羊社長、ついに出航!黒子企業と共に挑む大海原〜羊社長の投資日記 〈第5話〉
こちらは「羊社長の過去の歩みを記録した投資日記」です。
時は2019年秋から年末にかけて。
現在は「王道となっている高配当人気株」も「あれだけ不当に安かった…」そんな驚きと発見や、思い出話のネタになれば、嬉しく思います。
第4話までのおさらい
目先のチャートに一喜一憂し、買いポジションでは「上がれ!」売りポジションでは「下がれ」と呪文を唱えていた暗黒時代は終わりました。
投資の初心は「日本を応援すること!」
その心は、「日本は価値ある国で世界になくてはならない存在。だから必ず復活する!」そんな思いに違いありませんでした。
「日本株市場」という海に眠る割安株の宝

「さあ、どの企業にワタクシの命の血 (手取り10数万円から絞り出した貯金)を託すか……!」
四畳半の自室でPCを開いたワタクシの眼前には、世界の投資家から見向きもされない「不人気・日本株市場」という潮の引いた浅瀬が広がっておりました。
そこは「PBR1倍割れ」のオンパレード。株価指標の「割安」が当てにならない世界でした。
たとえば、企業が持っている資産が100億円でも、株価は50億円(PBR0.5倍)なんて安値で取引されている、そんな状況がむしろ普通であるような市場です。
ところで、ワタクシは、短期売買で心を振り回され、自分らしさを見失ったことを大いに反省していましたから、もう二度と相場に振り回されない、と自分に誓いを立てました。
それ故、どうせ個別株を買うのであれば、「損切しようか?どこでしようか?」などと悩まずに済む道を模索しました。
つまり「上がれ〜!下がれ〜!」と呪文を唱えて、怒りや絶望に右往左往することのない「平和な投資法」でございます。
それがこの羊社長の看板でもある「逆張り・損切ゼロ・バリュー株投資法」に他なりません。
そして、何事も極端に大風呂敷をひろげる性格のワタクシは、ある1つのアイデアを思いつきました。
💡「100年経っても潰れない企業」に投資しよう!(そうすれば「損切り」なんて考えなくて済むはずだ)
それからこう考えました。
日本は伝統的にモノづくりに長けた国。
たとえば「世界経済を陰から支える、強靭なる技術やノウハウを持った職人企業」を探すのはどうだろう?
あるいは、モノづくりを円滑に行うための「道筋(ネットワーク)」を整えるインフラ企業を探すのはどうだろう?
イマジネーションには我ながら妙な説得力がありました。
しかし、どうやってそんな企業を見極めるのか?
数百、数千もの企業群から、相場1年目の初心者が数銘柄を見つけ出すのはとても至難の業です。
そこでワタクシは、一風変わったアプローチを思いつきました。
企業の価値を「人間社会(生存活動)の基本動作」に還元する
企業の決算書やビジネスモデルを見るとき、ワタクシはそれを「人間の根本的な動作=動詞」にまで削ぎ落として考えてみることにいたしました。
「この会社は、人類のどんな行動を肩代わりしているのか?」
時代がどう変わろうと、テクノロジーがいかに進化しようと、人間が地球上で生きている限り「絶対に失われない物理的な動作」が存在するはずです。
消費の枠組みが「モノ(物質的経済)からコト(情報経済)へ」と変わり、市場がITサービスや半導体ばかりに熱狂していても、現実世界では人間が身体を持って生きている。
ならば、その「動詞」を極めた企業は、100年経っても絶対に潰れないはずだ——!
そう直観したワタクシは、頭に「文明の灯火のごとき動詞リスト」を描き、銘柄選びを開始したのでございます。
では、そんなコンセプトのもと、四畳半部屋で興奮しながら買い集めたら愛すべき企業の代表例をリストアップしてみます。
当時の羊が愛した「100年先も残るオールスターズ」
<グループA:モノづくりを支える黒子企業>
🧵 1. 東レ — 「編む/紡ぐ」を極めた繊維業発の化学メーカー

