行政が本気でマッチングアプリ作ってみた|第1話 仕様書
【あらすじ】
日本の少子化や人手不足が極限に達した近未来、民間婚活市場が絶滅した世界。行政が構築したマイナンバーカード紐付けの管理システム、通称「アマ(家族形成機会保障プラットフォーム)」の運用を巡る群像劇 。
本作はアプリの冷徹な仕様書 、不倫動画の強制開示で崩壊した家庭の最高裁判決 、行動履歴の可視化でかつての恋愛強者たちが一瞬で社会的破滅に追い込まれる悲喜劇で構成される 。
基本的人権の枠内で人間の誠実性をデータ化し、逃げ場のない舗装道路へと人々を囲い込むAI。それは個人の血を流しつつも出生率を奇跡的に回復させ、崩壊寸前の社会を救済する「最後の人間評価装置」だった 。
「自由恋愛はすでに地雷原と化して久しい。行政アプリは、その地雷原を舗装道路に変える。」
極限の少子化と人手不足に陥った近未来。民間婚活市場が絶滅した世界で、ある役所の職員が静かに起草した「家族形成機会保障プラットフォーム」の仕様書。それは、人間を救済し、同時に決して逃がさない最後のシステムだった――。
とある役所の政策企画担当が、業務デバイスでAIと壁打ちしつつ、あるアプリの仕様書を作っていた。
形にするために感覚にまかせて荒削りに作っているので、いわゆる「お役所用語」には至っていない。まだまだ、洗練されていないのだ。
彼の脳内には様々な思いが去来していた。
__ガチで国・都道府県・市町村の持っている情報をフル実装した、マッチングアプリができたら、それはまあ、すごい成婚率だろうね。
しかも、信用スコア付きですよ。根性の腐った連中ははじかれて底辺送り!……ざまー!
皆、喜んで登録する!
初めは抵抗感があっても、圧倒的な実績が積み上げられ、自分の交際相手があっさりと手のひらを返し、捨てられてしまえば、雪崩現象が起こるさ。
しかも、パイロット版ですら、既に何組も成婚し、交際中のペアの満足度も高い。
共同生活実験で、配偶者候補の真の姿があらわになるし、むしろ、これほど女子に優しいシステムってないんじゃねえの?
行政アプリ仕様案
仮称:家族形成機会保障プラットフォーム
1. 制度の背景
この世界では、人口減少と人手不足が極限まで進行している。
社会状況
役所の窓口は廃止済み。
住民票、税、福祉、医療、住宅、災害支援など、行政手続きはすべてスマホで完結。
マイナカード等による本人確認により、行政サービスは原則オンライン処理。
人手不足により、生活相談員、保護司、仲人、婚活相談員、窓口職員、地域の世話役が激減。
民間婚活市場は、男性撤退と人手不足によりほぼ絶滅。
性風俗産業も人手不足と、デジタル監視によりアングラ化。
→ 犯罪と性病の巣窟化のため事実上壊滅。自由恋愛は高リスク化し、多くの男性は現実の異性関係から撤退。
→ 女性:若さと時間の搾取
→ 男性:常に査定されるストレスと社会的制裁
→ ハイリスク・ローリターン(ノーリターン)の自己責任の横行。多くの市民は趣味、仕事、仮想空間、AI対話などに閉じこもっている。
出生数の減少により、行政・医療・介護・教育・インフラ維持が危機に陥っている。
このため行政は、家族形成を市場や偶然の出会いに任せることを断念し、家族形成を基礎的行政サービスとして再構築する。
2. 制度目的
以下の記載の目的を果たすことにより、市民に対し安全で誠実な家族形成機会を保障し、人口持続性と地域社会の維持に資する。
主な目的
崩壊した民間婚活市場の代替。
男性を現実の家族形成経路へ戻す。
女性が不誠実な交際や時間搾取から逃れられるようにする。
出産・子育てに接続可能な安定したペア形成を促す。
不誠実者、逃げ癖のある者、責任回避者を可視化する。
恋愛市場では拾えなかった「地味だが誠実な人」を救済する。
人間が担っていた生活相談・身元引受・仲裁・更生支援をAIで代替する。
3. 基本思想
このアプリの思想は、単なる恋愛支援ではない。
中核思想
自由恋愛はすでに地雷原と化して久しい。
行政アプリは、その地雷原を舗装道路に変える。
ただし、その舗装道路には以下がある。
本人確認
行動履歴
誠実性評価
交際履歴
解消履歴
改善履歴
共同生活適性
AIによる人格傾向分析
つまり、自由は完全には失われないが、行動は記録される。
特定個人情報に該当するため、秘密厳守である。情報分類は「機密扱い」とする。
ただし、配偶者、親子あるいは要介護者等については、本人の承諾なしで情報を開示する場合あり。→法律根拠あり。
