第7回:新テーマの技術動向をPerplexityで調べる:論文・企業発表・公的資料への入口を作る
新しい技術テーマを任されたとき、最初に困るのは「どこから調べるか」です。
論文から入るのか。
特許から見るのか。
企業のニュースを見るのか。
規制や政策を先に確認するのか。
それとも、まず市場動向をざっくり見た方がよいのか。
研究開発の仕事では、この入口を決めるだけでも時間がかかります。
Googleで検索すると、情報はたくさん出てきます。
ただ、企業ページ、ニュース記事、解説記事、論文、特許、公的資料が混ざります。
ひとつずつ開いて読んでいるうちに、気づけば半日経っている。
それなのに、上司に説明できるほど整理できていない。
こうした場面は、研究開発ではよくあります。
一方で、ChatGPTにいきなり聞くと、文章はきれいに返ってきます。
ただ、最新情報や出典が気になります。
研究開発では、「それらしい説明」だけでは判断材料にしにくいです。
そこで使いやすい入口のひとつが、Perplexityです。
Perplexityは、技術動向、企業動向、規制、政策、ニュースなどを調べるときの入口として使いやすいAI検索ツールです。
ただ、ここで大切なのは、Perplexityを「答えを出すAI」として使わないことです。
研究開発者にとってのPerplexityは、最終判断を任せる相手ではありません。
調査の入口を作り、確認したい出典を探し、次に確認する論点を整理するための補助ツールです。
前回は、NotebookLMで論文PDFを比較し、要約で終わらせず判断材料に近づける方法を扱いました。
今回はその前段として、技術動向調査の入口をどう作るかを扱います。
研究開発者がPerplexityを使って技術動向を調べるときの基本的な考え方と、実務で使いやすい依頼文の型を整理します。
1. この記事で扱うこと
この記事では、Perplexityの細かい機能紹介ではなく、研究開発の実務でどう使うかを扱います。
特に、次のような場面を想定します。
新しい技術テーマの全体像をつかみたい
競合企業や関連企業の動きを調べたい
論文調査に進む前のキーワードを見つけたい
特許調査に進む前の企業名や技術用語を整理したい
規制、政策、標準化の動きを確認したい
上司に説明する前に、論点を整理したい
若手に調査を依頼する前に、調査範囲を決めたい
この記事のゴールは、Perplexityだけで技術判断を完了することではありません。
まずは、調査の入口を作ること。
次に、出典を確認すること。
最後に、自分の研究テーマに関係する論点を整理すること。
この流れを作ることを目指します。
2. 研究開発者の困りごと
研究開発では、「調べる」と言っても、単なる検索では終わりません。
たとえば、新しい材料技術を調べる場合を考えます。
知りたいことは、ひとつではありません。
どのような技術領域なのか
なぜ最近注目されているのか
主要な研究機関はどこか
どの企業が動いているのか
量産化や実用化の課題は何か
競合技術には何があるのか
規制や標準化の動きはあるのか
自社のテーマと関係しそうな点はどこか
次に論文や特許を調べるなら、どのキーワードがよいのか
これらを一つずつ検索していくと、時間がかかります。
しかも、検索結果を読んでいるうちに、最初の目的を忘れがちです。
「いろいろ読んだが、結局何が分かったのか」
「どの情報が信頼できそうなのか」
「上司には何を報告すればよいのか」
「この技術は、自分たちのテーマに関係あるのか」
ここが曖昧なまま、調査メモだけが増えていきます。
40代・50代の研究開発者や技術管理職になると、自分で調べるだけではなく、若手やメンバーの調査結果を確認する機会も増えます。
そのときにも、同じ問題が起きます。
調査範囲が広すぎる
出典の質がばらばら
企業発表と第三者記事が混ざっている
論文、特許、ニュースの位置づけが整理されていない
技術的な事実と市場の期待が混ざっている
結論が強すぎる
逆に、何を判断したいのか分からない
技術動向調査は、情報収集よりも、整理の方が難しい仕事です。
Perplexityは、この最初の混乱を少し軽くできます。
3. AIを使うと何が変わるか
Perplexityを使うと、技術動向調査の最初の一歩が変わります。
これまでは、検索キーワードを考え、検索結果を開き、ページを読み、またキーワードを変えて検索する。
この作業を何度も繰り返していました。
Perplexityを使うと、最初に次のような形で全体像を取りに行けます。
技術領域の概要
