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創薬ベンチャーのM&A・IPO定点観測(2026年7月)

米国創薬ベンチャー(Biotech)を取り巻く資本市場の動向を定点観測することを目的に、「創薬ベンチャーのM&A・IPO定点観測」を始めます。

本シリーズでは、IPO件数、M&A件数、および注目案件を継続的に紹介します。


中村学
新生キャピタルパートナーズ マネージングパートナー
株式会社FREST、Chordia Therapeutics株式会社、Alphanavi Pharma株式会社、ルクサナバイオテク株式会社の社外取締役

・ IPO

IPO数の定義

こちらの記事でも米国IPOについて書きましたが、米国IPOにもいろいろあります。

その中で、この定点観測では、2026年にNasdaqへ通常の新規株式公開をした企業(NYSEおよびNYSE Americanへの上場、直接上場やSPAC上場を除く)を対象としています。

また、その中から、医薬品の研究開発を行う創薬ベンチャーをHealth Care セクターの中から抽出しています。

※本記事内のドル建て金額の円換算は、1ドル=160円で統一しています。

創薬ベンチャーのIPO数のトレンド

2020年前後のコロナウイルスの影響でBiotechのIPOは急増し、2021年には109社の創薬ベンチャーがIPOしましたが、2022年以降の金利上昇局面でBiotechのIPO数が急減、2025年は過去10年で最低の10社のIPOにとどまりました。

しかし、今年に入り、前半だけで去年の10社を上回る12社の創薬ベンチャーがIPOしました。

2026年前半は大型IPOによる資金調達が続く


4月にKailera社(抗肥満薬、6.3億ドル、約1,000億円)が、6月にParabilis社(抗がん剤、6.7億ドル、約1,100億円)など、大型の資金調達に成功する事例が続いています。

今年IPOした12社の平均時価総額は13億ドル(約2000億円)、平均調達金額は3億ドル(約530億円)です。いずれも近年では高い水準であり、IPO市場の回復を示す結果となっています。

開発フェーズは、P1が1社、P2が7社、P2b/3が1社、P3が3社といずれも臨床ステージでP2以降が大半を占めました。投資家は依然としてPOCが近い案件を選好しており、早期ステージ企業のIPOは限定的です。

対象疾患は、がん(オンコロジー)3社、免疫・炎症3社、眼科、肥満症、中枢神経(CNS)、希少疾患、心血管領域が各1社。

モダリティは、低分子7社、抗体2社、ペプチド2社、がんの放射線治療1社。

本社は、米国が10社(ボストン6社、カリフォルニア3社、シアトル1社)、ベルギー1社、デンマーク1社。

・ M&A

M&A数の定義

こちらの記事でも米国の創薬ベンチャーのM&Aについて書きました。

本定点観測では、製薬会社または創薬ベンチャーによる買収案件のうち、買収金額が公表されている案件を独自に集計しました。集計にあたっては、BioPharmaDive、Crunchbase、各社プレスリリース等の公開情報を参考にしています。

2026年上期はM&Aの大型ディールも増加


2026年上期は大型M&Aが相次ぎ、メガファーマ(Big Pharma)によるパイプライン獲得競争が一段と活発化しています。

2026年上半期、米国を中心とした創薬ベンチャーを対象としたM&Aディールは41件に達し、このうち21件が10億ドル以上の大型ディールでした。

GSKが3件、総額138億ドル(約2.2兆円)、ギリアドが3件、総額126億ドル(約2兆円)、イーライリリーが3件、総額108億ドル(約1.7兆円)など大型案件が相次ぎました。

アッビィ、ノバルティス、J&J、メルク、バイオジェンも10億ドル(約1600億円)以上の買収を行っています。

2026年上期のM&Aディール41社の平均買収金額は、21.5億ドル(約3400億円)、中央値(Median)は10億ドル(約1,600億円)でした。

上期最大のディールは、アッビィによるNasdaq上場のApogee Therapeuticsの買収(109億ドル、約1.7兆円)でした。

10億ドル以上のディール21社については、被買収企業の対象疾患は、抗がん剤が8社、免疫関連6社、希少疾患4社、CNS2社と今年IPOした創薬ベンチャーと同じような対象疾患の企業が並びます。

IPO企業と同様に、がん(オンコロジー)・免疫・希少疾患が大型買収の中心であり、市場が評価する疾患領域には共通点がみられます。

まとめ


IPO市場では大型調達案件が増え、M&A市場では10億ドル超の大型買収が相次いでおり、公開市場とM&A市場の双方で創薬ベンチャーへの資金流入が続いています。

今後は、IPO件数、調達・買収金額だけではなく、どの疾患領域、どのモダリティ、どの臨床ステージに資金が向かっているのかを継続的に分析していきます。

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