見出し画像

山の暮らしの物語21 従妹のメイちゃんがやって来た


<このシリーズは、戦後、ある山村に実在した一家に材を取った物語です
古い資料や聞き書きを元にしているが、作者が創作した部分もあります >


My cousin Mei-chan came over.


奥の間でラジオが鳴っている。
去年の暮れ 父さんが町で買ってきたものだ。

お正月三が日だけは、昼間でも発電所を動かす事になったので
ラジオも聞けるし、父さんも一息つけるというものだ。

というのも、父さんは、これから毎日 夕方に発電機を動かして、翌朝 止めるという大変な仕事を引き受けたのだ。

「俺がやらんと誰がやるんや」
という父さんだからこそ任されたのだろう。


朝からお雑煮を食べて元気いっぱいのゆきちゃんは
さっきから、庭先で羽子板をかかえて誰かを待っていた。

ちょっと待ちくたびれた頃
同じ年頃の女の子が、畑の下の小さな土橋の所に姿を現わした。( 注1 )
いとこのメイちゃんが、おじちゃんと一緒に遊びに来たのだ。

畑の小道をたどって二人が到着すると、急ににぎやかになる。

ひとしきり新年の挨拶がすむと
子供たちのお楽しみ… お年玉が出た。
「おじちゃん おおきに」ゆきちゃんは母さんに教えられた通り ぴょこんと頭を下げた。
メイちゃんも、父さんに向かっておんなじ事をやっている。

おじちゃん…メイちゃんのお父さんは、森林組合に勤める村の有力者である。仕事がら都会にも出かけるので、ちょっとおしゃれで 村にはない空気を運んでくる。
村の発電所作りにも、大きな役割を果たした人だ。

そんなおじちゃんと父さんだから
初めて電気がついた今年のお正月のお酒はまた格別だろう。
二人が気分良く一杯飲み始めたので

「メイちゃん 羽根つき しよ!」
「うん やろ」
二人は、さっそく狭い庭で羽根つきを始めた。
「カーン」と気持ちのいい音があたりの山に響く。

いい気分で二人を眺めているおじちゃん達の席に
お祝いに欠かせない さんま寿司や海苔巻きが並んで、そのままお昼になった。

皆でお寿司を食べながら
「結衣ちゃんは元気かいの?」
母さんは、実家の姉さんの赤ちゃんが気になる。

去年の暮れに生まれたメイちゃんの妹だ。そろそろひと月になる。
「おかげさんで、可愛いらしゅうなってきて」とおじさんが目を細める。

「寝てばっかりやで」とメイちゃんは不満そうだ。
「まだ 赤ちゃんやからね」と母さんが笑う。

(メイちゃんはいいな…妹ができて)
ゆきちゃんはちょっぴり寂しい気分になった。

やがて、ほろ酔いのおじさんは
「今年は電気も付いたし いい年になりそうやの」
とご機嫌で帰り支度を始めた。

「バイバイ また来るね」
「うん またね」

ゆきちゃんは、二人が土橋を渡るまで手を振って見送ると
台所の母さんの所にやって来て、そっとエプロンの端をつかんだ。

「母ちゃん… ゆきも妹おったらいいのに」

すると、母さんは振り向いて、ちょっとためらってから
秘密を打ち明けるように 小さな声でささやいた。

「夏には、おまえにも出来るよ」

「え〜 ほんと? 妹?」
「さぁ〜 それは分からん 弟かもしれんね」

ゆきちゃんはびっくりして、それからうれしくなって
庭に出て、ぴょんぴょん跳ねまわった。


注1 土橋(どばし) 木の橋の一種で、上に土をかけてならしてあって 時には草まで生えている



小さな 英語レッスン

従妹のメイちゃんがやって来た
My cousin Mei-chan came over.

ひとしきり新年の挨拶がすむと 子供たちのお楽しみ… お年玉が出た

After the New Year's greetings were over,the moment they were waiting for. New Year's gift money was given out.


発音はこちら


前はこちら

次はこちら 




#山の暮らしの物語
#ゆきちゃん
#従妹のメイちゃんがやって来た
#正月
#ラジオ
#羽根つき


いいなと思ったら応援しよう!