主要な論点
関連する企業や研究機関
最近のニュースや発表
代表的な出典
追加で調べたいキーワード
論文、特許、規制など次に確認したい情報源
つまり、Perplexityは「答え」をもらうためではなく、「調査の地図」を作るために使います。
ここが大事です。
研究開発者が知りたいのは、AIがまとめたきれいな文章そのものではありません。
知りたいのは、次にどこを確認したいかです。
どの出典を確認するか
どの企業名で調べ直すか
どの技術用語をキーワードにするか
どの論文を読むか
どの特許分類や出願人を確認するか
どの論点をChatGPTで整理するか
どこを上司に報告するか
このように、Perplexityは研究開発ワークフローの最初に置くと使いやすいです。
Perplexityで技術動向の入口を作る
↓
出典を確認する
↓
論文、特許、企業資料、公的資料に戻る
↓
NotebookLMで資料を読む
↓
ChatGPTで論点や比較軸を整理する
↓
技術報告書や上司説明資料に落とすPerplexityだけで完結させない。
この考え方を持っておくと、研究開発でも使いやすくなります。
4. 今回使うツール
今回使う主なツールは、Perplexityです。
Perplexityは、Web上の情報を探しながら、回答を文章でまとめてくれるAI検索ツールです。
回答には出典が示されることが多く、技術動向や企業動向を調べる入口として使いやすいです。
研究開発で使う場合、向いているのは次のような作業です。
新しい技術テーマの入口調査
最近の企業発表の確認
規制や政策の動きの確認
技術キーワードの洗い出し
レビュー論文や解説記事の候補探し
競合技術の概要把握
調査したい観点の整理
一方で、Perplexityが出した回答をそのまま技術判断に使うのは避けたいです。
出典を確認します。
一次情報に戻ります。
日付を確認します。
企業発表なのか、第三者記事なのかを分けます。
論文や特許に進む場合は、元資料を見ます。
Perplexityは、あくまで調査の入口です。
5. 無料または会社支給ツールでできること
技術動向調査の入口づくりは、無料または会社支給ツールでも十分に始められます。
最初から高機能な有料環境をそろえなくても、公開情報を対象にして、次のような使い方ができます。
新しい技術領域の概要をつかむ
最近のニュースや企業発表を探す
主要な企業や研究機関の名前を把握する
論文検索に使うキーワードを作る
特許検索に使う出願人名や技術用語を探す
公的機関や業界団体の資料を見つける
上司説明前の論点を整理する
たとえば、次のようなテーマで試せます。
次世代電池材料の技術動向
バイオベース樹脂の最近の研究開発動向
水素関連部材の耐久性評価に関する動向
半導体材料の低温プロセス技術
自動車部品におけるリサイクル材料の採用動向
医療機器向け樹脂材料の規制動向
CO2削減に関する製造プロセス技術
ここで大切なのは、社内テーマ名や顧客名をそのまま入れないことです。
たとえば、次のように抽象化します。
避けたい依頼:
A社向け次期開発品X-17の耐久性改善に使える表面処理技術を調べてください。
使いやすい依頼:
自動車用部材の耐久性改善に関係する表面処理技術の最近の動向を、公開情報ベースで整理してください。避けたい依頼:
当社のバイオ系新規テーマであるBプロジェクトに関係する競合企業の動きを調べてください。
使いやすい依頼:
バイオ系材料開発における企業の研究開発動向を、公開情報をもとに整理してください。AIに聞きたいのは、社内の秘密そのものではありません。
まず知りたいのは、技術領域の全体像、キーワード、主要プレイヤー、論点です。
ここに絞れば、公開情報だけでも十分に練習できます。
6. 上位プランや法人プランで広がること
上位プランや、他のAIツールと組み合わせると、技術動向調査はさらに深くできます。
たとえば、次のような使い方です。
複数の技術テーマを比較する
出典候補を多めに集める
論文やPDFの確認につなげる
調査結果をChatGPTで報告書構成に変える
NotebookLMで論文や資料を読み込む
Microsoft Copilotで社内向け資料に整える
チーム内で調査フォーマットを統一する
ただ、上位プランや法人プランを使えば自動的に調査品質が上がるわけではありません。
大事なのは、依頼の出し方です。
「この技術について教えてください」だけでは、一般的な説明で終わりやすいです。
研究開発で使うなら、何のために調べるのか、どの範囲まで調べるのか、どの出典を重視するのかを指定したいです。
