第2回 主要AIツールを研究開発目線で使い分ける
この記事で扱うこと
AIツールが増えすぎて、結局どれを使えばよいのかわかりにくくなっています。
ChatGPTは聞いたことがあります。
会社ではMicrosoft Copilotが入ってきました。
論文PDFならNotebookLMがよいと聞きます。
最新情報ならPerplexityが便利らしい。
Gemini、GitHub Copilot、Codexという名前も見かけます。
ここで迷うのは自然です。
AIツールが多すぎるうえに、どれも「何でもできそう」に見えるからです。
ただ、研究開発者にとって大事なのは、ツール名を覚えることではありません。
大事なのは、次のように考えることです。
論文調査には何を使うか。
特許調査には何を使うか。
実験データ整理には何を使うか。
技術報告書には何を使うか。
チーム運営には何を使うか。
この記事では、ChatGPT、Microsoft Copilot、NotebookLM、Perplexity、Gemini、GitHub Copilot、Codexを、研究開発の実務目線で整理します。
一般的なツール紹介ではなく、論文、特許、実験データ、技術報告、チーム運営にどう結びつけるかを扱います。
全部を一度に使いこなす必要はありません。
まずは、自分の仕事のどこに置くと少し楽になるかを、一緒に見ていきます。
研究開発者の困りごと
研究開発の仕事では、単に情報を集めればよいわけではありません。
論文を読むときは、要約だけでなく「自分の研究テーマに使えるか」を見たいです。
特許を読むときは、請求項、実施例、競合との差分を整理したいです。
実験データを見るときは、Excelに入れる前の前処理、異常値、測定条件の違いを確認したいです。
技術報告書を書くときは、結果だけでなく、結論、根拠、限界、次の打ち手まで整理する必要があります。
さらに、40代・50代の研究開発者や技術管理職になると、自分の作業だけでは終わりません。
若手の調査結果をレビューします。
チームの実験計画を見ます。
上司や役員に技術テーマを説明します。
知財部門や事業部門と連携します。
チーム全体の仕事の進め方を整えます。
このような業務では、「便利そうなAIをなんとなく使う」だけでは不十分です。
むしろ、AIツールが増えすぎると、次のような問題が起きます。
どのAIに何を頼むべきかわからない
ChatGPTに最新情報を聞いてしまう
Perplexityの出典を確認せずに使ってしまう
NotebookLMに資料を入れたから正しいと思い込む
Copilotを資料作成AIとしてだけ見てしまう
実験データをAIに入れてよいか判断できない
チーム内でAIの使い方がバラバラになる
研究開発でAIを使うには、まず「ツールの役割分担」を決める必要があります。
AIを使うと何が変わるか
AIは、研究開発者の判断を代替するものではありません。
論文の価値を最終判断するのは研究者です。
特許の権利範囲を判断するのは、知財の専門家を含む人間です。
実験データの意味を決めるのは、条件、装置、測定方法、現象を理解している担当者です。
技術方針を決めるのは、研究開発責任者です。
ただ、AIはその前段階を助けてくれます。
たとえば、次のような作業です。
論文の要点を整理する
複数の技術情報を比較表にする
特許公報の構成を読み解く
実験計画の抜け漏れを洗い出す
実験データ整理の方針を考える
技術報告書の骨子を作る
会議メモを整理する
若手向けの確認リストを作る
チームのAI利用ルールを作る
つまり、AIは「答えを出す機械」ではありません。
研究開発においては、AIは次のような存在として使うのが現実的です。
調べる、読む、比べる、整理する、説明するための補助者。
この位置づけを間違えなければ、AIは研究開発の実務でも使いやすくなります。
今回扱う主なAIツール
まず、各ツールの役割を大まかに整理します。
ChatGPT
思考整理、壁打ち、文章化、比較表作成に使いやすいです。
実験計画、技術報告書、論点整理、説明文作成に向いています。Microsoft Copilot
会社員業務との接続に強いです。
