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48+2 ③

続きです。
最近、ふと手が伸びていくアルバムを選んでいることに気づきました。
今回長めです。


21. ASIAN KUNG-FU GENERATION - 君繋ファイブエム

やっぱり僕は初期衝動が好きみたいで、アジカンはこのアルバムを選びたくなってしまう。正直『ファンクラブ』とめちゃ迷った。あっちは凝った曲が多くて、頭を使って聴くような感覚で、それはそれで好きだ。それでいて『ワールドアパート』とか入ってるし。
対してこのアルバムは、ストレートなギターサウンドにゴッチの喉を削るような歌がかぶさり、骨太なベースとソリッドなドラムが重なる。まさしく若き日のアジカンが爆発している。なので、あまりこまごまここがいいと語りたいアルバムではない(もちろん語れるポイントはたくさんある)。
お気に入りは『未来の破片』と『アンダースタンド』、『E』。『未来の破片』は、パンキッシュなリフとクリアなアルペジオのコントラストが響く、このアルバムのサウンドをぎゅっと詰め込んだような一曲。『アンダースタンド』では心の軋みを抱えた日々を、繰り返し肯定してくれる。そして『E』では、アウトロでoasisの "Live Forever" のギターソロがほぼそのまま演奏されている。「このソロを弾けなかった頃の初心を忘れない」という想いで、インディーズ時代の音源をそのまま入れたらしい。個人的にこのリスペクトの示し方は好きだし、アーティストへの憧れが次の世代に継承されていくのは素敵だと思う。

22. w.o.d. - 感情

神戸発、ネオグランジバンドの4th。全曲1発録り。
3rdまでの荒削りな衝動性は少し収まり、内に熱を帯びつつも新たな顔を見せる一作。しかし、強い歪みでドライブするベースをはじめ、彼らの鍵になるサウンドは変わらない。強いて言うなら、「疾走する30分」から「鳴らす30分」になった気がする。さっき書いたように僕は初期衝動が大好きなので、選ぶアルバムに迷ったのは言うまでもない。
このアルバムを選んだ理由は、彼らのさまざまな顔が見えるから。『Kill your idols, Kiss me baby』を聴けばわかるように、彼らの根本にあるものはグランジで変わりない。その上で、『バニラ・スカイ』では藤原基央のような美しい情景描写、『Sunflower』ではマイブラのようなギターサウンドの中に揺蕩うメロディーを感じることができる。『馬鹿と虎馬』では前作までと地続きの、ダンサンブルなドラムの上で絡み合うギター/ベースも健在だ。
いい意味でグランジ・ロックの精神性に縛られることなく、サウンドの新境地を開いたw.o.d.。サイトウタクヤ(gt./vo.)の言う、「本来、俺らってこう言う人間よな?」という感覚は忘れずにいたい。

23. カネコアヤノ - 祝祭

素直に、あまりにも曲がいい。
柔らかな始まり、『ホームアローン』では、ひとりでの暮らしに慣れてきたことを自分に言い聞かせるかのように歌う。そしてタンバリンと等身大の言葉が楽しい『恋しい日々』が続く。ひとりだからやることは多いけど、その分愛しい時間が流れる。
『ジェットコースター』での、「君が笑ってくれるなら この街も悪くはないね」という詞。東京という場所についてのこう言った視点は嬉しい。と同時にそりゃそうだよな、そうであってくれとも思う。東京生まれの僕にとって、この場所は一過性でも非日常でもない故郷だ。幸か不幸か、この忙しない街に思い出も思い入れもある。だから、「東京」的なものが苦手な人だとしても、そこに息づく人を見て「街」を捉え直してくれるのは嬉しい。
パワフルな『ロマンス宣言』、アウトロのボルテージが最高な『カーステレオから』が続き、アルバムの大団円を飾るアンセム、『アーケード』へ。大きな声で歌いたい、ライブ映像のカネコはその声に負けないくらい力強く歌ってくれている。卒業するまでに行きたい。
本当のラスト、『祝日』は弾き語りだ。これからの話をしよう。なんでもない日に祝祭を、出来ないことも少しずつ。