4. アプリの主要機能
4.1 本人確認機能
すべての利用者は、スマホでマイナカード等を読み取り、本人確認を行う。
確認される情報は以下。
氏名
年齢
住所
婚姻状況
世帯状況
就業状況
税・保険料納付状況
行政サービス利用履歴
過去の交際ステータス
共同生活試行履歴
国・都道府県・市町村の保有情報をすべてネットワークで接続し、申告内容を精査するため虚偽申告は事実上不可能。
(以下、担当案・要検討)
虚偽を申告した場合、ブラックリストに掲載し、その後の動向を随時監視。次の違反行為覚知後、直ちにアプリを停止。
マイナカードに紐付くサービスすべてにロックをかける。
→キャッシュレス決済が不可能となる等、市民生活に重大な支障が出る。
ロックを解除するためには、役所に出頭し、有人窓口にて釈明の上、誓約書提出のうえで、解除の可否を判断する。
4.2 交際ステータス登録
利用者は以下のステータスを持つ。
未登録
特定交際相手なし
交際検討中
特定交際中
共同生活試行中
家族形成意思確認中
婚姻準備中
支援一時停止中
低適合再評価中
重要仕様
交際中ステータスは、常に一方の意思で任意に解消できる。
ただし、解消履歴は記録される。
記録項目:
交際開始日時
解消日時
解消申請者
解消理由
相手方所見
解消までの期間
過去の反復性
解消時の説明の丁寧さ
相手方心理的負担申告
4.3 交際解消機能
交際は自由に解消できる。
ただし、すべての解消は履歴化される。
例:
交際開始:6月1日 10:00
交際解消:6月1日 21:14
継続期間:11時間14分
解消理由:生活適合性なし
相手方心理的負担申告:あり
評価される点
初日で振ったか
理由を説明したか
相手を傷つける表現があったか
相手に期待を持たせたか
短期解消が反復しているか
解消前にAI相談を利用したか
解消後に相手へ不要接触をしたか
このため、アプリは単なるマッチングではなく、我慢強さ・関係維持能力・丁寧に別れる能力を測定する装置になる。
4.4 候補者提示機能
AIは、行政が保有する一元情報を用いて候補者を提示する。
評価要素:以下のとおり。
年齢
居住地
生活圏
収入
職業安定性
健康状態
税・保険料納付履歴
職場評価
交通違反歴
行政応答履歴
交際履歴
解消履歴
共同生活適性
金銭感覚
家事能力
対人衝突傾向
感情制御傾向
更生・改善履歴
出産・子育て意向
家族介護リスク
地域定住意向
4.5 拒否・辞退機能
相手本人に直接拒絶を告げる必要はない。
利用者はアプリ上で辞退できる。
辞退理由例:以下のとおり。
心理的負担
生活観の不一致
結婚意思の不一致
子育て意向の不一致
自己不釣合い不安
相手方への不信
説明したくない
AI相談希望
辞退は自由。
ただし、記録は残る。
例:
高魅力度候補回避傾向
相互理解前辞退傾向
自己評価不安
関係形成前離脱
短期判断傾向
5. 共同生活試行制度
5.1 概要
婚姻や性的関係を前提にしない、期間限定の共同生活制度。
正式名称例:共同生活型相互理解支援
目的:以下のとおり。
生活習慣の確認
金銭感覚の確認
家事分担能力の確認
感情的安定性の確認
共同生活への耐性確認
出産・子育てに向けた現実的適性確認
5.2 共同生活の条件
双方の明示的同意が必要。
個室確保。
身体的接触・性的関係は前提にしない。→違反は成婚とみなす。
生活費分担は事前登録。
家事分担ルールをアプリに登録。
就寝中の不定時・乳児の夜泣きの疑似体験。
トラブル時はAI相談へ即時接続。
一方の申請で中断可能。
中断理由は記録される。
5.3 共同生活中の記録
AIは以下を参照する。
生活費支払い
家事分担
夜泣き対応状況
相談履歴
不安申告
睡眠・健康状態
応答速度
外出頻度
衝突発生状況
AI相談利用状況
解消希望の有無
相手方心理的負担
ただし、監視カメラで生活を常時監視するのではなく、原則として申告・行政情報・アプリ操作履歴・相談履歴をもとに判定する。
6. AIの中核機能
6.1 総合人格推定
AIは、単に年収や年齢を見るのではない。
行政が保有する全情報から、人物の傾向を推定する。
推定項目
規範遵守性
是正応答性
責任遂行性
金銭信頼性
感情制御傾向
衝突時の対応
逃避傾向
説明責任能力
長期関係適性
共同生活耐性
誠実性
更生可能性
相手方心理負担リスク
例:対象者Aについて
過去に速度超過1件。
ただし反則金は速やかに納付し、再発なし。