Teams、Outlook、Word、Excel、PowerPoint、会議メモで使いやすいです。NotebookLM
手元資料に基づく読解に向いています。
論文PDF、特許公報、過去報告書、学会資料の整理に使いやすいです。Perplexity
最新情報の入口として使いやすいです。
技術動向、企業動向、規制、政策、ニュース調査に向いています。Gemini
Google系作業、長文処理、調査補助に使えます。
Web調査、PDF確認、Google Workspace連携で候補になります。GitHub Copilot
コード作成支援に向いています。
CSV整形、簡単なPython、ファイル処理に使いやすいです。Codex
小さな業務の実行依頼に向いています。
TASK.md、データ処理、資料生成補助、自動化の入口として使えます。
各AIツールの公式ページはこちらです。
仕様や利用条件は変わることがあるため、使う前に公式ページや会社の利用ルールも確認しておきたいです。
ChatGPT
https://chatgpt.com/Microsoft Copilot
https://copilot.microsoft.com/NotebookLM
https://notebooklm.google.com/Perplexity
https://www.perplexity.ai/GitHub Copilot
https://github.com/features/copilot
ここで重要なのは、「どれが一番優れているか」ではありません。
研究開発では、業務ごとに使い分ける方が進めやすいです。
研究開発ワークフローで考える
AIツールは単体で考えるより、研究開発の流れの中に置くとわかりやすいです。
たとえば、新しい技術テーマを調べ、報告書にまとめる場合は、次のような流れになります。
Perplexityで最新情報を探す
↓
NotebookLMで論文・特許・資料を読む
↓
ChatGPTで論点整理、比較表、仮説を作る
↓
Microsoft CopilotでWordやPowerPointに落とす
↓
GitHub Copilot / Codexでデータ処理や定型作業を補助するこれが基本形です。
もちろん、すべての業務でこの流れを使う必要はありません。
ただ、最初にこの地図を持っておくと、ツール選びで迷いにくくなります。

業務別に見るAIツールの使い分け
研究開発業務ごとに、最初に使うAIを整理すると次のようになります。
新しい技術テーマの入口調査や、最新の企業動向、規制、政策を調べるときは、Perplexityから始めると進めやすいです。必要に応じて、ChatGPTやGeminiで論点を整理します。
論文PDF、複数論文の比較、特許公報、競合特許の差分整理では、NotebookLMが入口になります。資料に基づいて要点を整理し、その後ChatGPTで比較軸や報告用の表現を整える流れが使いやすいです。
実験計画の壁打ちでは、ChatGPTから始めるとよいです。別の視点も見たい場合は、Geminiにも同じ概要を渡して、指摘の違いを見ることがあります。
実験データの整理方針を考えるときは、まずChatGPTで作業の流れを整理します。CSV整形やファイル処理まで進む場合は、GitHub CopilotやCodexを使います。
会議メモ、技術報告書、PowerPoint資料、チームのAI利用ルールでは、ChatGPTとMicrosoft Copilotを組み合わせると進めやすいです。考えを整理する段階ではChatGPT、WordやPowerPointなど会社文書に落とす段階ではMicrosoft Copilot、という分け方です。
この整理だけでも、判断しやすくなります。
たとえば、最新技術を調べたいのにChatGPTだけで済ませるのは危ないです。
一方で、Perplexityで集めた情報をそのまま報告書に貼るのも危ないです。
NotebookLMで論文を読ませても、解釈や比較軸は人間が確認する必要があります。
AIツールは、それぞれ得意な場所に置くと使いやすいです。
ChatGPTの位置づけ
ChatGPTは、研究開発者にとって最も汎用的なAIです。
向いているのは、主に次のような作業です。