AIへの依頼文は、検索キーワードではなく、調査依頼書に近いものです。

7. 実際の手順
ここからは、研究開発者がPerplexityで技術動向を調べるときの基本手順を整理します。
手順1:いきなり検索せず、調査目的を決める
まず、何のために調べるのかを決めます。
たとえば、目的によって聞き方は変わります。
新規テーマの入口をつかみたい
上司への報告材料を集めたい
競合技術を把握したい
論文調査に進む前のキーワードを探したい
特許調査に進む前の企業名や技術分類を探したい
市場や規制の影響を確認したい
目的が曖昧なまま聞くと、回答も広がりすぎます。
最初は、次の一文を入れるだけでも変わります。
私は研究開発部門で新規テーマの初期調査をしています。この前提を入れると、単なる一般解説ではなく、研究開発者向けの整理に寄せやすくなります。
手順2:技術領域を広めに聞く
最初から細かい条件で聞くより、少し広めに聞く方が入口としては使いやすいです。
バイオベース樹脂の技術動向について、
研究開発者が最初に把握したい論点を整理してください。
特に、
- 主要な技術領域
- 最近注目されている用途
- 主要企業や研究機関
- 技術課題
- 次に調べたいキーワード
を公開情報ベースで整理してください。この段階では、完璧な答えを求めません。
確認したい方向を決める。
検索キーワードを増やす。
主要な出典候補を見つける。
このくらいで十分です。
手順3:回答をそのまま信じず、出典を見る
Perplexityの回答で一番見たいのは、文章そのものよりも出典です。
確認したいのは、次の点です。
その出典はいつ公開されたものか
企業発表なのか、論文なのか、ニュース記事なのか
一次情報なのか、二次情報なのか
研究開発の判断に使える情報か
古い情報が混ざっていないか
出典の内容とAIの要約が合っているか
特に技術動向では、日付が大事です。
5年前の有望技術が、今も有望とは限りません。
逆に、最近のニュースだけ見ていると、技術的な成熟度を見誤ることもあります。
出典は、日付と性質を分けて見たいです。
手順4:一次情報に戻る
技術動向調査で使いやすい出典には、いくつか種類があります。
企業の公式発表
研究機関や大学の発表
公的機関の資料
規制当局や業界団体の資料
学術論文
レビュー論文
特許公報
学会発表資料
専門メディアの記事
この中でも、重要な判断に使う場合は、一次情報に戻りたいです。
企業動向を見るなら、企業の公式発表を確認します。
規制を見るなら、規制当局や公的機関の資料を確認します。
研究内容を見るなら、論文や学会資料を確認します。
権利関係を見るなら、特許公報を確認します。
Perplexityの要約は入口です。
研究開発者の仕事は、その先の確認にあります。
手順5:論点を分ける
技術動向調査では、いろいろな情報が混ざります。
技術的にできること
量産でできること
コスト面で成立すること
規制上求められていること
市場が期待していること
企業が宣伝していること
論文で示されたこと
特許で押さえられていること
これらを混ぜると、判断が難しくなります。
Perplexityで情報を集めたら、次のように分けて整理すると使いやすいです。
この技術動向について、以下の観点に分けて整理してください。
1. 技術的に確認されていること
2. まだ課題として残っていること
3. 企業が発表していること
4. 論文や研究機関で示されていること
5. 規制や政策の影響
6. 研究開発テーマとして確認したい論点このように分けると、上司に説明しやすくなります。
手順6:次の調査につなげる
Perplexityで入口を作ったら、次の作業につなげます。
たとえば、次のような流れです。
出てきたキーワードで論文検索をする
重要そうな論文PDFをNotebookLMに入れる
主要企業名で特許検索をする
技術課題をChatGPTで整理する
報告書の骨子を作る
上司説明用に3点でまとめる
Perplexityで終わらないことが大切です。
Perplexityで調べる。
NotebookLMで読む。
ChatGPTで整理する。
Copilotで資料に落とす。
この流れを作ると、技術動向調査が単なる検索ではなく、研究開発の判断材料に近づきます。
8. 技術動向調査プロンプト
ここからは、実務で使いやすい依頼文の型を置いておきます。
そのまま使うよりも、自分の業務に合わせて少し直して使う方がよいです。
社内情報、顧客名、未公開テーマ名、特許化前のアイデアは入れず、公開情報または抽象化した表現に置き換えてください。