東レの本質は、古来より人類が続けてきた「編む」「紡ぐ」という営みの究極系です。
特に魅了されたのはボーイングの機体にも採用されている「炭素繊維(カーボンファイバー)」でした。
「鉄の7倍強く、4倍軽い」という夢のような触れ込み。
これは単なる素材ではなく、次世代の材料革命そのものではないか!
当時、ワタクシの脳内ではイマジネーションが爆発しておりました。
「自動車から航空機、そして宇宙船に至るまで、次世代のイノベーションを支える新素材を見つけたぞ!分子レベルの技術継承が生み出す圧倒的な参入障壁こそ、100年続く技術継承の極みに違いない!」
「将来、バック・トゥ・ザ・フューチャーのデロリアンみたいな空飛ぶ車が出てきた時、その車体を支えるのは東レの炭素繊維なのではないか?」
「SFに出てくる宇宙エレベーターは『カーボンナノチューブ』で出来ているらしい。それって炭素繊維の延長のようなものかもしれない……」
……青臭い夢かもしれません。しかし、こうした歴史を塗り替える素材を「紡ぐ」技術こそが、未来を拓くのだと胸を躍らせたのでございます。
ちなみに、東レについてはトランプショック以前に保有しており、この「企業価値を動詞に還元する」というアイデアのきっかけとなった銘柄です。
⛏️ 2. コマツ(小松製作所) — 「掘る」「運ぶ」「均す」「伐る」なんでも我々にお任せあれ!

※右半分は羊の未来予想図です。
常に地球の地層と対峙し、文明社会のインフラを根底から作る圧倒的な動詞集団。
泥にまみれながら大地を「掘り」、土砂を「運び」、整地のために「均し」、時に森を「伐る」。
彼らが作る黄色い建機は、文明の土台そのものです。
さらに、アナログな現場力と通信技術(KOMTRAX)を融合させたその姿に、職人魂と革新の完璧な調和が見てとれます。
「数十年後、コマツの建機が月面や火星の地表で動き回る光景が必ず訪れるだろう!」
なんと夢が縦横無尽に広がることでしょう。
ちなみに、コマツは対人地雷除去機も生産しており、命を守る仕事もしている点も、株主としての誇りを満たしてくれる銘柄です。
🏍️ 3. ヤマハ発動機 — 「乗る愉しみ」を追求する職人集団

単に移動するだけでなく、人間が風を感じ、移動そのものを楽しむ「乗る」という体験を極めた企業。
二輪車から船外機、あるいは水上オートバイまで、地球上のあらゆるフィールドで「移動の歓び」を支えています。
バイクはオワコン、日本でバイク乗りなんか滅多にいやしない。
そんな偏見の目にさらされながら、バイクで培った技術力を高収益の船外機ビジネス(マリン事業)に活かし、海外売上高比率90%以上というグローバル企業に成長した姿に胸を打たれました。
⚙️ 4. 日本精工(NSK) — 軸受なしには何も「回せない!」

あらゆる機械の回転部分に入り込み、摩擦を極限まで減らすベアリング(軸受)の最大手。
自動車も、電車も、風力発電の風車も、ベアリングがなければ1秒たりとも動かすことができません。文明の車輪を「回す」ための潤滑油。
目立たぬ場所に宿る神業、これぞ黒子の真骨頂です!
それなのに…なんという低PBRでしょう…。
パッとしない業績。底辺を這う株価。
見ていると胸が潰れそうに切なくなり、不条理な思いに駆られて購入ボタンを押しました。
あの時は思いもよらぬことでしたが、この銘柄、今ではフィジカルAI関連として俄に注目を浴びる存在となっております。
<グループB:ヒトとモノをつなぐ黒子企業>
ワタクシは、製造業だけでなく「つなぐ」という動詞を担うインフラ企業にも目を向けました。
特に強調しておきたいポイントは、バフェットより先に目をつけた「商社株」の逆張り投資でございます(ここは百万回言いたいです!資産は彼の百万分の一以下かもしれませんが…)。
🤝 1. 双日 — 道はない。道はつくれ。(New way, New value)