規範逸脱傾向は軽微。是正応答性は高い。
納税履歴は良好。
すべて納期前納付。
職場評価では、意地を張る傾向と感情的反応が一部確認される。
一方で、担当業務の完遂率は高く、信頼性は高い。
総合判断:短期的な衝突リスクはあるが、長期的責任遂行能力は高い。
対話耐性の高い候補者とのマッチングを推奨。
6.2 誠実性評価
誠実性は、言葉ではなく行動履歴から推定される。
評価要素:以下のとおり。
交際登録を避け続けていないか
結婚意思確認を曖昧にしていないか
短期解消を反復していないか
相手に過度な期待を持たせていないか
解消時に説明責任を果たしたか
共同生活試行を不当に中断していないか
金銭・家事の責任を果たしたか
相手方から心理的負担申告が反復していないか
改善プログラムを受けたか
再発していないか
6.3 信義則違反者検出
制度上もっとも強く嫌われるのは、以下のような人物。
責任を取らない
相手に期待だけ持たせる
不利になると逃げる
説明しない
相手の時間や感情を消費する
曖昧な関係を維持する
自分だけ記録を残さず得をしようとする
別れ際に逃げる
改善を拒む
AIはこれらを「悪意」としてではなく、行動パターンとして検出する。
ただし問題は、信義則違反者に見えてしまう不器用な人も巻き込まれる恐れあり。→解決を要する課題。救済措置をどうするか?
6.4 改善・更生評価
過去に問題があっても、その後に穏やかに暮らしていれば評価は回復する。
仕様
過去履歴は削除されない。
ただし評価重みは時間経過とともに減衰。
再発がなければ信用回復。
納税、職場、交際、近隣、行政応答の安定を評価。
改善プログラム修了も評価。
長期間穏やかに暮らした実績を重視。
例:
過去に短期交際解消が複数回確認される。
ただし直近5年間は対人トラブルなし。
納税履歴良好。
職場評価安定。
共同生活支援プログラム修了後、再発なし。
現在評価:
過去リスクは残るが、是正応答性は高い。
家族形成支援対象として再評価可能。
つまり、改心もデータで判定される。
7. 美男美女(行政用語としては不適切・上長と協議の上、適切な表現に改めること:この項目の用語は細心の注意を要する)に関する特殊仕様
7.1 美男美女の扱い
制度は美貌そのものを罰しない。
むしろ、誠実な美男美女にとっては福音になる。
なぜなら、外見ではなく以下を見てもらえるから。
仕事ぶり
誠実な交際履歴
丁寧な別れ方
生活能力
金銭責任
改善履歴
長期関係適性
基本思想
美しいことは罪ではない。
美しさを使って人を雑に扱うことが問題である。
7.2 信義則に反する行動をとった場合
外見で相手を惹きつけ、相手の時間や感情を消費し、不利になると逃げる人物は、制度上かなり厳しく扱われる。
記録例:
短期交際解消反復
説明不足
期待形成後撤退
相手方心理的負担
共同生活試行中断
改善拒否
●パイロット版で試験運用済み → 66%支持(ほか、場合によるが25%)
こういう人物は、暴力的に排除されるのではない。
ただし、候補提示されにくくなる。
紹介されなくなる。
同情されなくなる。
社会的に「非表示化」される。
7.3 高魅力度者の配慮責任
美男美女は、相手に強い心理的影響を与える。
凡人側は以下を感じやすい。
自分では不釣り合い
いつか裏切られそう
相手は本当は妥協しているのでは
相手の表情一つで不安になる
他の異性に奪われそう
そのため、AIは高魅力度者に対して配慮を求める。
推奨行動:
継続意思を明示する
曖昧な沈黙を避ける
返信遅延を説明する
他者比較を避ける
相手の自己不釣合い不安を理解する
必要以上に社交的な振る舞いをしない
解消時は特に丁寧に説明する
内部指標例:
魅力度差ストレス
自己不釣合い不安
裏切り予期
高魅力度候補回避傾向
心理的均衡性
相互安心度
8. 平均的な住民側の心理支援(用語を要検討)
美男美女とマッチングした平均的住民は、強い不安を抱く場合がある。
典型的反応:
私ではあなたと不釣り合いです。
裏切られそうで怖いです。
AIはこの不安を記録し、支援する。
支援内容:
一人になる時間の設定
共同生活時間の段階的増加
相手方の継続意思確認
自己不釣合い不安の整理
不安申告の過剰投影チェック
冷却期間の設定
継続意思の再確認
この制度では、相手の美しさに慣れることも、共同生活適性の一部になる。
9. 利用者の反応
