的な現実」を歪めることは物理的に不可能です。

二、真に苦しんだ人しか救われない、残酷な公平さ
したがって、この世界における「不倫の正当化ロジックの洗練」とは、悪知恵の働く人間がシステムをハックするための技術ではなく、皮肉にも「自分がどれだけ本当に、逃げ場のない地獄にいたか」「どれほど耐え忍んで泣き寝入りをしてきたのか」を、アマの前にすべて曝け出すという、究極の絶望の証明にすぎません。
システムを騙しようとする「欺瞞の意志」そのものが、アマにとっては最悪のノイズであり、即座に「漆黒(ブラック)」へと叩き落とされるトリガーになります。
「いや、お前が不倫したくて相手を追い詰めたんだよな」
極めて高い確率で、そのようになります。

――引用ここまで。

停電の夜の暗がりで、千瀬は私との距離を詰めながらこう続けた。

「私ね、妊娠中に托卵がバレて、一方的に旦那からゴミ箱に放り込まれた女からね、言われたわ……その托卵、元カレのレイプのせいってことで、女の中では整理されてるらしいけど、なんでそんな至近距離に元カレが居るのよって、ツッコミを禁じ得ないわ」

妻が思い出したように歪んだ笑みを漏らす。

「『旦那しか知らないなんて、もったいないわね』って」

「こんなの反論する前……いいえ、あのカッコウの雌が私をターゲットにした時点で、私の勝ちだわ。彼女はもう、誰からもまともに付き合ってもらえなくて、どうやら毎夜街角に立っているわ……超ウケる……元カレはカッコウの雌に養われるんだって……本当、甲斐性のないヤツ!」

妻の言葉は、冷徹なまでのリアリズムに満ちていた。システムから脱落した敗者への同情など一滴もない。自分が「正嫡の妻」という強固な幸福の上にいることを完璧に理解した上での、圧倒的な勝利宣言だった。

私との間に、女、女そして男の三人の子をもうけ、上の子は13歳になり寄宿舎制の私立校に通学している。下の二人は10歳と6歳だ。今は眠っている。

今夜の妻はいつもと違う。彼女の周りが、熱を帯びていた。

――夫をハックして私に沼らせる。

私は19歳で夫の航と結婚した。
バージン夫婦ゆえの不安はあったけれど、夫がどこまでも自重してくれたおかげで、私たちは「本当の夫婦」への階段をわりかしスムーズに昇ることができた。

当時23歳だった童貞の夫は、一丁前にこんなことを言ってみせたのだ。

「仕組み自体はシンプルなんだ。犬猫でも普通にやってることだよ。それより千瀬がショックを受けることの方が、よくない。アマのおかげで、昔よりもはるかにショートカットしたルートを来た。……だけど、今日明日と焦りはしないけど、だからと言って一年待つかって言われると、俺が干物になってしまうよ。……千瀬のおかげで、俺『夫』になれるんだな……」

どんな甘美な愛の囁きよりも、私の脳をドロドロに溶かした、あの頼りない強がりと思いやり。
あの夜、私は人生の「正解」をこの手で掴み取った。

その確信は、15年が経った今でも微塵も揺らいでいない。

かつて、図書館のアーカイブで見つけた大昔の女性雑誌を、アマに分析させたことがある。
デカデカと「男」のイラストが踊るページには、「快感♡ポイント」だの「カレの目を見ながら……」だの、ご丁寧なハウツーが恥ずかしげもなく書き連ねられていた。所詮は締め切りに追われた編集者がでっち上げた既製品の知識。
「性感帯なんてみんな違う」と言い訳しながら正解を押し付け、最後は『お互いの感性を大切に、彼を虜にして沼らせましょう』というフワッとした精神論でお茶を濁す。

……そもそも、このゴミ記事、女の編集者が書いてるの?男の薄汚い願望じゃないの?