実験計画の壁打ち
技術報告書の構成案作成
論文や特許の比較表作成
技術テーマの論点整理
上司説明用の要点整理
若手向けのチェックリスト作成
プロンプトや業務依頼文の作成
ChatGPTの強みは、考えを整理する力です。
頭の中で散らばっている情報を、構造化してくれる。
箇条書き、比較表、報告書構成、レビュー観点、リスク整理に向いています。
一方で、注意点もあります。
ChatGPTは、最新情報の確認には向かない場合があります。
また、もっともらしい文章を作るため、誤りに気づきにくいことがあります。
そのため、ChatGPTは次のように使いたいです。
判断を任せるのではなく、論点を出させる。
結論を書かせるのではなく、結論を確認するための材料を整理させる。
研究開発者にとっては、この使い方が現実的です。
Microsoft Copilotの位置づけ
Microsoft Copilotは、会社員研究者にとって接点が多いAIです。
特に、Microsoft 365環境で仕事をしている人にとっては、Teams、Outlook、Word、Excel、PowerPointとの連携が大きいです。
向いている業務は、次のようなものです。
会議メモの整理
Teams会議の要約に使える場合がある
メール文面の作成
Word報告書の下書き整理
PowerPoint資料の構成補助
Excel作業の補助
社内共有文書の作成
Copilotは、研究開発そのものの深い技術判断よりも、会社員としての業務処理に向いています。
たとえば、実験結果の技術的な意味を判断するのはCopilotではありません。
ただ、その結果を報告書や会議資料に整える場面では役立ちます。
研究開発者は、Copilotを次のように見るとわかりやすいです。
技術を考えるAIというより、会社の文書・会議・資料に接続するAI。
ただ、社内情報を扱うため、会社の利用ルール確認は必須です。
Copilotが会社で導入されているからといって、すべての情報を入れてよいわけではありません。
情報区分、アクセス権、社内規程、契約条件を確認する必要があります。
NotebookLMの位置づけ
NotebookLMは、手元の資料を読ませる用途に向いています。
研究開発者にとっては、特に次の用途で使いやすいです。
論文PDFの読解
複数論文の比較
特許公報の整理
学会要旨の確認
過去報告書の読み返し
技術資料の要点抽出
NotebookLMの強みは、「資料に基づいて回答させる」ことです。
ChatGPTに一般的な知識を聞くよりも、手元の論文や資料を読み込ませて、その範囲で整理させる方が向いている場面があります。
たとえば、論文PDFを読み込ませて、次のように聞く。
この論文について、研究目的、手法、主な結果、新規性、限界を整理してください。
さらに、自分の研究テーマに使えそうな観点を3つ挙げてください。ただ、NotebookLMも万能ではありません。
資料を読ませたからといって、解釈が常に正しいわけではありません。
図表、条件、測定方法、統計処理、前提条件は必ず原文で確認する必要があります。
特に論文や特許では、「要約が合っているか」だけでなく、「重要な前提を落としていないか」を見る必要があります。
Perplexityの位置づけ
Perplexityは、最新情報の入口として使いやすいです。
研究開発では、次のような場面に向いています。
新しい技術テーマの初期調査
競合企業の動向確認
規制・政策の動きの確認
最近の研究発表やニュースの確認
技術キーワードの洗い出し
調査の入口となる出典探し
ChatGPTだけで最新動向を調べると、情報が古かったり、出典が曖昧だったりすることがあります。
その点、Perplexityは出典を確認しながら調査の入口を作りやすいです。
ただ、Perplexityの回答も最終結論ではありません。
出典が表示されていても、出典の質は確認する必要があります。
企業のプレスリリースなのか、査読論文なのか、ニュース記事なのか、個人ブログなのかで信頼性は大きく違う。
Perplexityは、次のように使いたいです。
結論を得るためではなく、調査の入口と出典候補を見つけるために使います。