プロンプト例1:技術動向調査の標準版
私は研究開発部門で新規テーマの初期調査をしています。
以下の技術テーマについて、公開情報をもとに技術動向の入口を整理してください。
技術テーマ:
【ここに技術テーマを入れる】
調査目的:
【例:新規研究テーマとして検討するため】
【例:上司への初期説明資料を作るため】
【例:論文調査や特許調査に進む前の論点を整理するため】
整理してほしい内容:
1. 技術の概要
2. 最近注目されている理由
3. 主な用途
4. 主要な企業・研究機関
5. 技術課題
6. 実用化・量産化に向けた課題
7. 関連する規制・政策・標準化の動き
8. 次に調べたいキーワード
9. 確認したい出典の種類
10. 追加で深掘りしたい論点
出典について:
- 企業の公式発表、論文、公的機関資料、ニュース記事を分けてください
- 可能な範囲で情報の日付を確認してください
- 一次情報に戻りたいものを明記してください
注意:
- 断定しすぎず、不確かな点は「追加確認が必要」と書いてください
- 事実、推測、見解を分けてください
- 技術判断の結論ではなく、調査の入口として整理してくださいこのプロンプトのポイントは、最初から「結論」を求めていないことです。
技術が有望かどうかをAIに決めてもらうのではなく、判断するために何を確認したいかを整理してもらいます。
プロンプト例2:競合企業の動きを見る
以下の技術領域について、公開情報をもとに企業動向を整理してください。
技術領域:
【ここに技術領域を入れる】
知りたいこと:
1. この領域で動いている主な企業
2. 各企業が発表している技術や製品の方向性
3. 共同開発、提携、投資、量産化に関する動き
4. 研究開発上の課題
5. 競合技術との違い
6. 自社で追加調査するときの観点
出典の扱い:
- 企業の公式発表とニュース記事を分けてください
- 情報の日付を確認してください
- 企業発表をそのまま事実として扱いすぎないでください
- 技術的に確認できていることと、企業が訴求していることを分けてください
注意:
- 事実と推測を分けてください
- 不明な点は不明と書いてください
- 最後に、次に確認したい一次情報を挙げてください企業動向を見るときは、企業発表をそのまま技術的事実として扱わないことが大切です。
企業が「実用化に向けて開発中」と発表していても、量産条件、コスト、耐久性、規制対応まで見えているとは限りません。
ここは研究開発者の目で確認したいです。
プロンプト例3:論文調査に進む前のキーワードを作る
以下の技術テーマについて、論文調査に進む前のキーワード候補を整理してください。
技術テーマ:
【ここに技術テーマを入れる】
出してほしいもの:
1. 日本語キーワード
2. 英語キーワード
3. 関連する技術用語
4. 近い意味で使われる用語
5. 除外した方がよさそうな曖昧なキーワード
6. レビュー論文を探すときの検索式候補
7. 主要な研究分野や学会領域
8. 代表的な研究機関や著者を探すための観点
目的:
新規研究テーマの文献調査の入口を作ることです。
注意:
- 用語の意味が広すぎる場合は、その理由も書いてください
- 検索ノイズが多くなりそうなキーワードは分けてください
- 最初にレビュー論文を探す場合の進め方も提案してください論文調査に入る前にキーワードを整えておくと、後の作業が楽になります。
特に英語キーワードは重要です。
日本語では同じ言葉でも、英語では複数の表現に分かれることがあります。
逆に、英語の専門用語を知らないまま検索すると、重要な論文にたどり着きにくくなります。
プロンプト例4:特許調査に進む前の入口を作る
以下の技術テーマについて、特許調査に進む前の入口情報を整理してください。
技術テーマ:
【ここに技術テーマを入れる】
整理してほしい内容:
1. 関連しそうな技術キーワード
2. 近い意味で使われる表現
3. 想定される用途
4. 関連しそうな企業・出願人
5. 特許検索で使えそうな日本語キーワード
6. 特許検索で使えそうな英語キーワード
7. 調査時に注意したい観点
8. 知財部門に相談する前に整理しておくとよい論点
注意:
- 特許の権利判断はしないでください
- あくまで検索入口の整理にしてください
- 出願人名や技術用語は、公開情報で確認できる範囲にしてください
- 不確かな点は「要確認」と書いてください特許はAIだけで判断するものではありません。