滑稽すぎて、もはや嗤うしかない。
自由恋愛という名の修羅の道で、誰もが元カレや元カノの幻影――あの忌まわしい「亡霊」に怯えているくせに、そんな薄っぺらい情報でマウントを取り合っていた、大昔の猿ども。

恋愛の初期はただ浮かれていて「気持ちいい」「楽しい」だけで満たされている。

そのまま脳天気に浮かれたまま、最後まで行く場合もあるんだろうけど、それはそれで知性が死んでるわ。

知性が生きていれば地獄だわ。……関係が深まるにつれて、あるいは経験を重ねるにつれて、そこへジワジワと「過去のノイズ」が混じり込んでいく。

そのお粗末な雑誌には、三文小説が載っていた。
昔のSNSからとられたネタみたい。

とにかく女主人公の設定がいろいろとひどい。
小説のその時点で四股している23歳!

その女と男のやり取りが書かれていた。
ポルノにも及ばない汚らしい言葉だ……。
読んだら気持ち悪くなった。

『それをアイツにお前はしたのか?……訓練された舌遣い……不快だ』

『元カノにもこんな顔を見せたの?……元カノはここまでしてくれなかったでしょ♡……!……どうして?……どうして蔑むような目をするの?』

『……過去を含めての君だと受け容れたいが、胸が軋むような不愉快さは耐えがたい……君の瞳の奥には、アイツがいる。アイツと居るときの君の表情は最高に綺麗だった。俺の前の君からは見せてもらったことがない……この恋は終りが近い。耐えられない』

『……カレのコトは言わないで!もう会うこともない人のことを、どうして今、口にするの?』

『動揺し過ぎだよ。……俺の恋は今終った。アイツのところに帰れ』

『アイツは他の女のところに行ったわ。……アイツのセフレの一人に戻れっていうの?』

『俺の前に居る君の本心が分からない……アイツに振られたから?アイツにセフレに降格させられたから?アイツが嫌いになったから?アイツに捨てられてもいいように、俺をキープしたいから?』

『……どうして…どうして…違う…そんな意味じゃない……』


……独り相撲の男にもイライラするけど、この女の薄汚さは何?!
悲劇のヒロインぶってるけど、「四股」の女にそんな資格ないから。

これが当時のデフォルトなの?
……こんなヤツらと私を同列に「ヒト」としてカウントして欲しくない!

大昔の若者たちは、それを「充実した青春」と呼び、経験の数を競い合っていたらしい。哀れな猿ども。彼らは自ら進んで脳内に亡霊を飼い慣らし、その亡霊に背後から首を絞められていることすら、麻薬のような快感にかき消して気づかないフリをしていたのだ。

たくさん恋愛をして、傷つき、痛みを知ることで、ようやく他人に優しくなれる。立派な大人になれる――。
大昔の人間たちは、本気でそんな呪文を信じ込んでいたらしい。

――完全な、真っ赤な嘘。

もしそれが本当なら、どうして彼らの世界では、経験豊富なはずの大人たちの間で不倫や寝取られ、泥沼の離婚劇が絶えなかったのか?
痛みに慣れた猿どもは、他人に優しくなるどころか、痛みを避けるための狡猾な嘘と、人を効率よく裏切る技術を学んだだけじゃない。

経験なんて、ただの『擦れ』よ。心が摩耗して、誰も100%信じられなくなった欠陥品の言い訳。

アマが用意した舗装道路を歩み、お互いの世界にお互いしか存在しない私たちには、そんな汚い技術も、人を疑うための防衛本能も必要ない。ただ純白のまま、お互いのためだけに開き直ればいい。

大昔の猿どもは、傷つけ合ってボロボロになった末に、ようやく「安心感が大切だ」などと、血の涙を流して悟りを開いていたらしい。
バカバカしい。そんなの、最初からアマのアルゴリズムに従って、ノイズのない相手とマッチングすれば一秒で手に入る「デフォルト(初期設定)」なのに。