当時の日本はグローバリズム全盛期。モノ余りのデフレ下で「商社なんてただの抜き取りの中抜き業者、オワコンだ」などと冷ややかに見られていた時代です。
しかし、ワタクシは納得がいきませんでした。
世界中に足を運び、泥臭く現場に入り込み、複雑な利害を調整しながら「ヒトとモノ、市場と市場をつなぐ」総合商社は、日本で独自に発達した特有のビジネス文化です。
これこそ、互いの調和を重んじる「日本的精神=和」の体現者なのではないか!そう確信して双日を購入いたしました。
ちなみに、当時は同じ商社株の丸紅も保有しておりました。今になってみれば、三井物産や三菱商事など、すべての商社株を購入しておけばよかったのに…後悔先に立たず…でございます。
🏦 2. 三菱UFJフィナンシャル・グループ — 「資本と資本をつなぐ」大動脈

そして最後は、金融経済の心臓部であるメガバンク。
当時はマイナス金利政策の渦中で、「銀行は金利が稼げずオワコン」「ネット銀行に駆逐される」と散々な評価を受けておりました。
しかし、決算書や事業構造を冷静に見れば、日本のメガバンクは超低金利の国内を横目に、海外進出を着々と進めて右肩上がりに成長していたのです。
経済の血液である「資本」を産業全体に巡らせ、成長企業と資本をつなぐ銀行というビジネスが、そう簡単に無用の長物になるはずがない。あまりにも不当に低評価されている惨状を見て、「これは千載一遇の買い場だ」と買いボタンを押しました。
ポイントは、三菱UFJ銀行に思い入れがあったというよりは、銀行というビジネスモデル自体に投資をする、という戦略でした。
銀行株貯金――メガバンクに預金をするぐらいなら銀行株を買え!
ワタクシは頭のなかで、自分自身にそんな言葉を投げかけました。
駆け出し投資家の発見〜金融政策とマクロ経済の動向に目を向ける
興奮冷めやらぬまま、これら銘柄の長期チャートを俯瞰して、ワタクシはある共通点に気づきました。
「どの株も、(わずかな例外を除き)2018年の年初前後をピークに右肩下がりで売り込まれている……!」

