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SNSを見るたびに自己嫌悪してしまう人へ。比較グセを直すのではなく「設計」を変える技術

正直に言う。

私は、他人と自分を比べないようにしてきた。

人は人、自分は自分。
そう言い聞かせてきた。

立派な大人のつもりだった。

だが、ある朝、同年代の知人が大きな仕事を成し遂げたという知らせを見て、私の機嫌は静かに悪くなった。

理由は分かっていた。
比べたからだ。

比べないようにしていたのに、勝手に比べていた。

そして、もっと嫌だったのは、その後の自分だ。

落ち込んだ自分を、「まだ比べているのか」と責めた。

二重に疲れた。

長い間、私はこれを自分の性格の問題だと思っていた。
心が狭いのだと思っていた。

だが、本当の理由は、もっと構造的なところにあった。


比較は、性格ではなく機能である

ひとつ、はっきりさせておきたいことがある。

比較は、あなたの性格の欠陥ではない。

それは、人間に最初から組み込まれた機能だ。

大昔、人は群れで生きていた。
群れの中で、自分が今どの位置にいるか。
それを常に測れる個体が、生き残った。

位置を測れなければ、いつ追い出されるか分からない。
追い出されれば、死んだ。

つまり、比較は生存のためのセンサーだった。

問題は、このセンサーが、現代の環境を想定していないことだ。

昔、人が比較する相手は、せいぜい半径数十メートルにいる数十人だった。

今は違う。

手のひらの中に、世界中の成功者が並んでいる。
スクロールするたびに、誰かの最高の瞬間が流れてくる。

センサーは、相手の数を制限できない。

だから、際限なく作動する。

比較は、心の弱さではない。
最適化されていない、古い機能である。


私たちは、平均と戦っているのではない

ここで、もう少し構造を解剖したい。

タイムラインに流れてくるものを、思い出してほしい。

そこにあるのは、他人の日常ではない。

他人の、選び抜かれた瞬間だ。

人は、うまくいった日を投稿する。
昇進、結婚、達成、絶景。

うまくいかなかった日は、投稿しない。

つまり、タイムラインとは、全人類の最高の瞬間だけを集めた、編集済みの総集編だ。

ここに、構造的な不公平がある。

あなたは、自分の人生を、ノーカットで生きている。
退屈な月曜も、報われない努力も、全部込みで。

そして、その自分を、他人の総集編と比べている。

これは、勝てるはずがない。

自分のメイキング映像と、他人の予告編を比べているようなものだ。

予告編は、面白いところしか入っていない。

ここで、最初の切り分けが要る。

あなたが落ち込んでいる相手は、その人本人ではない。

その人が編集した、その人の一番いい部分だ。

あなたが負けているのは、誰かの人生ではない。
誰かの、編集後のハイライトである。


通知は、相手の事情で鳴る

もうひとつ、見落とされがちな構造がある。

比較は、自分のペースでは起きない。

通知が鳴ったとき、起きる。

つまり、誰かが投稿したタイミングで、あなたの心は揺れる。

これは、主導権が自分にないということだ。

あなたが心穏やかでいられるかどうかが、他人の投稿スケジュールに握られている。

これを冷静に見ると、かなり奇妙な状態だ。

自分の機嫌の管理を、会ったこともない他人に外注している。

私はこれを、自分の感情の単一障害点だと考えるようになった。

ひとつの通知で、一日が崩れる。
それは、構造として脆い。

ここで、よくある対処の落とし穴がある。

「もっと自分に自信を持てばいい」という助言だ。

これは、ほとんど効かない。

なぜなら、自信があっても、センサーは作動するからだ。

自信は、比較を止めない。
比較された後の、傷の深さを少し浅くするだけだ。

止めるべきは、気持ちではない。
構造だ。

具体的には、第一に、通知をこちらの意思で開く設計に変える。鳴ったから見るのではなく、見ると決めたときに見る。

第二に、比べる相手を、半径三メートルに戻す。世界中の成功者ではなく、自分が直接顔を知っている数人に。

第三に、比較が起きたら、それを止めようとせず、ただ「センサーが作動した」と名前をつける。

落ち込みは、消そうとすると居座る。
名前をつけると、少し動く。


ただし、比較を悪者にしすぎるな

ここで、自分のセンサーを過信してもいけないし、敵視してもいけない。

比較を、完全な悪だと決めつけるのも、また間違いだ。

比較があるから、人は成長することがある。
あの人のようになりたいという気持ちは、比較から生まれる。

問題は、比較そのものではない。

比較が、応援ではなく、自己否定に変わる瞬間だ。

同じ「すごいな」でも、二つある。

ひとつは、「すごいな、自分も少しやってみよう」という応援混じりの比較。
これは、自分を前に進める。

もうひとつは、「すごいな、それに比べて自分は」という自己否定の比較。
これは、自分を削る。

センサーの作動は止められない。
だが、その後にどちらの線路へ進むかは、選べる。

人を責めるより、構造を見る。
そして、自分を責めるより、構造を見る。

分からない人の事情は、分からないまま抱える誠実さがいる。

ここで、三つの問いを置きたい。

第一に、あなたが今比べている相手の、つらかった日を、あなたは知っているか。知らないなら、それは総集編だ。

第二に、その比較は、あなたを前に進めているか、削っているか。削っているなら、線路を変えるサインだ。

第三に、もしこの世にSNSがなかったら、あなたは今日、その人と自分を比べただろうか。比べないなら、それは構造が生んだ比較だ。


比べてしまう、優しい人へ

最後に、構造から少し離れた話をしたい。

私は今でも、ときどき他人と比べて落ち込む。

五十代になっても、なくならない。

だが、ひとつだけ変わったことがある。

落ち込んだ自分を、もう責めなくなった。

「ああ、また古いセンサーが鳴ったな」と思うだけだ。

そう思えるようになってから、二重の疲れは消えた。

そして、もうひとつ気づいたことがある。

他人と比べて落ち込める人は、たいてい、優しい人だ。

人の幸せを、ちゃんと幸せだと感じられるから、比べてしまう。
どうでもいい相手のことは、比べようとも思わない。

だから、比べて疲れるあなたは、心が狭いのではない。
人の良いものを、良いと感じられる目を持っているだけだ。

その目を、これからは自分にも向けてあげればいい。

他人の総集編と、自分のノーカット版を、もう同じ画面に並べなくていい。

あなたの人生は、編集前のまま、もう十分に価値がある。

比較は、あなたの欠陥ではない。
古い時代から続く、生き延びるための機能である。

だから、その機能と、戦わなくていい。
ただ、設計を変えればいい。

優しいまま、壊れないこと。
それは、根性ではなく、設計の問題である。


他人と比べて落ち込んでしまうのは心の弱さや性格の欠陥ではなく、現代の環境に最適化されていない古い「生存機能」が誤作動しているに過ぎません。

自分のノーカットの日常と、他人の編集されたハイライトを同じリングに並べるのをやめ、通知や情報の入り口という「構造」をそっと設計し直すこと──それこそが、優しいままで心身をすり減らさないための最善の知恵なのです。

気合や根性ではなく構造として自分を運用する。人を責めるより、構造を見る。自分を責めるより、構造を見る。優しいまま、壊れないこと。誰かに勝つ輝きではなく、自分を壊さず誰かを少し安心させられる光。短期評価ではなく長期残存価値である。

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