「伝えた」をやめて「届いたか」を確かめる|施設長が明日やること#09
「ちゃんと伝えたのに、なぜ伝わらないんだろう」
会議で説明した。メモも渡した。個別にも話した。それなのに、スタッフの動き方が変わらない。
「聞いていませんでした」という返事が返ってくる。
こういうとき、多くの人は「もっとはっきり言わなければ」「もっと何度も言わなければ」と考える。
でもドラッカーは、問題の本質は別のところにあると言っている。
「コミュニケーションは、受け取る者なくして成立しない。送り手が何を言ったかではなく、受け手が何を受け取ったかが、コミュニケーションの現実だ」(『経営者の条件』)
「言った・言わない」の問題ではなく、「届いた・届いていない」の問題だ。
この回は、その変換を、施設長が明日手を動かせる形に落としてみたい。
明日やること① 指示のあとに、「今の話でわからないところある?」と聞く
所要時間:30秒
明日、何かを伝えたあとに、一問だけ追加する。「今話したことで、わからないところはありますか」
最初は「特にありません」が返ってくる。それでいい。
続けていくうちに、「実はこういうことが気になっていました」が出てくるようになる。聞かれなければ、その声は永遠に出てこない。
明日やること② 相手の言葉を「つまり、こういうことですね?」と言い直す
所要時間:10秒
明日、スタッフから相談を受けたときに、1回だけやってみる。相手が言ったことを、自分の言葉で言い直す。
ずれていたら、その場で直せる。あとで発覚すると、数日分の手戻りになる。
明日やること③ 大事な話の前に、「今、話せる状態ですか」と前置きする
所要時間:5秒
ドラッカーは「コミュニケーションは期待である」と言っている。人は、自分が期待していることを聞こうとする。
期待していない話は、耳に入っても意味として処理されにくい。
明日、大事な話をする前に一言入れる。「少し大切な話をしたいのですが、今大丈夫ですか」
この一言があるかないかで、受け取り方が変わる。
明日やること④ 曖昧な言葉を1つ選んで、具体的な動作に言い換える
所要時間:3分
「丁寧にケアしてほしい」という言葉ひとつとっても、施設長が思い描く丁寧さと、スタッフが思い描く丁寧さは違う。
明日、自分がよく使う言葉を1つ選んで、動作に書き換える。
「丁寧に」を、「部屋に入るときはノックして、名前を呼んでから声をかける」のように。
抽象的な言葉は、伝わったつもりになりやすい。一番危ういところだ。
明日やること⑤ 伝わらなかった件を1つ、届け方を変えて出し直す
所要時間:10分
コミュニケーションが成立しなかった責任の多くは、受け手ではなく送り手にある。
明日、「何度言っても伝わらない」と感じている件を1つ選ぶ。そして内容ではなく、届け方を変える。
口頭だけだったなら紙にする。全体に言っていたなら個別に言う。朝に言っていたなら、手が空いている時間に変える。
「伝わらないのは相手のせい」と思った瞬間、改善は止まる。
言葉にされていないことを聞く
ドラッカーのコミュニケーション論で特徴的なのは、話すことより聞くことを重視している点だ。
「コミュニケーションの最も重要なことは、言葉にされていないことを聞くことだ」
スタッフが「大丈夫です」と言っていても、表情に迷いが見える。
「わかりました」と答えているのに、どこか釈然としない。
そのサインを見逃さず、「本当はどう思っている?」と問いかけること。それが、言葉にされていないことを聞くということだと思っている。
まとめ
ドラッカーが定義するコミュニケーションは、「伝えること」ではなく「受け取られること」だ。
明日やることは、5つ全部でなくていい。
①の一問を追加するだけなら、30秒でできる。
「伝わらない」と感じたとき、相手を責める前に「届け方を変えられないか」を問い直してみてほしい。
次回は「マネジャーの誠実さ。知識より人格が問われる理由」をお届けする予定です。
このシリーズの元になったマガジン『離職率60%の現場を変えた「ドラッカー50の問い」』では、各テーマの背景と考え方をもっと深く書いています。
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