研究開発では、出典を読まずにAIの要約だけで判断するのは避けたいです。
Geminiの位置づけ
Geminiは、Google系の作業環境を使っている場合に候補になるAIです。
Google Workspaceを使っている場合や、Web調査、長文処理、PDF確認などで使いやすい場面があります。
研究開発では、次のような用途が考えられます。
Web情報の整理
長文資料の確認
PDFの要点整理
Googleドキュメントやスプレッドシートとの連携
ChatGPTとは別視点での壁打ち
Geminiは、ChatGPTと競合する部分もあります。
ただ、実務では「どちらが上か」を決めるよりも、複数のAIに同じ観点で確認させ、差分を見る使い方が有効な場合があります。
たとえば、実験計画のレビューをChatGPTに依頼し、その後Geminiにも同じ概要を渡して、指摘の違いを見ます。
このように使うと、見落としを減らせます。
ただ、複数AIを使えば正しくなるわけではありません。
最終的な確認は人間が行う。
GitHub Copilotの位置づけ
GitHub Copilotは、コードを書く人だけのものと思われがちです。
ただ、非IT系の研究開発者でも、CSV整形、ファイル整理、簡単なPythonスクリプト作成では役立ちます。
たとえば、次のような作業です。
CSVファイルの列名を整理する
測定データを結合する
ファイル名を一括変更する
グラフ作成前のデータ形式に整える
欠損値や異常値の確認用スクリプトを書く
実験ごとのフォルダ構造を整理する
研究開発では、Excel作業に時間を取られることが多い。
その前処理を少し自動化できるだけでも、作業は軽くなります。
ただ、GitHub Copilotが作ったコードをそのまま使うのは危険です。
特に実験データを扱う場合は、次の確認が必要になります。
入力データを壊していないか
列の意味を取り違えていないか
単位を誤っていないか
欠損値を勝手に処理していないか
元データを上書きしていないか
処理前後で件数が一致しているか
AIが作ったコードは、まず小さなダミーデータで試してから使いたいです。
Codexの位置づけ
Codexは、コードやファイル操作を伴う小さな業務を依頼する入口として考えるとわかりやすいです。
特に、TASK.mdのような依頼文を作り、次のような作業を任せる使い方が考えられます。
CSVを読み込んで整理する
指定フォーマットで表を作る
複数ファイルを結合する
Markdownの報告書ひな形を作る
データ処理スクリプトを作成する
定型レポート生成の下準備をする
ChatGPTが「考えを整理する相手」だとすると、Codexは「ファイルやコードを扱う小さな作業を進める相手」に近いです。
ただ、これも過信は避けたいです。
研究開発データを扱う場合、処理ロジックの確認は必須です。
実験条件、単位、測定日、サンプル番号、ロット番号などを取り違えると、結果が大きく変わります。
Codexを使う場合は、次のような姿勢が必要です。
AIに作業を任せる前に、作業仕様を人間が明確にします。
AIが作った結果は、元データと照合します。
重要な判断には、必ず人間のレビューを入れます。
無料または会社支給ツールでできること
AI活用というと、すぐに上位プランや専用ツールをそろえなければならないように感じるかもしれません。
ただ、最初から全部そろえる必要はありません。
まずは、無料または会社支給ツールで十分に始められます。
たとえば、次のような使い方です。
ChatGPT無料版
実験計画の壁打ち、報告書構成案、比較表の作成から試しやすいです。会社支給のCopilot
会議メモ、メール整理、Word・PowerPointの下書きに使いやすいです。NotebookLM
公開論文や公開資料の読解練習に向いています。Perplexity
技術テーマの入口調査、出典探しに使いやすいです。Gemini
Web調査や長文整理の補助として候補になります。
重要なのは、最初から完璧な使い方を目指さないことです。
まずは、公開情報や機密性の低い題材で練習します。
自分の業務に近く、社外秘ではない情報を使って、AIの癖をつかみます。
出力をそのまま使わず、必ず確認します。