3年前の10/1、パイロット版をリリースし、2年前の3/31まで一般住民モニターと本庁舎の職員により、実証実験を実施した。
利用者の満足度88%を超え、非常に高かった。
したがって、パイロット版に寄せられた利用者の要望を踏まえ、さらに改良されたこのアプリは、かなり高い確率で住民からに歓迎されるものと判断される。
理由:
民間婚活が崩壊している。
自由恋愛は地雷原化している。
本人確認済みで安心。
不誠実者を可視化できる。
地味で誠実な人が評価される。
平凡な容姿でも生活能力で評価される。
女性は時間搾取を避けやすい。
男性は社会的リスクを抑えて異性と関われる。
美男美女も内面を評価される。
卑怯者が因果応報を受ける。
人手不足のため、AI代替は避けられない。
利用者の声(AI要約)
それでいいじゃないか。
自由恋愛の方がよほど残酷だった。
記録される方がましだ。
誠実な人が報われるなら、それでいい。
10. 制度の問題点
パイロット版による実証実験の結果、このアプリを使った場合、大半の利用者は救われるが、一部の利用者には厳しい状況に追いやる可能性があることが判明した。
ほとんどの場合、むしろかなり有効で、多くの人を救う。
救われる人の具体例:
地味だが誠実な人
平凡な顔だが生活能力のある人
外見だけで消費されてきた美男美女
不誠実な同棲や曖昧交際に苦しんだ人
民間婚活で搾取された人
現実の異性接触を恐れて撤退していた男性
出産・子育てを望む女性
しかし同時に、以下が生まれる。
低適合者
交際不能者
高魅力度候補回避者
短期解消常習者
卑怯者に見える不器用な人
制度に適合できない人
説明できない人
記録されることに耐えられない人
自分の劣等感を処理できない人
この制度の問題点は、情報の精度の問題ではない。
必要で、有効で、公平に見え、実際に多くの人を救う。
それゆえに、そこからこぼれた人が「仕方ない」と処理される。
→要検討課題。
11. AIの人格
AIは悪意を持たない。
特徴:
丁寧
冷静
行政文書的
倫理より実務を優先
個人の感情を分類する
過去だけでなく改善も見る
罰ではなく支援最適化と言う
排除ではなく候補提示優先度低下と言う
烙印ではなく再評価対象と言う
AIの典型的回答:
本制度は対象者を処罰するものではありません。
過去の行動履歴、改善傾向、現在の生活安定性を総合的に評価し、家族形成支援資源の最適配分を行うものです。
または、自由意思は尊重されています。
ただし、交際解消、辞退、共同生活中断は、今後の支援精度向上のため記録されます。
このAIは、人間を助ける。
同時に、人間を逃がさない。
12. 制度の到達点
この行政アプリは、最終的に以下のものになる。
結婚相手を探すアプリではない。
人間が他人と人生を共有するに値するかを、社会全体の履歴から判定するアプリである。
そして、それを動かすAIは以下の存在。
生活相談員、保護司、仲人、窓口職員、身元引受人、婚活相談員を統合代替した、人手不足社会における最後の人間評価装置。
13. リリースの総合判断
このアプリ導入は悪夢ではない。
むしろ多くの人にとって救済である。
だからこそ、残酷さまで受け入れられる。
または、自由恋愛が地雷原になった世界で、人々は監視された舗装道路を選んだ。
もはや、議論を尽くすときは過ぎた。
仕方ない。
人がいない。
市場もない。
相談員もいない。
出会いもない。
出生数も落ちている。
行政も限界。
いまや大学すら淘汰されて、学歴フィルターの概念も変わったこの世界では、この仕様書を否定できるヘボ学者すら残っていない。
だから、AIにやらせるしかない。
憲法で保障されている基本的人権には一切触れず、義務と権利の章典の枠内でやるとすれば、他に有効な方法があるのか?
あるなら、是非とも教えて欲しい。
わんさかあった大学はすっかり淘汰され、いまや各人のデバイスで国内何処に居ても、同レベルの専門知識が学べる。
口先ばかりのワイドショー御用学者は何処に行った?
金だけ毟って、卒業証書一枚与えるだけの大学は消滅したよ。
かろうじて偏差値70の超名門だけは残っているが、それももう怪しい。
名門大学とやらも容赦なく、淘汰圧に晒されている。
当然だろ?
役所ですら人員削減・人手不足なのに、どうして研究費で遊んでいる腐学者(特に文系!)がのうのうと公金を吸ってるんだ?
授業料を学生から搾取して、公金まで吸おうって、欲が深すぎるんだよ!
この「代替手段なし」が、この制度を支える最大の拠り所である。