彼らはわざわざ泥水をすすり、遠回りをして、奇跡的に掴み取った妥協を「愛」と呼んで感動していたのだ。不経済極まりない。

巡りめぐって妥協ですって?
どれだけあなたは偉いんですか?
自分も他人も無数に傷つけあった挙げ句に、「妥協」って何?
もはや笑うしかないじゃない!ーー

ーー一方、航はこう思っていた。
千瀬、決定的な事実を見落としていないか?
そもそも恋愛強者の狂騒が「恋愛市場の地雷原化」の原因ではない。
それは矮小化された話ではなかろうか。

真因は商売人の都合__商業主義。

性愛の仕組み自体は簡単である。哺乳類でも爬虫類でも普通にその辺でやってる。
男性が女性特有の事情に配慮して、焦らなければほとんどそれで解決するんじゃないのか?
要するに、お互いにコミットメントして、よろしくやればよいだけのこと。


それを商売人がTV、雑誌、ハウツー本、ドラマ、映画やロマンス等、いちいち書き切れないほどの分野で、とにもかくにも難しくして、デコレーションを盛りまくった。
教育業界もその片棒を担いで、学生と親から金を毟り取った。

男のエロ雑誌(あるいはバズ狙いのSNS)に載せられている、「女の子に聞いた!こんな男とはエッチしてあげない!」なんて記事。

男性向けエロ本の編集者(あるいはそういう投稿主)と知って、インタビューに答え、こんなことをほいほい言う女の子が居るのかね?……少なくとも普通の人なら、こんなことは答えない。

彼らが身元を偽って、仮定の話として、前後の文脈を無視して、パッチワークしたのなら、もはや捏造。

読者の投稿なら、女子が男のエロ本や怪しいSNSにわざわざ投稿してくるってこと?
投稿主の性別をどうやって確認するの?

要は編集者・投稿主のこさえたフィクションだよね。
そもそも、大昔のTV番組で、編集者自身が内幕を暴露していた。

若い男女の不安を煽り、その不安につけこんで、ゴミのような情報と商品を買わせ、金を搾取しまくったことが、最大の元凶だと思うけど、どうかな。

大昔の自由恋愛市場において、そんな「亡霊の無間地獄」に陥り、お互いに傷つけ合って血を流していたのは、市場のトップを走り続けていたごく一部の「恋愛強者」たちだけだよ。

当時の人間も、そういうものがデフォルトだなんて信じちゃいなかった。
ドラマの演者だって、自分の配役について「こいつの行動原理がさっぱり分からない」と言っていた。

……そうすると、「恋愛強者」って共同幻想かも知れない。
居たとして、言われるほど無双できたのだろうか?
それはもはや「手当たり次第のセックスマシーン」じゃないかな。

性交を伴う男女関係……特定の集団内で、要は「とにもかくにもモテまくりたい」というOSで動く人たちが、何万回も交わって打数を稼いでいただけなのかも知れない。

その他大勢のほとんどの人間は、驚くほどおとなしい連中だったんじゃないかな。私や千瀬のOSと同じOSで動く人たちだ。

彼らはドラマチックな修羅場を演じることもなく、「まぁ、こんなもんだよね」と過去にこだわることもなく、スーッと結婚して、平穏に暮らしていたと思う。

これは私の考察あるいは妄想に過ぎず、実際のところは分からない。
当然、人間の心なんて分かりようがない。
「真実は藪の中」なのだ。

アマという巨大な行政システムは、一部の不誠実な個体が引き起こす「不倫」や「搾取」という社会的バグを完全に根絶し、恋愛市場と婚活市場の全滅を行政が代替し、それを以て、あまりにもメディア、SNSそして商業主義に毒され、分断されて窖(あなぐら)に引きこもってしまったその他大勢の男女を現実の家族形成の場に引きずり出すために作られた。

その結果として、本来はおとなしく平穏に生きていたはずのその他大勢をも巻き込み、全員を等しく去勢し、管理し、調教したのだ。

無責任に他人をいいように弄んだ連中を、排除した結果がこれだよ!