ただ、知財部門に相談する前に、どの技術用語で調べるか、どの企業を見ておくか、どの用途が関係しそうかを整理しておくと、相談の質が上がります。
プロンプト例5:上司報告前に論点を整理する
以下の技術動向について、上司に5分で説明するための論点を整理してください。
技術テーマ:
【ここに技術テーマを入れる】
整理してほしい内容:
1. 何が新しいのか
2. なぜ今注目されているのか
3. 技術的に有望な点
4. まだ不確かな点
5. 競合や企業動向
6. 規制・政策・市場動向の影響
7. 自社テーマとの関係を考えるときの確認観点
8. 次に調べたいこと
注意:
- 研究開発者向けに、技術判断に使える形で整理してください
- 出典確認が必要な点を明記してください
- 断定ではなく、確認したい仮説として書いてください
- 上司に判断してほしい事項を最後に整理してください上司説明では、情報量よりも「何を判断してほしいか」が大切です。
Perplexityで調べた情報をそのまま並べるのではなく、確認できたこと、不確かなこと、次に調べることに分けると説明しやすくなります。
9. 出典評価テンプレート
Perplexityを使うときは、出典の確認が大切です。
出典があるから安心、ではありません。
出典が適切かどうかを見たいです。
以下のような形で、出典を1件ずつ簡単に評価しておくと、後で見返しやすくなります。
出典評価メモ
出典名:
【記事名、論文名、企業発表名など】
URLまたは文献情報:
【リンク、DOI、企業ページ名など】
公開日:
【年月日】
出典の種類:
【企業公式発表 / 論文 / 公的機関資料 / 業界団体資料 / ニュース記事 / 解説記事 / その他】
一次情報か二次情報か:
【一次情報 / 二次情報 / 不明】
この出典で確認できること:
【事実として確認できる内容を書く】
この出典だけでは分からないこと:
【技術条件、量産性、コスト、規制、実験条件など】
技術判断に使える度合い:
【高い / 中程度 / 低い / 判断保留】
注意点:
【企業PR色が強い、古い、技術詳細がない、論文ではない、など】
次に確認する出典:
【論文、特許、公的資料、企業公式資料など】これを毎回きっちり書くのは大変です。
ただ、重要な出典だけでもこの形で残しておくと、報告書にするときに助かります。
特に、次のような情報は出典評価を残しておきたいです。
技術が実用化されたという情報
量産開始、商用化、採用事例に関する情報
規制や政策に関する情報
企業の大型投資や提携に関する情報
研究成果や性能値に関する情報
特許や知財に関係しそうな情報
技術動向調査では、情報の新しさだけでなく、出典の性質が重要です。
企業発表は、企業の意図が入ります。
ニュース記事は、分かりやすく整理されていますが、技術の細部は省かれることがあります。
論文は技術的な根拠を確認しやすい一方で、実用化や市場性までは分からないことがあります。
公的資料は、規制や政策の確認に向いています。
この違いを分けておくと、AI検索の結果を技術判断につなげやすくなります。
10. Before / After:依頼文で出力は変わる
Perplexityを使うとき、依頼文が短すぎると、一般的な説明で終わりやすいです。
たとえば、次のような聞き方です。
バイオベース樹脂の最新動向を教えてください。これでも概要は返ってきます。
ただ、研究開発の実務で使うには、少し足りません。
どの用途を見たいのか分からない
論文を重視するのか、企業動向を重視するのか分からない
規制や政策を見たいのか分からない
出典をどう評価すればよいか分からない
次に何を調べればよいか分からない
研究開発で使うなら、次のように変えます。
私は研究開発部門で、バイオベース樹脂の新規テーマ探索をしています。
バイオベース樹脂について、公開情報をもとに技術動向の入口を整理してください。
特に知りたいこと:
1. 最近注目されている用途
2. 主要な企業・研究機関
3. 技術的な課題
4. 量産化・コスト・耐久性に関する課題
5. 関連する規制や政策の動き
6. 論文調査に進むための英語キーワード
7. 特許調査に進むための企業名や技術用語
8. 次に確認したい一次情報
注意:
- 企業発表、論文、公的資料、ニュース記事を分けてください
- 断定しすぎず、不確かな点は「要確認」としてください
- 技術判断ではなく、調査の入口として整理してくださいこのように書くと、AIの回答も「技術動向調査の下書き」に近づきます。
プロンプトは、気の利いた命令文ではありません。
