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「やめてもいい環境で、なぜ世界トップになれるのか」— アリサ・リウと森秋彩に共通する“伸びる構造”

トップを取る人ほど、「やめてもいい環境」にいるのはなぜだろうか。

フィギュアスケートの世界トップ、アリサ・リウ。
リードクライミングで世界をリードする、森秋彩。

トップを取り続けてきた2人だが、
一度、その競技から離れている。

そして、自分の意思で競技に復帰した。
そこには、
スケートを心の底から楽しむ姿
登ること自体を心の底から楽しむ姿

があった。

そして驚くことに「楽しみ」ながらも結果も残している。

なぜそんなことが起きたのか。
競技は違っても、
そこには共通した“ある構造”があった。

そしてそれは、子どものやる気にも、そのまま当てはまる。


1  共通した“ある構造”

共通の構造 それは、

・結果や他人ではなく「滑ること自体」「登ること自体」が“楽しい”という状態に戻ったこと

・競技との距離を取り、向き合い方が変わったこと


2  「勝たなきゃ」を手放したときに起きた変化

アリサ・リウ

幼い頃から結果を期待され続けてきた彼女は、
「勝つこと」に強く縛られていた。

しかしある時、
• 勝つことばかり考えるのをやめた
• 純粋にスケートを楽しみたい


と考えるようになる。
その後の演技は変わった。
表現に余白が生まれ、
結果として、演技の質や表現が大きく変わった。

森秋彩

彼女もまた、大きな転換を経験している。

インタビューでこう語っている。
• 「東京オリンピックの前は、他人との闘いばかりに心が揺れてしまって、自分を失っていた。」
• 「競技は勝つためにやっているのではなく、今は登ることそれ自体が楽しい。」

つまり、

結果や他者に意識が向いていた状態から、
“登ることそのもの”へと意識が戻った。


3 なぜ「結果を手放す」と伸びるのか

① 注意の向きが変わる

例えばテストで、
「いい点を取らなきゃ」と思うと、
人は、点数や周りの目に意識が向く。

一方で「この問題を解きたい」と思うと、
問題そのものに集中できる。



これをクライミングで考えると、
「落ちたくない」と思って登ると、
手足の動きが固くなり、次の一手も見えにくくなる。
「どうやって登るか」に集中していると、
体のバランスや指の感覚に気づける。



つまり、
自分のズレに気づけるかどうかが変わる。

ズレに気づければ修正できる。
気づけなければ同じミスを繰り返す。
→結果、上手くなる速さが変わる。


② 行動の選び方が変わる

「失敗したくない」と思っていると、
人はできる問題ばかり解こうとする。
• 解ける安心感はある
• でも、ほとんど成長しない

一方で「解けるようになりたい」と思っていると、
少し難しい問題にも手を出す。
• 間違える回数は増える
• でも、できることが増えていく



クライミングでも同じで、
「落ちたくない」と思うと、
安全なルートばかり選ぶ。
「登れるようになりたい」と思うと、
落ちるかもしれない課題にも挑戦する。

テニスやバドミントン、剣道などの対人スポーツでも、「負けたくない」と思うと、
勝てそうな相手としか試合をしなくなる。
一方で「成長したい」と思えば、
強い相手と試合をしてみたいと思うだろう。



この差が何を生むか。
圧倒的な、経験量だ。

うまくなる人は、
特別なことをしているわけではない。
ただ、挑戦している回数が多い。


③ 続けられるかどうかが変わる

「やらなきゃ」と思ってやることは、
どうしても疲れる。
• やるたびにエネルギーを使う
• どこかで止まる

一方で「やりたい」と思ってやることは、
• 気づいたら時間が過ぎている
• 何度でもやろうとする

例えば子どもが、
• ゲームは何時間でもできるのに
• 宿題はすぐに疲れる
この違いと同じ。



クライミングでも、
「やらされている」と感じていると続かない。
「登りたい」と思っていると、何度でも壁に向かう。

つまり、
続けられるかどうかが変わる。
続けた時間が長い方が、うまくなるのは当然だ。

この3つを一言でまとめると

• ① 気づけるか(修正)
• ② 試せるか(挑戦)
• ③ 続けられるか(時間)