24. ひとひら - つくる

American Football直系の美しいアルペジオと、シューゲイズ的轟音がアイコニックなひとひら。『つくる』は彼らの美味しいところを全部詰めたアルバムで、『つくる』(曲のほう)はまさに静と動のダイナミクスでアルバムを象徴する曲だ。シームレスに『国』につながり、気づけば2曲を通り過ぎている。ブラッシングが気持ちいい『風船』、タイトルと裏腹にシンセサイザーのフェードインから清涼感のあるサウンドが広がる『ここじゃない地獄』、夏の夕暮れを思わせるギターリフが沁みる『here』などが続く。
さいごに『こわす』。こわすためつくっている。「命がある」と叫ぶ直後に始まる音の壁には、彼らの影響元のDNAがしっかりと刻まれている。
このアルバムはあっという間だ。ただでさえ35分しかないのに、流れゆくギターの上を揺蕩うようなハイトーンボーカル、足元をしっかり支えるリズム隊に気を取られていると、気づいたときには大団円『こわす』にいる。それこそライブで見ると、とにかく圧倒されて終わる。是非体験して欲しい。

25. Bon Iver - Bon Iver, Bon Iver

繊細なフォークロック。柔らかなシンセの電子音とともに、澄んだ空気のようなサウンドが広がる。青々とした森の香りと朝方のまだ少し冷たい空気を鼻から吸い込んだときのような清涼感は、きっとこのアルバムが作られたウィスコンシンのそれなのだろう。遠く離れたここ日本でも、心地よく鳴り響く。日曜の朝とかに聴きたい。
ボン・イヴェールことジャスティン・ヴァーノンにとっての「春」。
バンドの離散、恋人との別れ、病。彼を癒すのは、生まれ育った故郷だった。ゴスペルの如く折り重なるコーラスワーク、柔らかに響くギター、ヴァーノンのファルセット、エレクトロニカ、そして全体を包みこむアンビエンス。カナダにほど近い北部の自然豊かな州から、穏やかな時間が届く。

26. Dos Monos - Dos Atomos

フリージャズ・プログレを経由し、ハードコアの衝動を抱える。ガチでかっこいい。
サンプリング主体のオルタナティブ・ヒップホップを展開してきた、荘子it、没、TaiTan。彼らDos Monosは新たなフェーズを迎え、バンド形態として新たな試みに挑む。black midiからMorgan Simpson、D.A.N.から市川仁也ほか、彼らの突き進む音楽と隣り合うジャンルからミュージシャンが参加。その共鳴が新たなサウンドを作り出す。
そのサウンドは近未来性をはらみ、それでいて油断ならない重心の低さを持ち、常に爆発しそうな衝動性を抱えている。その上で、スタイルの違う3人のMCがマイクリレーを繰り広げる。気の抜ける瞬間が一切ない。
とにかくかっこいい。その一言に尽きる。

27. The Smashing Pumpkins - Mellon Collie and the Infinite Sadness

長尺のアルバムと言ったら真っ先にこれ。
幻想的なピアノインスト "Mellon Collie and the Infinite Sadness"に始まり、いきなり集大成のような "Tonight, Tonight"に入る。響くアルペジオ、ストリングスの織りなす美しいメロディーはまさに天国みたいだ。そこから重たく歪む "Jellybelly"、"Zero"が続き、ギャップに喰らわされる。"Here is No Why"の勇壮なギターソロから大サビに繋がる展開はみんな大好きだし、 "The world is a bampire"という印象的な一言から始まる"Bullet With Butterfly Wings"ではビリーの世界への諦観が音の壁に乗る。こんな調子で曲が続いていくもんだから、とても書き切れたもんじゃない。"An Ode To No One"の刻みとドラム、"Galapogpos"の美メロ、"Thirty-Three"でのアコギの響き。
アンセムとしての"1979"に触れたい。シンガロングではない。心の中に密かに抱える焦燥とか、不安とか、自分の人生に対する客観とかを描き出すアンセムだ。淡々としているのに抑揚がある、不思議な曲だ。
時折ベッドで、日々を生きることの虚構性について考えることがある。基本楽しく生きているが、そんな日々が幻のように思え、空を掴むような手探り感が訪れる。目の前の日々の現実味がなくなる感じ。自らの「楽しい」という感情の出どころであったり、他人としての友人の存在であったり、いずれそれぞれの形で終わりを迎えることであったりが頭を過ぎる。"1979"を聴いていて、その感覚を思い出した。
大体そういう時、僕は人生は夢見心地でありたいなあと思いながら眠りにつく。なんとなく、希望を持ちながら生きるというのは、そういうことのような気がする。