この段階で十分に効果を感じられるはずです。
上位プランや法人プランで広がること
上位プランや法人プランを使うと、できることは広がります。
特に、次の点で差が出やすいです。
長文・大容量資料を扱いやすくなる
複数論文、長い技術資料、報告書を比較しやすくなります。ファイル処理が楽になる
PDF、CSV、Excel、Markdownを扱いやすくなります。回答の質が安定しやすい
論点整理、表作成、文章化の精度が上がりやすくなります。チーム利用の管理がしやすくなる
管理職がルールや権限を設計しやすくなります。自動化に踏み込める
GitHub CopilotやCodexで定型処理を任せやすくなります。
ただ、上位プランを使えば判断が正しくなるわけではありません。
むしろ、上位プランほど多くの情報を扱えるため、守秘・知財・社内ルールの確認が必要になります。
研究開発では、便利さとリスクをセットで考えておきたいです。
実際の手順
ここでは、研究開発者がAIツールを使い分けるときの手順を整理します。
手順1:まず業務を分類する
最初に、「いま自分がやりたいことは何か」を決めます。
最新情報を調べたいのか
手元資料を読みたいのか
考えを整理したいのか
報告書や資料にしたいのか
データ処理をしたいのか
チーム運営に使いたいのかこの分類をせずにAIを使うと、ツール選びを間違えやすいです。
手順2:情報の種類を確認する
次に、AIに入力する情報の種類を確認します。
公開論文
比較的使いやすい情報です。公開特許
比較的使いやすい情報です。公開された企業情報
調査に使いやすい情報です。一般的な技術概要
使いやすい情報です。社内報告書
会社ルールの確認が必要です。未公開実験データ
原則、そのまま入れない方が安心です。特許化前のアイデア
原則、そのまま入れない方が安心です。顧客・共同研究先情報
契約・社内規程の確認が必要です。
研究開発では、この手順を飛ばさない方が安心です。
手順3:ツールを選ぶ
業務と情報の種類が決まったら、ツールを選ぶ。
最新情報を探す → Perplexity
手元資料を読む → NotebookLM
考えを整理する → ChatGPT
会社文書に落とす → Microsoft Copilot
Google系作業と長文確認 → Gemini
CSVやコード処理 → GitHub Copilot
小さな業務を任せる → Codex手順4:AIに依頼する前に条件を整理する
AIにいきなり聞くのではなく、依頼条件を整理します。
最低限、次の5つは入れておくと進めやすいです。
1. 目的
2. 前提
3. 入力情報
4. 出力形式
5. 注意点これは、第3回で扱う「AIへの依頼文は業務依頼書である」という考え方にもつながります。
AIには、雑に聞くよりも、業務依頼として渡す方が伝わりやすいです。
プロンプト例
ここでは、すぐに使える短い例を3つ示す。
ChatGPT用:実験計画の壁打ち
あなたは研究開発部門の技術レビュー担当者です。
以下の実験計画について、次の観点で確認してください。
1. 目的が明確か
2. 比較条件が妥当か
3. 測定項目に抜けがないか
4. 想定されるリスク
5. 結果が出た後に確認すべき点
ただ、最終判断は研究担当者が行う前提で、
断定しすぎず、確認すべき論点として整理してください。
実験計画:
【機密情報を除いた概要を入れる】NotebookLM用:論文PDFの読解
この論文を、以下の観点で整理してください。
1. 研究目的
2. 使用している手法
3. 主な結果
4. 著者が主張している新規性
5. 自分の研究テーマに使えそうな点
6. 注意して読むべき限界
7. 追加で確認すべき文献やキーワード
回答では、可能な限り本文中の根拠箇所も示してください。Perplexity用:技術動向の入口調査
【技術テーマ】について、研究開発者向けに最新動向を調べてください。
以下を分けて整理してください。
1. 主要な技術トレンド
2. 主要企業・研究機関の動き
3. 最近の論文・発表・ニュース
4. 実用化に向けた課題
5. 調査を深めるための検索キーワード
出典を確認できる形で示してください。失敗しやすいポイント