出典:Investing.com

出典:Investing.com

出典:Investing.com

出典:Investing.com

出典:Investing.com
※株価のピークが後にズレた少しだけ例外です。

出典:Investing.com
これは偶然ではない、ワタクシはそう思いました。
「そうか!自分は世界景気の変動を受けやすい『景気敏感株』ばかりを買い集めるクセがある。そういう銘柄はことごとく〝似たようなカーブを描いて〟上下するのか…。マクロ経済の波って想像以上に強烈だ…」
ワタクシが調子に乗って景気敏感株ばかりを買い集め、その後の下落相場で市場の洗礼を受けたことは以下の記事でお伝えしたとおり。
その経験を経ていたワタクシは、どんなに優れた企業であっても、世界景気の波や市場の感情(センチメント)によって、買われすぎる時期と投げ売りされる時期を交互に繰り返す——。
そんな法則性があることを、それなりに理解できるようになっていたのでございます。
続けてワタクシは思いました。
「これ…絶好のチャンスではないかしら?」
つまり、今目の前で起きている惨状は、企業そのものが壊れたわけではなく、「景気サイクルの底」に落ち込んでいるだけなのではないか?
逆にいえば、「景気サイクル」が切り返してくれば、株価も上昇トレンドを描く可能性が極めて高い——そんな想像が容易にできたというわけです。
当時の世界経済を客観的に振り返ると、ワタクシの分析は相応に的を射ていたことが分かります。
特に大きかったのが、FRB(米連邦準備制度理事会)の動向でございます。
FRBとは「米国の中央銀行」にあたる存在ですが、実質的には “世界経済に張り巡らされたマネーという血液を押し出す巨大な心臓(ポンプ)そのもの” です。
つまり、FRBが政策金利を上げ下げし、資金の蛇口を締めたり緩めたりすることで、世界の金融環境やリスク資産に向かうマネーの流れに大きな影響を与えます。
なるほど、当時の世界経済を振り返ると、
「米中貿易摩擦の激化」
「2018年まで続いた米国のFRBによる利上げ・金融引き締めの余波」
「世界的な製造業の景気サイクルの落ち込み(半導体・自動車の調整)」
——そんな三重苦の真っ只中にありました。
そして、ワタクシはほくそ笑みました。
「マクロ経済の循環や一時的な貿易摩擦でどんなに売られようと、人間社会が動いている限り『掘る』『回す』『つなぐ』という文明の灯火が消えることはない。短期の景気循環(シクリカル)の底で放置されている今こそ、100年企業を安値で仕込む絶好のチャンスではないか!」
投資シナリオの召喚〜点と点を線でつなぐ
実は、過去の投資日記でも触れていた通り、米中貿易戦争の泥沼化が連日ニュースを騒がせていたまさにその最中、市場では密かに異変が起きていました。
打ちのめされていたはずの「景気敏感株」たちが、すでに底を打ち、スルスルと上昇に転じ始めていたのです。
「なぜ世間が悲観論一色の中で、株価は上がり始めているのだろう……?」
その違和感を抱えていたワタクシの頭の中で、「FRBの利下げ開始」という事実と「景気敏感株の不気味な底打ち」という現象が、一瞬にしてつながりました。
「そうか……! 巨大な金融ポンプが緩み始めたことで、市場の先読み部隊はすでに景気サイクルの反転を織り込み始めていたのか!」
米中貿易摩擦という表面的な悪材料に惑わされ、世間が怯えている影で、金融サイクルの転換をとらえたスマートマネーはすでに動き出していた——。
「利下げサイクル開始」と「株価の底打ち」。この強烈な連動性を肌で理解した瞬間、四畳半の自室でワタクシは膝を打ちました。
「マクロの引き潮は終わり、すでに満ち潮が始まっている。今こそ、放置された割安株を拾い集める完璧なタイミングだ!」
霧が一気に晴れ渡り、目の前に鮮烈な「上昇相場のシナリオ」が「未来への確信」を伴って、虹を架けたのでございます。
それはまるで黄金郷を見つけた航海士のような心境でした。

まとめ : 第5話の振り返り〜羊の視点
損切したくないなら、100年先も潰れない(とイメージできるような)企業に投資しよう
潰れない企業は「人間社会が絶対に必要とする活動(文明の灯火)」に還元することができる(羊の仮説)
PCやスマホの画面の情報世界だけでなく、現実の物理世界も支える黒子企業こそ強靭である
世間が「オワコン」と決めつけて放置している時こそ、本質的な価値を見抜く好機である
大きなシナリオを描くときは、個別企業よりもマクロ経済環境への視点を軸にしよう
「イマジネーション(世界観)」と「マクロ経済環境への眼差し」というアイデア勝負で選んだワタクシの初期ポートフォリオ。
買付を終えたあと、不思議な充実感に満たされ、用事もないのに散歩に出かけたくなったのを覚えております。
街で工事現場のショベルカーを見かけても、銀行の看板を目にしても、街を走るバイクを見ても、それらすべてが「自分の大切な資産であり、応援している日本の未来」に見えてきたのです。
それは、四畳半の部屋で安逸を貪っていた過去の自分と決別し、外の世界に目を向け始めた「目覚め」に違いありませんでした。
さあ、オールスター陣容を揃えた羊社長。
ここからバラ色の投資ライフが始まる……はずでした。
しかし、相場の神様はそれほど甘くはなかったのでございます。
✏️(予告)次回以降のエピソード…
次回、第6話。
「完璧なポートフォリオを組んだぞ!」と意気揚々の羊社長を襲う、市場の嵐。
「そんなバカな!?」
初心を試される羊が、いかにして「損切りゼロ」の精神的境地に達したのか……。
どうぞお楽しみに!
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