研究開発の仕事として考えるなら、AIへの調査依頼書です。
11. 出力結果のチェックリスト
Perplexityの回答を読んだあと、次の観点で確認しておくと安心です。
出力チェックリスト
□ 回答に出典が示されているか
□ 出典の日付を確認したか
□ 企業公式発表とニュース記事を分けたか
□ 論文や公的資料に戻る必要がある情報を分けたか
□ 技術的な事実と推測が混ざっていないか
□ 「実用化」「量産化」「採用」などの言葉を出典で確認したか
□ 古い情報が混ざっていないか
□ 最近のニュースだけに偏っていないか
□ 自社テーマとの関係を断定しすぎていないか
□ 次に調べたい論文、特許、企業資料が見えているか
□ 社内情報、顧客名、未公開テーマ名を入力していないか
□ 特許化前のアイデアを具体的に入力していないかこのチェックリストは、個人で使ってもよいですし、チームの調査レビューにも使えます。
特にマネージャーの場合、メンバーの調査結果を見るときに、次の3点だけでも確認するとレビューしやすくなります。
1. 出典に戻れるか
2. 事実と推測が分かれているか
3. 次に確認したいことが書かれているかAIの回答がきれいかどうかより、この3点の方が大事です。
12. 失敗しやすいポイント
Perplexityは便利ですが、研究開発で使うときには失敗しやすいポイントもあります。
失敗1:回答文だけ読んで満足する
Perplexityの回答は読みやすいです。
ただ、読みやすい文章ほど、そのまま信じたくなります。
研究開発では、回答文より出典を見たいです。
特に、技術の優位性、規制、企業動向、量産化、コスト、特許に関わる話は、元情報を確認しておくと安心です。
失敗2:出典の種類を混ぜてしまう
企業のプレスリリース、ニュース記事、論文、公的資料は、意味が違います。
企業発表は、その企業の見せたい情報が中心です。
ニュース記事は、分かりやすく整理されていますが、技術の細部は省かれることがあります。
論文は技術的な根拠を確認しやすい一方で、実用化や市場性までは分からないことがあります。
公的資料は規制や政策の確認に向いています。
出典の性質を分けずにまとめると、判断がぶれます。
失敗3:最新情報だけを見てしまう
技術動向では、最新ニュースは大事です。
ただ、最新ニュースだけでは、技術の積み上がりが見えません。
研究開発では、最近の発表と過去の研究を両方見たいです。
最近何が話題になっているか
これまで何が課題だったのか
その課題は本当に解決されたのか
論文や特許ではどこまで示されているのか
この流れで見ると、流行に振り回されにくくなります。
失敗4:社内テーマをそのまま入れてしまう
これは特に注意したいです。
社内プロジェクト名、顧客名、開発品名、未公開の技術課題、特許出願前のアイデアを、そのままPerplexityに入れるのは避けたいです。
公開情報を調べるだけなら、テーマを一般化しても十分です。
たとえば、次のように置き換えます。
顧客名
特定業界、特定用途社内製品名
対象部材、開発品、試作品未公開の材料名
材料A、材料X、ポリマー系材料詳細な配合や条件
一般化した技術課題出願前の発明
公開済み技術に近い一般課題
AIに聞く前に、どこまで公開情報として扱えるかを確認したいです。
13. 守秘・知財・社内利用上の注意
研究開発でPerplexityを使うときは、守秘と知財の線引きを明確にしておきたいです。
特に、次の情報は入力を避けたいです。
社内プロジェクト名
顧客名、取引先名
未公開の実験データ
開発中の材料名や配合
試作品名、社内サンプルID
特許出願前のアイデア
共同開発テーマの詳細
契約に関わる情報
社内の技術課題や失敗データ
社外秘の報告書や会議メモ
Perplexityに限らず、AIツールを使うときは、会社の利用ルールを確認しておきたいです。
会社で利用が許可されているか。
個人アカウントで使ってよいか。
入力情報がどのように扱われるか。
社内資料を入れてよい環境か。
ログや保存の扱いはどうなっているか。
このあたりは、情報システム部門、知財部門、法務部門、研究開発部門のルールに従います。
技術動向調査では、公開情報だけでも十分にできることがあります。
まずは、公開情報を使って調査の入口を作る。
社内情報は入れずに、一般化したテーマで聞く。
出典を確認し、必要に応じて社内の専門部署に相談する。
この流れにしておくと、AIを使いやすくなります。
14. マネージャー視点で見ると
グループマネージャーや技術管理職にとって、Perplexityは個人の検索効率化だけではありません。