AIツールの使い分けで失敗しやすい点を整理します。
1. ChatGPTに最新情報を聞いて終わる
ChatGPTは便利ただ、最新情報の確認には向かない場合があります。
技術動向、企業発表、規制、政策、製品仕様などは、必ず最新の出典を確認する必要があります。
このような場合は、Perplexityや公式情報を使う方が安心です。
2. Perplexityの出典を読まずに使う
Perplexityは、出典候補を確認しながら調査の入口を作れます。
ただ、出典があることと、その出典が適切であることは別です。
企業の宣伝資料、ニュース記事、査読論文、規制文書では信頼性も意味も違う。
出典の中身を確認せずに技術判断に使うのは避けたいです。
3. NotebookLMに資料を入れたから正しいと思い込む
NotebookLMは資料ベースで回答してくれますが、解釈ミスが起きないわけではありません。
論文の図表、測定条件、統計処理、前提条件は原文で確認する必要があります。
特許公報では、請求項の読み取りをAIだけに任せるのは避けたいです。
4. Copilotに社内情報を扱わせる前にルールを確認しない
会社支給ツールであっても、社内情報を何でも扱ってよいとは限りません。
情報区分、アクセス権、社内規程、契約、共同研究先との取り決めを確認する必要があります。
5. GitHub CopilotやCodexが作ったコードを検証しない
AIが作ったコードは、正しく見えても間違っていることがあります。
特に実験データでは、列の意味、単位、欠損値、外れ値、サンプル番号を誤ると結論が変わります。
まず小さなダミーデータで検証してから使いたいです。
6. AIツールを増やしすぎる
AIツールを増やすほど、仕事が速くなるとは限りません。
むしろ、使い分けが曖昧なまま増やすと、調査メモ、要約、ファイル、出力結果が散らかる。
まずは少数のツールから始め、業務ごとに役割を決める方が進めやすいです。
守秘・知財・社内利用上の注意
研究開発でAIを使う場合、守秘と知財の注意は避けて通れません。
特に注意したい情報は次のとおりです。
未公開の実験データ
特許化前のアイデア
出願前の発明内容
配合、構造、条件、プロセスの詳細
顧客名、共同研究先名、サプライヤー名
社内報告書
契約書、見積、原価、事業戦略
個人情報
アクセス制限のある社内資料
これらをAIに入力してよいかどうかは、個人判断だけで決めない方が安心です。
会社のAI利用ルール、情報管理規程、知財部門の方針、共同研究契約、秘密保持契約を確認する必要があります。
特に、特許化前の情報には注意が必要です。
「まだ出願していないアイデア」をAIに入れることは、研究開発部門にとって大きなリスクになり得る。
AIに相談したい場合は、情報を抽象化する、具体条件をぼかす、公開情報だけで試すなどの工夫が必要です。
また、AIの出力をそのまま特許判断や技術判断に使うのは避けたいです。
AIは、論点整理の補助です。
最終判断は、研究者、技術責任者、知財部門、必要に応じて専門家が行う形にしたいです。
マネージャー視点で見ると
研究開発チームでAIを使う場合、個人任せにしすぎない方が安心です。
個人がそれぞれ好きなAIを使い始めると、次の問題が起きます。
調査の品質がばらつく
出典確認のレベルがそろわない
社内情報の扱いに差が出る
若手がAI出力を信じすぎる
報告書の粒度がそろわない
どの情報を根拠にしたのか追えなくなる
管理職が見たいのは、AIを使うか使わないかだけではありません。
どの業務に、どのAIを、どこまで使わせるか。
ここを決める必要があります。
たとえば、チーム内で次のようなルールを作ると進めやすいです。
技術動向調査
Perplexityで入口調査し、出典を確認します。論文読解
NotebookLMで要点整理し、重要箇所は原文を確認します。実験計画
ChatGPTで抜け漏れを洗い出し、最終判断は担当者と上長が行います。報告書作成
ChatGPTで骨子を作り、Copilotで文書・資料化を補助します。データ処理
GitHub CopilotやCodexを使う場合、処理前後の確認表を残します。守秘・知財
入力禁止情報を明文化します。