アマをインストールして、男女関係で何度かやらかしてしまい、現実世界を覆す武器も持たない「漆黒」の男女の群れ。

彼らは慢性的に人手が足りない医療職、介護職、あるいは肉体労働のより過酷なもの、例えば原子炉作業員のようなものに斡旋されていくという、都市伝説がまことしやかに囁かれている。

もっとグロテスクな話としては、「漆黒」の美男美女の中には、特権階級のペットにされている者も居る、なんて噂もゴロゴロ転がっている。
ペットとしてしゃぶり尽くされた挙げ句、心労で醜くなろうモノなら、即座に肉体労働に追い遣られるってお話だ。

如何にもありそうだけど、真偽は不明だ。

……ひまつぶしにSNSをみていた。
こんなものばかりだ。タイトルを眺めるだけで不愉快だ。
見るんじゃなかった。
大昔から変わらない悪意の煮染め。
そうでなければ、「自己責任」をエクスキューズにするゴミ情報。

「【悲報】スマホ置いて登山デートした結果、空からの赤外線で夫婦仲が炭化したログが公開されました」
「『グループ旅行』と偽装して二人で密会したカップル、アマの整合性チェックに敗北した瞬間の鳴き声まとめ」
「なぜ私の信用スコアはブルーを維持できているのか? 行政とAIを騙すための『完璧な模範市民』の演技法」
「聖域を作る!電磁波遮断DIYテクニック(※自己責任でお願いします)」
「アマのアップデートで『空白ログ判定』が厳格化。いよいよ聖域が消える」

近未来のSNS「まとめサイト」より

そのなかに、こんな言葉を見つけた。
「アマの攻略法ってさ、要は『どれほど嫌でも、初手から切るな!とにかく粘れ!』に尽きんじゃね?」
恐らくはシステムへの恐怖から出た言葉だろう。

だが、私はこういう解釈をしたい。
そんなこと当たり前だろ。お互いにまっさらな、ただの処女と童貞なのだ。
……いや、バージンに限らず、初めて出会ったとき、相互にまっさらだ。
「亡霊」よりも、その相手こそ真に対峙する相手。
粘る以外に、一体どうやって他人と人間関係を築けばいいというのか。
人間は、システムが思うほど簡単な生き物ではない。ーー

――だけど、そんなノイズを一切持たない私たち夫婦には、怯えるべき過去の幽霊なんて最初から一人もいない。
図書館で千瀬は、手元のスマホからSNSをのぞいて、こう吐き捨てた。

「今週の『廃屋不倫』:またもやドローンに撮られたマヌケな末路」。
私から「おばかさん」の言葉を贈ったげる。

システムが敷いてくれた完璧な舗装道路だけを歩んできた。お互いの「初めて」であり、「すべて」である私たちだからこそ。アマの監視の目が消えたこの暗闇の密室では、ただお互いを貪るためだけの完璧な『快楽機械』に、開き直って変わればいい。

停電の夜。例のアプリ「耳年増バージンババア」は今、消えている。

「あなたも、アマに止められていただけで、私と試したいことあるでしょ? 言いなさいよ。なんでもしてあげる」

夫が息を飲んだ。でも、瞳の奥に揺らめくものを見つけた。

アマのサジェストに従う今と、昔のくだらない空気に従っていた頃、一体どこがどう違うの?……もう、おしゃべりは止めよう……ね……アマのサジェスト領域外における、夫婦の同居・協力・扶助の義務――いま、果たそう」

他人のノイズを1ミリも介在させない、私たちだけの、真の聖域。

「ねえ、キスして」

――暗転。


(完)

この作品は、登場人物も組織も団体も、書かれていることはすべてフィクションです。現実世界とは一切関係ありません。
また、マイナカードのGPS追跡機能は実装されていません。完全なるフィクションです。