28. andymori - andymori

「和製リバティーンズ」とはよく言ったもので、確かにカラッとしたギター、よく動くベース、アップテンポなドラムは彼らを思わせる。『everything is my guitar』とかまさに。にしてはうますぎるけど。
小山田壮平(vo./gt.)の歌がうますぎる話をしたい。ちょうどクリアとハスキーの中間のような声質で、ピッチは音の中心を捉えたように安定的で、時折ねじれるように歪む。この声があるから、フォークに近いスローチューンも、ガレージロックも、一定の色彩を保って僕らの耳に届く。曲調の幅はあるのに、乱高下しない。
等身大の楽曲が並び、あくまでメロディーランインはポップ。その中に、バックパッカーとして世界を見た彼の経験からくるのであろう、針のような詞が潜む。その意味を大仰に語るのは何か違う気がして、ただ自分が生きていく日々の一部として受け止める。

百貫デブにはサプリメントを
有色人種にはマシンガンを

『FOLLOW ME』

29. Tyler, the Creater - CHROMAKOPIA

あなたこそが光。母の言葉は偉大だ。
ジャケットにいるTylerは、世間の目に合わせる仮面の姿。このアルバムでは、それらからの解放を切に望む。
世間から認められるにつれ、要求されるものが増える。Para"Noid"(被害妄想)であることを示すM3では、セレブリティとして衆目に晒される日々の中、ノイローゼになった彼の姿が。アイデンティティを押し殺した彼は、この時仮面を被ってしまった。
身勝手な部分も同時に。M5"Hay Jane"では、彼が誤って妊娠させた女性を突き放した過ちを描く。
ただ、人は多面的である。M9では自らを含む多くのペルソナから心の内を語り、「仮面を外す」方向に動く。M10では自らの性格を俯瞰し、殻に閉じこもらず世間に折り合いをつける方法を探る。M11ではJaneについて、him=「Tylerの最低な父」と自らを並べ、懺悔する。過去が消えるわけでは無いけど、それが彼にできるせめてもの償いなのだろう。
逃げずに芯を持ち、やるべきことをやる。そこに立ち返ったTylerにとって、母の言葉は再び意味を持ったのではないか。
彼はかなり人間的だと思う。マッチョイズムの強いHip-Hopの世界で彼が認められるのは、その才能もさることながら、人としてのリアルさも一役買っているのだろう。
ほぼ触れてこなかったが、サウンドも圧巻。特にアルバムのイントロを飾るM1-M3の流れは組曲のような完成度を誇る。ぜひ聴いてみてほしい。
自らの現在地を確認した彼の物語は、「ガラスの画面からの解放」へと続いていく。

You are the light
It's not on you, it's in you

St. Chroma (feat. Daniel Caesar)

30. boygenius - the record

LPで聴きたい1枚。Phoebe Bridgers、Julien Baker、Lucy Dacusの3人のソングライターが集い、至高のメロディーを編み上げる。10年代後半から続く、フォークと接続したUSインディーシーンの結晶。
M1、3人の美しいアカペラから始まる。やわらかな広がりをもつ3人の声が、ベルベットのようなハーモニーを紡ぐ。あなたの、わたしの、互いの物語を届けようと語りかけてくる。
M2, "$20"、幕を開けるミドルテンポのロック。ライブではハードさを増すのも魅力だ。
M4, "True Brue"、透き通る清涼感。"You say you're winter bitch but summers's in your blood"という一節が好き。
M6, "Not Strong Enough"、1人であること、自分であること。アコースティックギターのストロークとともに3人がリードを歌い繋ぐ、離別の歌。
M13, "Letter To An Old Poet"。穏やかさをもって始まったアルバムは、思わぬ不安定さで幕を閉じる。通常の再生媒体では、一応の締めくくりとしてCコードに収束する。Phoebeが歪な関係性から抜け出したかのように。
しかしLPで聴くと、彼女の終わらない逡巡を表すかのように不協和音が循環する。聴き手が自ら針をあげ、その空間を脱する時に、はじめてこのアルバムは終わる。

思うがままに書いてたら長くなりました!
過去記事!

あと2本ほど書くつもりです!

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