👉 この3つが揃ったとき、人は一気に伸びる。


4  なぜ2人はそれを実現できたのか

ここが最も重要な共通点。

競技との距離を取り、向き合い方が変わったから。

森秋彩の具体的な転換

森秋彩は、
結果を求め続けることに疲れ、クライミングから距離を置いた時期がある。
その間、彼女は
“本当に心から登りたい”と思ったときだけ登る
という関わり方に変えた。
すると、
• 「やらなければならない」が消えた
• 義務感がなくなった
• 「登りたい」という感覚が戻った

そして、
もう一度、“好き”から登れる状態に戻った。


ここで起きていること
• 外側の基準(結果・評価)を外す
• 行動を「やりたい時だけ」にする


すると、内側の動機だけが残る。



子どもに置き換えるとどうなるか
この構造は、そのまま日常にある。

よくある逆効果の関わり
• 「最後までやりなさい」
• 「せっかく続けてきたのにもったいない」
• 「ここで辞めたら意味がない」


一見正しい。
しかし実際には、やめる自由を奪っている。

その結果、何が起きるか
• やる理由が「やらされる」に変わる
• 失敗を避けるようになる
• 行動量が減る


つまり、主体性が止まる。
人は、「やめられないもの」を好きにはなれない。

5 主体性が戻る条件


森秋彩の例が示しているのはこれ。

「やってもいいし、やらなくてもいい」

この状態になったとき、初めて問われる。
「それでもやりたいか?」
そして残るもの
• 見栄 → 消える
• 義務 → 消える
• 比較 → 弱まる

残るのは、純度の高い“好き”だけ。


6 親が設計すべきもの


やる気ではない。
やる気が生まれる構造」を設計することが大切。

①結果ではなくプロセスを見る

「勝った?」ではなく
→「どう感じた?」

我が家では、「登れたかどうか」ではなく
「挑戦しているか」「どう工夫したか」を見るようにしている。
例えば、「何級を登れたか」「何位だった?」
ではなく
→「難しそうな課題にも挑戦していたね」
→「登る前によく見て考えてから登ってたね」
→「面白い課題あった?」

すると、
・登れないと思う難しい課題→ チャレンジする
・他人を見て落ち込む → 自分のやり方を考える
・結果にこだわる → 過程に集中する
という変化が起きた。

そして結果的に、本人からの「登りたい!」
が増え、続ける力そのものが上がった。

②他人との比較を減らす

比較は主にこの3つで発生する。
・評価軸が外にある :  点数、順位、他人の成果
・進んでいる実感がない :  自分の成長が見えない
・ゴールが曖昧 : 何を目指しているか不明確

→ この状態だと、脳は
「他人を基準にするしかない」と判断する。

比較を減らすには
・他人と無関係の評価軸をつくる
・成長を見える形にする
・比較するなら「過程」に限定する
といった設計が重要。

※詳しくはこちら


③やめる自由を残す

「やめる自由」は、単なる“甘やかし”ではなく、
主体性・継続力・挑戦意欲を支える土台。
むしろこれがないと、
短期的には頑張れても、長期的には伸びにくくなる。

※主体性を壊さない“やめる自由”の設計については、別の記事で詳しく書きます。

7 まとめ

アリサ・リウと森秋彩は、

• 競技との距離を取り
• 結果や他人から意識が離れ
• 「滑っている時間そのものが楽しい状態」
「登っている時間そのものの喜び」が戻ってきた

その結果、「好き」で動く状態に入った。

子どもが伸びるかどうかは、能力ではない。
どの動機で動いているか。

そしてその動機は——
「やめてもいいかどうか」で決まっている。



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