AI活用で重要なのは、個人の生産性だけではありません。
チームとして、調査品質、レビュー品質、情報管理をそろえる必要があります。
まとめ
AIツールは増えています。
ChatGPT、Microsoft Copilot、NotebookLM、Perplexity、Gemini、GitHub Copilot、Codex。
名前だけを追いかけると、かえって混乱します。
研究開発者は、ツール名ではなく業務から考える方が進めやすいです。
最新情報の入口はPerplexity。
手元資料を読むならNotebookLM。
考えを整理し、比較表や報告書骨子を作るならChatGPT。
会社の会議、メール、Word、PowerPointに接続するならMicrosoft Copilot。
Google系作業や長文確認ではGemini。
CSV整形や簡単なコード処理ではGitHub Copilot。
小さな業務を任せるならCodex。
ただ、AIは研究開発の判断を代替するものではありません。
論文は原文を確認します。
特許は請求項を確認し、必要に応じて知財部門に相談します。
実験データは処理前後を確認します。
技術報告の結論は人間が責任を持ちます。
守秘・知財・社内ルールは必ず確認します。
AIを使う意味は、研究開発者の判断を手放すことではありません。
調べる、読む、比べる、整理する、説明する作業を軽くし、研究開発者が本来考えたいことに時間を使うことです。
40代・50代の研究開発者にとって、AIは若手だけの道具ではありません。
むしろ、これまでの経験があるからこそ、AIの出力を評価できます。
論文要約が本当に妥当か。
特許の読み取りが浅くないか。
実験計画に抜けがないか。
技術報告書の結論が飛躍していないか。
役員説明で伝えたい論点が整理されているか。
こうした判断は、研究開発の経験がある人ほど強みになります。
AIを使うことで、すべての仕事が自動化されるわけではありません。
ただ、調査の入口を早く作ることはできます。
資料を読む負担を軽くすることはできます。
比較表や報告書のたたき台を作ることはできます。
若手のレビュー観点をそろえることもできます。
第2回で伝えたい結論は、シンプルです。
AIツールを覚えるのではなく、研究開発業務のどこに置くかを決める。
これが、研究開発者にとってのAI活用の第一歩です。
最初は、ひとつのツールをひとつの業務に置くだけで十分です。
小さく試して、合わなければ戻す。
うまくいけば、次の業務にも少し広げる。
このくらいの進め方なら、無理なく続けられます。
これまでの記事
この連載を初めて読む方は、こちらも参考になります。
第0回:AIが苦手な研究開発者へ。この連載で伝えたいこと
https://note.com/rd_ai_note/n/n25b5a8a92ff5第1回:AIが苦手な40代・50代研究開発者へ
https://note.com/rd_ai_note/n/n14a457c99776第3回:AIへの依頼文は“業務依頼書”です
https://note.com/rd_ai_note/n/n13b0e60384bd第4回:研究開発でAIに入れない方がよい情報
https://note.com/rd_ai_note/n/n358222c00e77第5回:論文・特許・実験データにはどのAIを使うとよいか
https://note.com/rd_ai_note/n/n1fa436425443第6回:NotebookLMで論文PDFを比較する
https://note.com/rd_ai_note/n/n38f968eb2d35第7回:Perplexityで技術動向を調べる
https://note.com/rd_ai_note/n/n169d2fdfeab1
次回予告
次回は、AIへの依頼文を「プロンプト」ではなく、業務依頼書として考えます。
AIにうまく答えさせるコツは、特殊な呪文を覚えることではありません。
目的、前提、入力情報、出力形式、注意点を整理して渡すことです。
第3回では、研究開発者向けに、AIへの依頼文の基本型を扱います。
第3回:
AIへの依頼文は“業務依頼書”です
研究開発者向けプロンプトの型