チームの調査品質をそろえる道具として使えます。
若手に技術動向調査を依頼すると、調査の粒度がばらつくことがあります。
ある人は論文中心に調べます。
ある人は企業ニュース中心になります。
ある人は検索上位の記事だけでまとめます。
ある人は情報量は多いが、結論が見えません。
これは能力の問題というより、調査の型が共有されていないことが原因の場合があります。
Perplexityを使うなら、チームで次のような型を決めておくと進めやすいです。
調査目的を最初に書く
技術領域を一般化して入力する
出典を必ず確認する
企業発表、論文、公的資料、ニュースを分ける
日付を確認する
事実、推測、仮説を分ける
最後に「次に調べること」を書く
社内情報や未公開情報は入力しない
特にマネージャーが見たいのは、AIの回答そのものではありません。
見たいのは、メンバーがどの出典を確認し、どこまでを事実とし、どこからを仮説として扱っているかです。
AIを使わせる場合でも、提出物に次の項目を入れてもらうとレビューしやすくなります。
技術動向調査メモ
1. 調査目的
2. 調査対象の技術領域
3. 使用した主な検索キーワード
4. 主な出典
5. 確認できた事実
6. まだ不確かな点
7. 自社テーマとの関係
8. 次に確認したいこと
9. 守秘・知財上、入力を避けた情報
10. 上司に判断してほしいことこれだけでも、調査報告の質はそろえやすくなります。
AIを使ったかどうかより、出典を確認したか。
きれいな文章かどうかより、判断に使える整理になっているか。
マネージャー視点では、ここを見たいです。
15. まとめ
Perplexityは、研究開発者にとって技術動向調査の入口として使いやすいツールです。
ただ、Perplexityだけで調査を完了させるものではありません。
使い方の基本は、次の流れです。
Perplexityで入口を作る
↓
出典を確認する
↓
一次情報に戻る
↓
論文、特許、企業資料を読む
↓
ChatGPTやNotebookLMで論点を整理する
↓
技術報告や上司説明に落とす研究開発で大事なのは、AIの回答をそのまま使うことではありません。
AIが出した整理をもとに、自分で確認し、判断することです。
40代・50代の研究開発者には、この確認する力があります。
どの情報が怪しいか。
どこが言い過ぎか。
どの出典を見ればよいか。
この判断は、経験があるからこそできます。
Perplexityは、その経験を置き換えるものではありません。
むしろ、経験を使う前段の情報整理を助ける道具です。
まずは、公開情報だけを使って、自分の業務に近い技術テーマで試してみます。
出典を見ながら、どこまで使えるかを確認します。
そこから、NotebookLMやChatGPTと組み合わせて、技術報告やテーマ探索につなげます。
このくらいの距離感で始めると、研究開発の実務でも使いやすいです。
これまでの記事
この連載を初めて読む方は、こちらも参考になります。
第0回:AIが苦手な研究開発者へ。この連載で伝えたいこと
https://note.com/rd_ai_note/n/n25b5a8a92ff5第1回:AIが苦手な40代・50代研究開発者へ
https://note.com/rd_ai_note/n/n14a457c99776第2回:主要AIツールを研究開発目線で使い分ける
https://note.com/rd_ai_note/n/n89155bc03f64第3回:AIへの依頼文は“業務依頼書”です
https://note.com/rd_ai_note/n/n13b0e60384bd第4回:研究開発でAIに入れない方がよい情報
https://note.com/rd_ai_note/n/n358222c00e77第5回:論文・特許・実験データにはどのAIを使うとよいか
https://note.com/rd_ai_note/n/n1fa436425443第6回:NotebookLMで論文PDFを比較する
https://note.com/rd_ai_note/n/n38f968eb2d35
次回予告
次回は、NotebookLMとChatGPTを使って特許公報を読む方法を扱います。
特許公報は、論文とは読み方が違います。
請求項、実施例、課題、効果、競合技術との差分をどう整理するか。
AIに何を手伝ってもらい、どこから先は人間や知財部門と確認するか。
研究開発者が特許公報を読むときの、現実的なAI活用を整理していきます。
